深夜アニメ:劇場版で続々ヒット 好調の理由

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「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」(C)Magica Quartet/Aniplex・Madoka Movie Project Rebellion

 「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語」(2013年10月26日公開)の興行収入が20億円を突破したことが話題になっている。今作は、2011年に放送された深夜アニメの“その後の物語”を描いたものだ。深夜アニメ発の劇場映画として「映画けいおん!」(2011年12月公開)の19億円のヒットを上回り、今なおロングランが続くなど、さらなる伸びが見込めるが、なぜ深夜アニメ原作の劇場版アニメはヒットするのか、その理由を探った。

 ここ数年の深夜アニメの劇場版は、一過性の域を超えたヒットを連発している。昨年だけでも「劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(あの花)」は興収が10億円の大台に乗り、「劇場版シュタインズ・ゲート 負荷領域のデジャヴ」や「劇場版 とある魔術の禁書目録−エンデュミオンの奇蹟−」も5億円を突破した。快進撃が続く背景には、深夜アニメを取り巻く環境や戦略の変化といった、作品の枠を超えた共通の事情があると見るべきだろう。

 まず、アニメを視聴するメディアは劇的に変化した。実写ドラマも見逃した回を配信するサービスがようやく動き出しているが、そこは既にアニメは実施済みだ。数年前からテレビ放送とほぼ同時にネット配信することは常識で、大都市と地方の“放送格差”は消滅している。

 ネット配信は、昭和の時代には当たり前だった「再放送」の役割も果たしている。現在のアニメ産業を築いた「宇宙戦艦ヤマト」や「機動戦士ガンダム」も、最初の放送当時は視聴率がふるわなかった。それが再放送を重ねるごとに人気を伸ばし、ファンが劇場公開を求めるほどのムーブメントへと発展するなどして現在の地位を築いた。

 そういった勝利の図式が、ネット配信を通じて再現されている。インターネットでの全話一挙配信は劇場版公開前の恒例になっており、作品を知らない“後追い”のアニメファンもすぐ追いつける。ネット配信は21世紀の“再放送”なのである。

 とはいえ、熱心に広めてくれるエバンジェリスト(伝道者)がいなければ“ネット再放送”もあまり効果はない。インターネットという情報の拡散ツールを活用して営業マンのようにアニメの魅力をふれ回り、新規ファンを呼び込む彼らの存在は無視できない。もちろんコンテンツの内容が最大のカギを握るのはいうまでもない。ヒット作に共通しているのは、どれもがアニメで実績あるスタッフが手掛け、最初から熱心なアニメファンに支持されているということ。たとえば「まどか☆マギカ」は新房昭之監督や蒼樹うめさん、虚淵玄さんといった人気作を送り出した顔ぶれであり、「あの花」の長井龍雪監督やシナリオの岡田麿里さんもしかり。「他のジャンルで有名なクリエーターを連れてきました」という企画はソッポを向かれがちだ。

 家でテレビシリーズを見るのが大好きな人にとっても、人目にさらされる映画館でアニメを鑑賞することは、かつてはハードルが高かった。ようするにアニメオタクとみなされるリスクが意識されたのだが、今やそうした目線はなくなりつつある。他の“リア充”的な趣味と同じく、アニメも楽しむライトオタク層へと世代交代が進み、見るからに観客のファッションがあか抜けてきた。それが「面白いエンタメを見たい」というフツーの人たちが劇場に足を運ぶ抵抗を減らし、若い世代にはデートムービーとしても機能するようになった。

 さらに「いつでもどこでも」のネット配信は、逆に「わざわざ映画館に行く」という一回きりの“体験”の価値を高めた。40型以上の大型液晶テレビの普及は、劇場スクリーンという“大画面”の再発見にもつながったのかもしれない。そんなライブ体験は、週替わり来場者プレゼントキャンペーンという仕掛けも相まって、一人が何(十)回も見るリピーターを多く生み出す。まず熱心なアニメファンを味方につけ、ネット配信により視聴者の輪を広げ、劇場版という“お祭り”に送り届ける。深夜アニメ劇場版の絶好調は、お客様を「お・も・て・な・し」サービスの基本に立ち返った結果といえそうだ。(多根清史/アニメ批評家)

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