黒川文雄のサブカル黙示録:11年の可能性を予測 K-POP 次世代PSP スマートフォン…

 あけましておめでとうございます。2011年の始まりです。「究極のビジネスモデル」かと思いながらも、新しいものが生まれるのが世のならいです。特にエンタメやIT関連のサービス、コンテンツの栄枯盛衰は他の業界とは比較にならないほど速く、予想も大変です。しかし今回はあえて、エンタメの11年の可能性を考えてみたいと思います。

ウナギノボリ

 10年、映画に関していえば「3D映画元年」でした。「アバター」のヒットを受けてか、3D化の必要が感じられない作品までもが3D映画として公開されました。経済効果は3Dテレビに付加価値機能として取り入れられました。しかし、映画や映像ビジネスの危うさは11年も変わらずでしょう。正月映画として公開された「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」の完成度は、厳しく言わせてもらえば客の映画館離れに“ワープ”をかけたようなものです。またキー局主導のテレビドラマからの映画化も、陰りが見えてきました。ヒットを見込めるのはアニメのみ……という状況は憂うべきものです。

 音楽ソフトは、映像と同じく韓国の「K-POP」に席巻されています。それは別に不可解なできごとではなく、きちんと計算された「K-POP」が伸張するのは無理もありません。一糸乱れぬダンスパフォーマンス、均整の取れた肉体、高い音楽性。10年前に韓国に仕事で行ったときに、カラオケルームでは、通常のカラオケに加えてギターのバック演奏がつきました。これを見たとき「バックミュージシャンが力をつけて作曲や編曲をしたら、J-POPは負ける日が来るかも」と感じましたが、その日が来ました。ジャニーズやAKB48が受けるのは、身近なちょっとカッコいい、カワイイアイドルという部分でしょう。何かを極めた本来のプロという部分では日本は韓国文化の侵攻を受けて、全面降伏かもしれません。映画と同じくヒットの萌芽はアニソンにあり……といったところでしょう。こちらは当分韓国勢の及ばぬところでしょう。

 さてゲームソフトの世界では、カプコンの「モンスターハンター」シリーズの独り勝ちが印象に残ります。それともう一つは「ポケットモンスター ブラック・ホワイト」のヒットでした。今年の動向を左右するのは新型携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」でしょう。裸眼で3Dゲームというギミックは受けると思います。ただし3D機能を生かすも殺すもコンテンツ次第です。それと次世代PSPです。新型ハードは発売されたその瞬間から、その開発陣は次世代ハードの設計に入っているのが常です。つまり11年に次世代PSPがお目見えしても驚きではありません。あとはコンテンツのラインアップをどうするかが問題です。SCEは、「世界のソニー」の一角を担う有力企業だけに次世代PSPがモバイル端末と合体……なんてこともあり得るかもしれません。

 最後に、10年末に世間を騒がせたソーシャルアプリも注目です。最初は無料だが、課金を促す導線が巧妙に仕掛けられているのが特徴です。しかし、アプリに熱中しすぎる人々がいる“火種”があります。このへんはパチンコ、パチスロ感覚の「下流食い」と同じで、「農地を求めて海外へ」という経営判断は正しいかもしれません。

 IT化の宿命は人の生活を便利にすることで、これ以上の成功モデルは出てこないだろうな……と常に思うものですが、翌年には全く新しいビジネスモデルが現れてきます。具体的な予想をするならば、スマートフォンを利用したビジネスが伸びるのは明白ですが、それはゲーム系コンテンツではないと思っています。世界に冠たるマイクロソフトのビル・ゲイツ会長が、新たなビジネスモデルを考えている名もなきベンチャーの存在を恐れていることを前回のコラムでも取り上げましたが、それはみなさんにも大いに関係することなのかもしれません。

著者プロフィル

くろかわ・ふみお=60年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。

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