KING OF PRISM:劇場公開&テレビ放送 異例の試みの狙い

アニメ「KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-」のビジュアル(C)T-ARTS/syn Sophia/エイベックス・ピクチャーズ/タツノコプロ/キングオブプリズムSSS製作委員会
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アニメ「KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-」のビジュアル(C)T-ARTS/syn Sophia/エイベックス・ピクチャーズ/タツノコプロ/キングオブプリズムSSS製作委員会

 人気アニメ「KING OF PRISM」(キンプリ)シリーズの新作「KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-」。3話ごと全4編の劇場編集版を先行上映し、テレビアニメとしても放送するという異例の試みも話題になっている。「キンプリ」はこれまで劇場版が2作公開され、観客が声を上げたり、サイリウムを振って楽しめる応援上映が人気を集めた。応援上映という劇場ならではの楽しみ方が話題になった作品をあえてテレビでも放送する理由は……。アニメを手がけるエイベックス・ピクチャーズの西浩子プロデューサーとタツノコプロの依田健プロデューサーに聞いた。

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 ◇そもそもの企画はテレビアニメ 「やっとここにたどり着けた!」

 「キンプリ」は、2013年4月~14年3月に放送された女児向けテレビアニメ「プリティーリズム・レインボーライブ」のスピンオフで、男性キャラクターの神浜コウジ、速水ヒロ、仁科カヅキたちの歌とショーに懸けるひたむきな姿を描いている。

 西プロデューサーは、そもそも「キンプリ」をテレビアニメとして企画していた。しかし、いきなりテレビアニメとして制作するのはリスクが大きいという判断もあり、劇場版第1弾「KING OF PRISM by PrettyRhythm」は14館という小規模で16年1月に公開された。公開2週目には9館に減少し、スタートは苦戦したが、応援上映も人気を集め、48万人以上を動員するなど異例のヒットを記録。テレビの情報番組で取り上げられるなど話題になった。

 第1弾が人気になっても、第2弾がヒットするとは限らない。その心配は杞憂(きゆう)だったようで、17年6月公開の第2弾「KING OF PRISM -PRIDE the HERO-」もヒットし、シリーズ累計劇場動員数は83万人を突破。「キンプリ」をきっかけにルーツである「プリティーリズム・レインボーライブ」のファンも増え、今では7割程度が「キンプリ」からの新規ファンだという。「キンプリ」は一過性のブームではなく、人気コンテンツとなった。

 実績もでき、新作は晴れてテレビアニメとしても放送されることになった。西プロデューサーは「やっとここにたどり着けた!」と特別な思いがあった。

 ◇応援上映が人気だからこそできた試み

 新作「KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-」はテレビ放送に先駆けて、3話ごと全4編の劇場編集版を順次、上映している。劇場で上映したアニメをすぐにテレビで放送するというのは異例だという。テレビアニメ版は、副音声で応援上映を楽しむファンの音声が放送されているのも異例の試みだ。

 応援上映では、ファンが思い思いにキャラクターへの愛を叫んだり、時にはツッコミを入れる。ライブのような臨場感があり、劇場に行かないとその熱狂を体験するのは難しい。依田プロデューサーが「テレビ放送では応援上映の感動、場を共有することは難しい」と話すように、家でテレビアニメを見て、応援上映をそのまま楽しむことはできない。

 西プロデューサーは「テレビで初めて見た人が翌日、劇場で応援上映に行けるようにしたかったんです。テレビは毎回エンディングを変えたり、劇場版とは違うところもあります。両方楽しめるようにしたかった」と説明。

 副音声を聞けば、応援上映に興味を持ち、実際に体験したくなるかもしれない。劇場版を既に見た人は、テレビアニメ版と劇場版の違いを楽しめる。応援上映が人気の「キンプリ」だからこそできた試みなのかもしれない。

 ◇ファンとスタッフが感謝し合う 幸せな関係

 「キンプリ」は何度も劇場に足を運ぶ熱心なファンが多い。テレビアニメが放送されると、SNSで応援上映風のメッセージを投稿するファンが見られるなど、大きな盛り上がりを見せた。西プロデューサーは「本当にありがたいです。(劇場版の)3章の最速上映会に参加したのですが、号泣しているファンの方がいらっしゃって、もらい泣きしました。やってきてよかった……と胸を打たれ、元気をもらいました。ファンとスタッフが感謝し合っています。こういう関係性の作品はなかなかないかもしれませんね」と喜びを語る。

 依田プロデューサーも「ファンに救っていただけた作品。見終わった後、SNSで感想、考察をたくさん投稿していただいています。考察を見ていると、あの場面をそう捉えていただけるのか……と感じることもあります。幸せです」と続ける。

 応援上映は、ファンが声を出さないと盛り上がらない。熱いファンの存在があったからこそ、「キンプリ」は成功し、異例の試みに挑戦できたのだろう。

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