小野憲史のゲーム時評:増えるリアルタイムCGの活用

ゲーム
「信長の野望・創造」のゲーム画面 (C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.

 超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、現在はゲーム開発と産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は、「コンピューター・グラフィックス(CG)」に注目して、2015年のゲーム業界を振り返りつつ、2016年の展望について語ります。

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 2015年のゲーム業界をふり返ってみたとき、ゲームに限定せず、「CG」に注目したい。今やゲームや映画、アニメ、CMとあらゆる映像でCGが使われている。すると、2015年は「ゲームから映像業界へと、CG技術の大きな揺れ戻しがおきた年」だったことが分かる。

 CGには大きく、ゲームのように逐次計算で映像を出力するもの(リアルタイムCG)と、映画のように1枚ずつ画像を出力しておき、連続再生するもの(プリレンダーCG)がある。プリレンダーCGは、より奇麗な映像を低コストで制作できるため、ゲーム以外の映像作品で幅広く使われてきた。ところが、2015年は状況が変わってきた。

 背景にあるのが半導体技術の進化と、それに伴う一連の技術革新だ。テレビドラマ「デスノート」で死神・リュークのCG映像を制作するのに、ゲームエンジンの「アンリアルエンジン4」が用いられた。リアルタイムCGの技術を活用することで、映画並みのクオリティーのCG映像をテレビドラマ向けに、短期間で制作することが可能になった。

 リアルタイムCGには映像作品だけでなく、ゲームやアプリ、バーチャルリアリティー(VR)コンテンツなど、作品をさまざまなメディアに展開させやすいメリットがある。これは映像制作会社にとっても、新たなビジネスのチャンスだ。コーエーテクモゲームスの人気ゲーム「信長の野望・創造」のCG技術を、2016年のNHK大河ドラマ「真田丸」の映像の一部に提供する例もある。ゲームエンジンで制作できるCG映像がリッチになるにつれて、リアルタイムCGの活用事例はさらに増えるだろう。

 もっとも、プリレンダーCGからリアルタイムCGへの移行は、制作現場にとって痛しかゆしだ。二つの技術は同じCGでも制作文化が大きく異なる。エンジニアの雇用が増える一方で、CGアーティストの失職も考えられるだろう。フルハイビジョンの4倍の解像度を持つ「4K」映像制作にも、まだリアルタイムCGは力不足だ。そのため移行には経営判断が必要になる。

 ここで思い返されるのはゲーム業界の過去20年の歴史だ。1990年代後半、CD-ROMの登場で大容量のデータが扱えるようになると、ゲーム会社はこぞってプリレンダーCGの技術を導入し、美麗なCGムービーを制作した。旧スクウェアのようにフルCGの映画を製作した企業もあった。当時はゲーム業界が映像業界のCG技術を欲していたのだ。

 また2000年代に入ると、ゲーム業界は開発効率化のためにゲームエンジンの導入に迫られた。スマホゲームの普及で、この流れは決定的になった。導入にはそれまでの制作体制を変える必要があり、現場で根強い抵抗もあったが、生き残りのためには必須だった。その対応が一段落した今、映像業界が同じ波にさらされているように見えるのは興味深い。

 もっとも、リアルタイムCGもプリレンダーCGも技術の根幹は同じで、同じCGの「見せ方の違い」にすぎない。さらにいえば同じCGによる映像体験でも、ゲームデザインの要素が増えればゲーム、低ければノンゲームといわれる。一番重要なのはユーザーに対して優れた「体験」を提供することで、CG技術の選択は手段にすぎない。

 2016年は「オキュラスリフト」や「プレイステーションVR」の発売もあり、VR元年になる。CGを用いたさまざまな形態の作品が、より一層社会に登場することになるだろう。そこで重要なのはクリエーター同士の技術や知見の交流であり、狭い業界に閉じこもらないことだ。まったく新しいユーザー体験の創造のために、皆で知恵を振り絞る1年になってほしい。

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