小野憲史のゲーム時評:ゲーム展示会が開催できるのは今だけ 課題も山積

ゲーム
「スペースインベーダー」のゲーム機

 超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、現在はゲーム開発と産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は、ゲーム展示会が開催できる意味を考えながら、危機にさらされている昔のゲームについて語ります。

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 昨年から今年にかけて、テレビゲームに関する展覧会が目白押しだ。国立新美術館(東京都港区六本木)で開かれた「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」(2015年6月24日~8月31日)、埼玉県川口市の映像制作拠点「SKIPシティ」の「あそぶ!ゲーム展」(2015年10月3日~2016年2月28日)、日本科学未来館(東京都江東区)の「GAME ON ~ゲームってなんでおもしろい?~」(2016年3月2日~5月30日)と、ほぼ1年間にわたって大型の展示会が連続して開催されている。

 実はテレビゲームの企画展示は、「ファミコン」の愛称で親しまれる任天堂の家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」の発売20周年にあたる2003年ごろから徐々に増え始めた。中でも2004年に国立科学博物館で開催された「テレビゲームとデジタル科学展」は、博物館による本格的なゲーム機の調査と収集、展示が行われた点で、大きな転機となった。2016年はアメリカにファミコンが上陸して30周年にあたり、全米各地でさまざまな記念行事も計画されている。これに限らず、世界中でテレビゲームの保存記録が進行中だが、解決すべき課題も数多く残されている。

 一般的にコンテンツの保存記録には、「個人・団体・企業などが独自に行う」「国や地方自治体が行う」の2種類がある。小回りが利くのは前者で、日本でもさまざまなテレビゲームのコレクションが存在するが、個人が逝去したり、コストの問題で散逸するリスクがある。貴重なコレクションが死蔵されるケースも少なくない。これに対して後者では、より包括的・永続的な保存記録が可能だが、税金の投入が前提となるため、設立と運用には十分な社会的理解と社会還元が必要だ。

 特にテレビゲームは書籍や映像と異なり、デジタルデータであるソフトウエアと、電子器機であるハードウエアが一体となって、特定の体験をもたらす特徴がある。ソフトウエアは半永久的に保存できるが、ハードウエアは経年劣化が避けられず、保存するだけで自壊していく。代替手段としてエミュレーター(コンピューター上でゲーム機の動作などを仮想的に再現する試み)による保存が考えられるが、アーケードのような大型ゲームには適さず、プレー体験も損なわれるため、賛否両論だ。

 また、ゲームビジネスがパッケージからダウンロード販売に移行するにつれて、保存すべき対象物が存在しないという新たな問題も発生している。スマートフォンの人気ゲームも、オンラインゲームも、サービス自体が終了すれば、二度とプレーできない。そして今後は、VR(バーチャル・リアリティ)ゲームのように技術革新によって、まったく新しい表現の登場も考えられる。そもそも、世界中で無数に存在するゲームの実態を、誰がどのように調査・保存・整理できるのか、世界的にみても議論が始まったばかりだ。

 つまり近年のテレビゲームの展示会は、テレビゲームの第1世代が成長し、文化としてある程度の社会的認知が得られた一方で、動態展示可能なゲーム機のコレクションが現存するという、際どいタイミングの上に成立している。このままいけば数十年後には、同様の展示会は開催できなくなると考えた方が自然だ。テレビゲームの本質とは何か。何を収集して何を後生に残していくべきか。テレビゲームの展示会が集中する時期だけに、更なる議論の高まりを期待したい。

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