カプコンの辻本春弘社長
カプコンの辻本春弘社長

 国内ゲームメーカーの昨年の総出荷額は、約1兆2334億円で07年のピーク時の半分となった。基本無料のソーシャルゲームの普及でテレビゲームの苦戦が続く中、累計2300万本の大ヒットゲーム「モンスターハンター」(MH)シリーズの最新作「4」が、来月にカプコンから発売され、業界活性の“切り札”として注目を集めている。「ユーザーに夢と感動を」と力説する同社の辻本春弘社長に話を聞いた。(毎日新聞デジタル)

--ゲーム産業の低迷が指摘されている。

 数年前にソーシャルゲーム市場が立ち上がって利益が伸びている企業もあるように決して斜陽ではない。ただ産業構造の変化は出ている。従来は流通を介するパッケージのみだったが、現状はネットのインフラも整って課金の障壁もなくなった。また、従来の市場は日米欧だけだったが、配信ビジネスの確立で、今は日米欧以外の地域でも展開できる。

--ゲーム市場への参入障壁が低くなり、ライバルも増えたが。

 ビジネスは守られるべきものではない。参入企業が増えるのは望ましいことだし、長年ゲーム事業を展開している我々としては刺激になる。大切なのは、多くのユーザーに楽しんでもらうコンテンツを作り続け、ユーザーに愛着を持ってもらうこと。(一つの作品をゲームやアニメなど多面展開する)ワン・コンテンツ・マルチユースを推し進める。

--PSPでヒットしたMHシリーズを、最新作は3DSで出すのはなぜ?

 同じハードでずっと展開し続けるのは、限界がある。MHシリーズも最初はPS2で出し、PSPで展開した。(大ヒットした)「MHポータブル3rd」はひと区切りとなった作品で、新たな期待に応えるためには、ゲームシステムを一新する必要があった。ゲームは理想の発売時期があり、そこから開発に着手する時期も決まる。その結果、3DSが望ましいと判断した。

--年末にはPS4などの新型ゲーム機が登場する。

 ゲームの企画内容を考え、どのハードが最も適しているかを判断し、展開する。だがユーザーのためには(どのハードでも遊べる)マルチ展開が理想だ。

--マルチ展開の理想でいえば、「4」はPSVitaでも出すのか?

 今はない。3DSで多くのユーザーに触ってもらい、成功させることだけを考えている。

--最新作「4」の目標は?

 3DSの実績から考えると7カ月間で280万本。イベントを展開しつつ、継続的に遊んでもらえるようにする。

--3rdでは470万本という実績があるが、「4」の目標は?

 PSPで躍進はあったが、それは事前に予想できるものではない。もちろんシリーズの過去最高に近づけたいとは思っている。ソーシャルゲームの新規層などユーザーを取り込んでいくことも大事になる。ゲームビジネスの源泉は、自社のゲームをどれだけ遊んでもらえるか。それが未来の資産となる。

--最近は会社内部での開発強化に力を入れている。狙いは?

 数年前は、コンテンツを拡充するために外部を活用した。だが今は長く遊んでもらうことが大事で、外部開発だとそのノウハウが蓄積されないからだ。もちろん、モーション制作など外部制作で問題ないものは続ける。

--今後のゲーム業界は?

 配信やオンラインを活用して、長く遊んでもらうことが大事になる。(パッケージでの)新作ゲームは出すのに2、3年かかるため、その間に興味を持ってもらうにはゲーム以外の展開も必要となる。極論だが、ゲームは生活には不要のもの。そういった危機感をもちながら、ユーザーに夢と感動を与えるものを提供していく。

プロフィル

つじもと・はるひろ=64年、大阪府生まれ。大学時代にアルバイトとしてカプコンで働き始め、87年に同社入社。97年には取締役に就任して経営に参画。07年7月に創業者である父の後を継ぎ、社長に就任した。