篠原涼子:新春インタビュー・上 母としての思い語る 虐待をテーマにしたドラマ「愛を乞うひと」主演

スペシャルドラマ「愛を乞うひと」で主演した篠原涼子さん
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スペシャルドラマ「愛を乞うひと」で主演した篠原涼子さん

 女優の篠原涼子さんが11日午後9時放送のスペシャルドラマ「愛を乞うひと」(読売テレビ・日本テレビ系)で主演を務める。1998年に公開された原田美枝子さん主演の同名映画(平山秀幸監督)を見てこの役を演じてみたいと思っていた篠原さんの念願かなったドラマ化で、篠原さんは母に虐待されていた過去を持つ照恵と虐待していた母・豊子の1人2役を演じている。実際に8歳と4歳の男児を子育て中の母でもある篠原さんに、虐待について、子供との関係など母としての思いを聞いた。

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 ◇「愛を乞うひと」とは…

 「愛を乞うひと」は、早くに夫を亡くし、娘の深草(広瀬アリスさん)と2人で暮らしている照恵(篠原さん)にある日、生き別れた弟の武則(ムロツヨシさん)が逮捕されたと警察から連絡が入る……。照恵は弟との面会をきっかけに数十年の間、記憶の奥底に押し込めていた母からの虐待を受けた幼少時代を思い出し、娘に語り始める……という展開。

 ◇子供にいらだつことはどんな母にもある

 実際に母親でもある篠原さんは「子供のことが手に負えなくていらだったりすることって、どんな母親にもあるんです。逆にないという人があれば私は聞いてみたいなと思う」と切り出した。今作で虐待する母・豊子と虐待を受けた経験を持つ娘・照恵の1人2役を演じ、子供への虐待というテーマに正面から向き合った。

 「イライラすると、やっぱり弱い人にぶつけてしまう。分かってもらいたいという気持ちと、この子だったら言ったところで(分からないだろう)……とか、しかり方や表現の仕方は違うけれど、感情はたぶん一緒なんだと思うんです」と虐待する母・豊子に対して母親として一定の理解を示す。

 ◇「ママは怒ってばっかり」に反省

 篠原さんには実際に2人の息子がいるが「お母さんは男の子に対してはすごく小さいときに(虐待を)やるかもしれないけれど、ある程度成長すると体も大きく強くなるので、できなくなりますよね。今回、登場人物に男の子もいましたけれど、豊子はその子には手を上げない。女同士だから娘に(虐待の目を)向けたくなっちゃうというのもあるんじゃないですか」と豊子の感情を想像する。

 自身の子供に対して、この作品に出演したことで「変に優しくなったりはしていないですね。ちゃんと悪いことしてくれるので(笑い)。優しくなろうと思っても、目の前で(いたずらを)やられたら、普通のお母さんの私になって(怒ったりして)接しています」と変わらずに接したという。そして「子供には『ママは怒ってばっかり』ってよく言われています。そういう意味では気を付けようかなと(今作に出演したことで)反省はできました」と母の顔で笑う。

 ◇働く母として感謝の言葉で伝える

 撮影などで家を少し離れていている期間があると「離れていると分かりますね、こういうふうにやったらどうなんだろうなとか(自然と自分に置き換えられる)」と子供との距離感を冷静に考えられるという。

 今作のために昨年夏、台湾ロケで家を離れていた時期もあった。「実質3日間だったので、比較的、大丈夫だったと思います。子供も夏休みだったので親戚の子たちと一緒に田舎に旅行に遊びにいっていたので気は紛れていたと思います。でも、毎日電話をしたり、LINEをしたり、写真を送ったりしていましたけれど」と明かす。

 働く母親としては「自分(母親)が家にいない間は(子供は)少なからず我慢していると思うので、それだけでも『ありがとう、いつも。待たせちゃってごめんね』という気持ちはありますし、『我慢してくれてありがとうね』と(心の中で思う)。謝ることはしないようにしているので、なるべく感謝の言葉で伝えるようにしているんですけれど」と自身のポリシーを語る。

 また「離れることで自立もしてくれますし、強くなるんじゃないかなとも思いますので私はいいふうに考えています。あとこの『愛を乞うひと』という作品をやったことで虐待をする母親は演技で、そこはリアルな自分ではないので帰ったら自分に戻れる。そういう意味ではそれはそれと割り切ってやらせてもらったので、家に(仕事を)持ち帰る感覚はなかったですね」と仕事と割り切って演じることができたという。

 ◇構えないで冷静に見てほしい

 このドラマを自身の子供が見たら「こういうかわいそうな子がいるんだと絶対に思うと思いますね。『ママ、なんか怖いね』と言われると思う。長男は私がお芝居をしている人だということが分かっていると思うので、『こういう怖い役をやったんだね』って割り切って見てくれると思うんですけれども、次男の方はまだなんだか分かっていないので、まだ見せるのは早いのかなと思いますね」と想像する。

 そしてこのドラマを「保護者の方とか、男女問わずに見ていただきたいなと。自分に置き換えると、もしかしたらこういうことになっているかもしれないなと感じる方がたくさんいらっしゃるのではないかなと思います」とアピールする。さらに「冷静な目で見ていただきたいなと思っています。あまり構えないで見ていただければ。冷静な気持ちで見ていただければ、こういうこと(虐待)を受け止め判断できると思う。もちろん自由な気持ちで見ていただきたいですけれど、決して構えないで、冷静に見ていただきたいなと思います。これを見て、これは自分だなと思ったときに、こういうことじゃだめだなと気づく人が一人でも多くいてくれたらいいなと思います」とメッセージを送った。

 <プロフィル>

 しのはら・りょうこ 1973年8月13日生まれ、群馬県出身。90年に東京パフォーマンスドールのメンバーとしてデビュー。94年にリリースした篠原涼子with t. komuro名義のシングル「恋しさとせつなさと心強さと」が大ヒット。90年代後半から女優として本格的に活動し、2006年に連続ドラマ「アンフェア」で主演。その劇場版第1作「アンフェア the movie」(07年)で映画初主演を果たす。シリーズは劇場版が3作作られた。「ハケンの品格」(07年)、「ラスト・シンデレラ」(13年)、「オトナ女子」(15年)などのヒットドラマに多数主演。05年に俳優の市村正親さんと結婚。2児の母。

 (インタビュー・文・撮影:細田尚子/MANTAN)

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