小野憲史のゲーム時評:VRゲームでバッシングの可能性も 産官学の連携が重要

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世界最大級のゲーム開発者会議「ゲームディベロッパーズカンファレンス」に合わせて、発売時期と価格が発表されたソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のPS4向けのHMD「プレイステーションVR」

 超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、現在はゲーム開発と産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は、米サンフランシスコで3月14~18日に開催された世界最大級のゲーム開発者会議「ゲームディベロッパーズカンファレンス(GDC)」の主役となったVRゲームの課題について語ります。

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 テレビゲームの歴史は社会的バッシングの歴史で、特に日本ではこの傾向が強い。1980年代はゲームセンターが非行の温床だとされ、1990年代は「ポケモンショック」に代表される光過敏性腸症候群が問題視された。2000年代に「ゲーム脳」が社会問題視されたことも記憶に新しい。なぜバッシングを受けるかと言えば、技術が進化して、自分たちが子どものころには体験しなかったような、新しいゲームが登場してくるからだ。昔に「スーパーマリオ」に夢中になった人でも、自分の子どもがソーシャルゲームに夢中になりすぎれば、懸念を示すはずだ。そうしたバッシングが、ヘッドマウントディスプレー(HMD)を装着して楽しむ、VR(バーチャルリアリティー)ゲームで再び発生する可能性がある。

 GDCでは、さまざまなVRゲームの展示や講演が行われ、大きな盛り上がりを感じさせた。また、会議にあわせてソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は、PS4向けのHMD「プレイステーション(PS)VR」を10月に4万4980円で発売すると発表。自社イベントで25本の開発中タイトルを展示した。これまでの技術デモではなく、製品化を前提としたものが多く「VR元年」を感じさせた。VRゲームのプレースタイルは従来のテレビゲームと大きく異なり、高い没入感を得られるのが特徴で、従来のゲームのシーンを変えてしまう可能性もあるが、半面さまざまな課題も浮かび上がってくる。

 一つ目は見た目の問題だ。HMDを装着してヘッドホンを付けると、はたからみれば何を遊んでいるかわからない。テレビゲームをよく知らない人から見ると、異様な光景に映る可能性がある。

 また「VR酔い」の問題もある。映画やテレビの初期には画面を見ただけで気持ちが悪くなる「画面酔い」がみられた。3Dゲームでも「3D酔い」があり、3Dゲームそのものを敬遠する人は多い。VRゲームでも品質の悪いゲームを遊ぶと、すぐにVR酔いが発生してしまう。VR酔いはゲームの品質向上で低減できるが、個人差や慣れの問題もあり、万人が酔わないゲームを作るのは困難だ。

 そしてPSVRをはじめとした、主要HMDが備える立体視機能が人体に何らかの引き起こす影響もある。オキュラスVR社は自社製品の「Rift」に対して、13歳未満の体験を禁じるガイドラインも設けているが、VRが一度家庭に普及してしまえばルールを守ることは実質上困難だ。

 品質の低いVRゲームで不快感を感じた人は、再びプレーしようとは思わないだろうし、周囲や子どもにも勧めないだろう。これらはVRゲームの初期には市場拡大の阻害要因となる。しかしヒットしすぎて、皆が夢中になりすぎればバッシングの温床となる。これからは難しいかじ取りを求められるのだ。

 もちろん、業界も対策を進めている。SCEはPSVRとテレビ画面を同時に用いて、最大5人で協力・対戦プレーが楽しめるモードをもうける。会議では他社が開発中のVRゲームに対して、社内の知見を生かしてアドバイスする施策も発表した。しかし、個々の企業が独自に対策を打ち出すだけでは限界があるのも事実だろう。

 一方でVRにはゲームを超えた幅広い可能性があり、日本が世界をリードできる分野だ。そのため業界を超えた研究活動や社会的認知、啓発活動などが欠かせない。VRゲームの登場前夜だからこそ、産官学の連携によって、VRゲームの正しい開発・体験ガイドラインを策定し、世界に発信していく姿勢が求められている。

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