服部克久:現代の音楽シーンは「偏り過ぎている」と苦言 最近の心境は「心静かに…」

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 作曲家・編曲家として、「新世界紀行」「ザ・ベストテン」「ミュージックフェア」などの人気テレビの番組をはじめ、「青い山脈」など名作映画のテーマ曲を、数多く手がけてきた服部克久さん。音楽活動55年、喜寿(77歳)のメモリアルイヤーを迎えるにあたり、新曲も収録したアルバム「77−55~Past,Present&Future~」を6月25日にリリースした。服部さんに現代の音楽シーンや最近の心境などについて、話を聞いた。

 −−子どものころは、どういう音楽を聴かれていたのでしょうか。

 ご存じの通り、父親が作曲家の服部良一ですから、子どものころから周りには音楽があふれていました。同世代の人よりもはるかに多くの音楽を聴いて吸収していたと思います。個人的に大きかったのは、FEN(現AFN。米軍基地関係者とその家族向けの放送局)です。戦後米国のヒットチューンが、絶えず流れていましたから、大好きで四六時中聴いていました。それで高校生のときはバンドを組んで、映画「第三の男」のテーマ曲とか、ジャズなんかを演奏していました。僕はピアノ、すぎやまこういち(ゲーム「ドラゴンクエスト」の作曲で有名)がベース。そのときトロンボーンをやっていた先輩が、のちに僕をこの世界に引っ張り込んでくれたんです。

 −−最初のお仕事はどういうものだったんですか?

 「サンデーダーク」という番組で、(日本のコーラスグループの)ダークダックスが、日本の民謡をフランス歌曲風に歌うという企画の編曲でした。番組のプロデューサーが、バンドをやっていたときの先輩で、日テレの廊下でたまたま顔を合わせて、そこで声をかけられてやることになって。それをきっかけに、いろいろやるようになっていきましたね。

 −−この55年で、音楽業界はだいぶ変わったと思いますが。

 よく、最近の音楽についてどう思うか、と聞かれることがありますが、そういう意味では、音楽の存在感が薄れたと思います。ダンスや振り付けがあったり、きれいな顔をしていたりということが、音楽以上の付加価値を持っている。エンターテインメントという見方をすれば、きっとこれが現代人の生活様式に合っているんだろうと思いますけど、ただ少し偏り過ぎているかなとは思います。売れるものに偏っていくのは仕方のないことですが、とはいえ、あまりそこに媚(こ)びてしまっても、音楽の本質というと大げさだけど、大切なものを見失ってしまう気がします。

 −−AKB48やEXILEなんかも聴かれたりしますか?

 もちろんです。レコード大賞なんかで、一緒になりますからね。よく、僕にAKB48の悪口を言わせたがる人がいるけど、みんな可愛いし、可愛い子が歌っているんだから、それで十分じゃないかって(笑い)。秋元(康さん)とも昔から交流があります。あれだけ成功していれば、やっかむ人も、そりゃ多いでしょう。彼は、昔気質(かたぎ)の体育会系で、上下関係を非常に大切にする。そういう人間は、僕は好きですよ。何かがはやるということは、それがはやるだけの理由が、絶対にあるわけで。それをいいとか悪いとか評論するのは簡単だけど、功績と価値をしっかり認めるという姿勢も大切だと思いますね。

 −−さて、服部さんの最新アルバム「77−55~Past,Present&Future~」は、55年の間に発表されたオリジナル曲や、アレンジを手がけられた楽曲を厳選し、さらに新曲も加えた作品ですね。さだまさしさんの「小夜曲(セレネード)」や、山下達郎さんの「ずっと一緒さ」などのポップスも収録されていますが、お二人とのエピソードを教えてください。

 (さだ)まさしとは、親戚も同然の付き合いで。彼はバイオリンがうまいから、バイオリンのソロを入れた曲を作りたいと僕から提案し、アレンジしたのがこの曲です。よく「先生、ヒット曲作りましょうよ」って言ってくるんですけど、僕はヒット曲にはあまり興味がないもんだから……。まあ、おせっかいなやつです(笑い)。達郎なんかは、本当にマニアックで困りますね。達郎と(山下さんの妻の竹内)まりやの3人で京都に行ったことがあるんだけど、まりやが「お寺に行こう」といったら達郎が、「いや、僕は行きたいレコード屋さんがあるから」って一人でそっちに行ってしまって。「そこにしか売ってないレコードがあるから」って。京都に来てまで、それはないだろうってね(笑い)。

 −−服部さんご自身で、思い出深い曲はどれですか?

 「新世界紀行」のテーマ曲「自由の大地」でしょうかね。皇太子殿下とお食事をさせていただいたことがあって、「あの曲は、どういうお気持ちで作られたのですか?」とおたずねしてくださったんです。ああ、殿下も聴いてくださっていたんだと、すごくうれしかった覚えがあります。

 −−新曲についてですが、「Benson Roll」はフュージョンぽいギターが印象的な楽曲。また、ラストの「静けさの中で」は、ピアノとハープが印象的な楽曲。非常に静かでありながら、最後に力強さも感じさせますね。

 「Benson Roll」は、米国のジャズフュージョンのギタリスト、ジョージ・ベンソンをイメージした曲です。彼とは仲がよくて、来日したときはよく六本木のおすし屋さんに行ったんです。そこで、いつも食べていたのが、なんでもかんでも巻いた、こんなに太い巻きずしで。それがいつの間にか、店の名物になって「ベンソン巻き」って名付けたわけです。「静けさの中で」は、今の自分をすごく表した曲です。僕の座右の銘は「それで、どうした?」なんですが……。

 −−どういう意味でしょう?

 カーネギーホールで演奏会をやったとき、みんなから「すごいですね」といわれたのですが、「それでどうしたんですか?」って答えたんです。気取っていうわけじゃないけど、カーネギーホールなんか偉くもなんともないってね。だって上を見ればきりがないし、下を見てもきりがない。たとえ悲しいことがあっても、「それでどうしたの?」と思っていれば、そんなに悲しすぎることもないし、人の言葉や気持ちにわずらわされることもない。これまでさまざまなことがあって、それでも今は心静かに、何が起こっても動揺しない。今、そんな心境でいるということです。このまま静かに終わりたいところなんですが、どういうわけか、お陰さまで最近またちょっと忙しくさせていただいています。こういうのも、僕らしいのかな。終わりがあまり静かすぎるのも、ちょっと寂しいですからね。

 <プロフィル>

 1936年、作曲家・服部良一さんの長男として生まれる。パリ国立音楽院を卒業後、戦後のテレビ放送の創成期から活動を始める。「サンデーダーク」「ミュージックフェア」など、数多くのテレビ番組や映画音楽を手がける。編曲家として、さだまさしさんや山下達郎さんら数多くのアーティストの楽曲を手がけたほか、山口百恵さんの引退コンサートの音楽監督・指揮、愛知万博閉会式の作曲と指揮など担当した。

 *……「服部克久リサイタル THE FEAST~喜寿/55周年記念コンサート」は、9月23日に大阪・森ノ宮ピロティホール、10月3日に東京・東京国際フォーラムホールCで開催予定。

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