ゲーム業界について語るKADOKAWAの浜村弘一常務
ゲーム業界について語るKADOKAWAの浜村弘一常務

 ソニーの新型ゲーム機「PS4」の発売や「ドラゴンクエスト」のスマートフォン展開、オンラインゲーム「FF14」の復活など、さまざまな動きがあった13年のゲーム業界。ゲーム雑誌「ファミ通」を発行するKADOKAWAの浜村弘一常務に話を聞いた。(毎日新聞デジタル)

 ◇進むスマホのゲーム機化

 --13年のゲーム市場を振り返って。

 スマートフォンでゲームが普及し、根付いてきたことでしょう。従来のスマホは電話をかけたり、ウェブブラウザーとして利用していましたが、「パズル&ドラゴンズ」の大ヒットでゲーム機化しました。

 --「ドラゴンクエスト」もスマホで本格的な展開を始めました。

 無料でアプリをダウンロードして、アペンド(追加)でソフトを増やすという発想は斬新。もちろん「ドラクエ」だから考えられる手法で、同じ規模のコンテンツは「ファイナルファンタジー」ぐらいしか考えられません。

 --パズドラが市場を牽引(けんいん)しました。ポイントは?

 スマホならではのタッチ操作をゲームとして取り入れたことですね。特にユーザーは既存のソーシャルゲームの課金に疲れていた背景があります。そこへパズドラが配信され、広く浅い課金にして、ゲーム性も高めたのが時代的に合ってヒットしたのでしょう。確かにのびしろは小さくなりましたが、今後はスマホの入門ソフトとして遊んでもらえる利点がありますね。

 --パズドラで流れが変わった?

 スマホでゲームをやる習慣が付いたんですね。これまではスマホで大人がゲームをするのが恥ずかしいというイメージがあり、普及の障害になっていました。今後も大きなコンテンツが出てくれば、スマホのゲーム機化はさらに進むでしょう。したがって、ゲーム開発の資源がスマホに流れるのは間違いなく、家庭用ゲーム機の開発ラインは減ることになると思います。

 ◇ソーシャルとの連携がポイント

 --一方、家庭用ゲーム機のWiiUは苦戦しました。

 ただ、WiiU(の不振)とスマホ(の成長)の関連付けは難しいですね。携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」も2年前には失敗と言われて巻き返したことがあります。もちろん、ユーザーの時間を取り合う競争はありますが……。WiiUもキラーコンテンツが出ればブーストがかかる可能性もありますね。ただし、WiiUと3DSのソフトの両方を潤沢に作るのは厳しい……というのは事実でしょう。

 --昨年の11月にPS4とXboxONEが欧米で発売されて好調ですが、日本の発売は後回しになりました。

 それは仕方ない面もあります。欧米の据え置き型の熱がすさまじく、世界最大のゲーム会社「エレクトロニック・アーツ」がタイトルの供給を厚くしました。一方の日本は携帯ゲーム機が主流の国。優先度からいくと、欧米を優先するのはビジネス判断としては正しいですね。

 --PS4の可能性は?

 グラフィックを評価する見方もありますが、むしろソーシャルとの連携がポイントです。今後はボタン一つで画像や映像が配信でき、ゲームの情報の伝わり方が変わります。さらに動画の存在が前提となり、動画の回転数がゲームの売り上げに影響を与える可能性もありますから、ゲームの仕様も変わるでしょう。

 --PS4のソフト開発費は高騰しないでしょうか。

 今回のPS4は作りやすさが前提になっています。今までは新型機になるごとに開発費は倍になってきましたが、開発者に聞く限りでは今回は上がらないと思います。

 --動画の普及は、ビジネスにも影響がありますか?

 ダウンロードでポンと買われるようになるから、ビジネスとしての広がりはあります。ネットは(購入ソフトを決め打ちして買う)指名買いが普通ですから、店頭を見て別のソフトを買うことがなくなるでしょうね。店舗が減るのは問題で、ダウンロード販売が増えても、店で売れるようにする必要があるでしょう。

 ◇ボーダーレスの裾野の広い業界に

 --日本のゲーム市場のガラパゴス化についてはどう思いますか。

 決して良いことではありませんが、欧米と日本は、生活習慣の違いがあるのも事実です。欧米では大きな家、大きなテレビがあり、電車通学はありません。今後(日本のメーカーが)海外に打って出るのは大変だと思います。

 --スマホのゲームが人気の中で、携帯ゲーム機の3DSは健闘しました。

 ただゲームソフトは、一強皆弱で、ヒットするものと、そうでないものの差が激しい。面白いことが伝わったら雪だるま式にメガヒットになるのが今の社会で、ある意味怖い面もあります。

 --2年前に躍進したグリーとDeNAが、13年には失速して話題になりました。

 この2社は、実は海外では実績は残し始めているんですよね。今は、はやりすたりが激しいのですが、逆に当たって生き返るチャンスもあるわけです。さらにいえば、既存のメディアで盛り上げるよりも、動画の盛り上がり、ネットの口コミが強くなっていますね。

 --動画や口コミなどは、メーカーの今後の戦略に影響を与えそうですか?

 ゲームのプロデュース方法が変わると思います。昔は勝ち馬のハードに乗ろうとしていましたが、今は自社のコンテンツを回すためにも、どこからでも入ってこられる仕組みづくりが重要でしょう。またゲーム市場も、スマホも加わってボーダーもなくなり、裾野の広い業界になります。

◇FF14復活の理由は「執念」

--FF14が復活して、業界に驚きを与えました。

 一言でいえば、同じオンラインゲームの「FF11」と似て非なるものを作ったのがよかったのでしょう。二つの作品は見た目や世界観は似ていますが、FF14はソロ(1人)で遊べてしまうなど、中身は全く違います。人とつながるソーシャル疲れがあったところにフィットしたわけです。

 --FF14の成功の理由は?

 絶対に成功させるという執念でしょう。一つのゲームを1回つぶして、全く違うゲームにしているわけですから。あれは新時代の新しい形だと思うし、諦めなかった和田さん(現スクウェア・エニックス会長。FF14の作り直しを最終決断した)がえらいと思います。これはグリーやDeNAにもいえることですが、資金がある企業は再チャレンジできるので、あきらめてはいけないということです。かつて「ソニーも終わった」という人もいましたが、PS4で復活したように、簡単には終わらないということでしょう。

--展望は?

 まずは据え置き型のPS4が(日本で)復権できるか。WiiUが復活できるか。スマホでは「ポスト・パズドラ」が出現するかでしょう。いずれにしろ、面白いことが起きそうです。

◇プロフィル

 はまむら・ひろかず=1961年生まれ。86年にテレビゲームの情報誌「ファミコン通信(現・週刊ファミ通)」創刊から携わる。2013年10月からKADOKAWA常務、ファミ通グループ代表(エンターブレイン ブランドカンパニー)。