連載企画 プリティーシリーズ秘話:第2回 紆余曲折の「プリティーリズム・ディアマイフューチャー」 「レインボーライブ」の挑戦 そして「キンプリ」へ

「プリティーリズム・レインボーライブ」のビジュアル
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「プリティーリズム・レインボーライブ」のビジュアル

 タカラトミーアーツの女児向けアミューズメントゲームから生まれた「プリティーシリーズ」が今年、10周年を迎え、テレビアニメが9年目に突入した。誕生時からシリーズをプロデュースしてきたタカラトミーアーツの大庭晋一郎さん、シンソフィアの加藤大典さん、タツノコプロの依田健さんが、これまでの歩みを振り返る連載企画「プリティーシリーズ秘話」。第2回は、2012年4月~2013年3月放送の「プリティーリズム・ディアマイフューチャー」、2013年4月~2014年3月放送の「プリティーリズム・レインボーライブ」の制作の裏側に迫る。

ウナギノボリ

 ◇アニメ終了の危機? 「アイカツ!」登場も…

 --「プリティーリズム・ディアマイフューチャー」を制作することはどの段階で決まっていたのでしょうか?

 大庭さん 紆余曲折がありました。「オーロラドリーム」放送直後にアミューズメント事業がタカラトミーから(グループ会社の)タカラトミーアーツに事業移管をしたんです。2年目をやるにあたり、グループ会社だけでアニメを支えられないのでは?というリスクもあり、アニメをやる場合、やらない場合の二つの企画を考えていました。アニメをやる場合は「オーロラドリーム」の次世代の子が頑張るストーリーにする。やらないのであれば、アパレルとコラボしながら「ちゃお」などの雑誌の付録のDVDで実写の番組をやろうとしていました。

 --アニメは「オーロラドリーム」で終わってしまう可能性もあった?

 大庭さん そうですね。ただ、当時のタカラトミーアーツの社長が「やるんだよ!」と言ってくれたんです。2011年夏の段階で、筐体(きょうたい)が好調で、アニメも人気でした。「いい時期にアニメをやらないのか?」という空気だったんです。

 加藤さん 2年目があると聞いたのが年末だったんですよね……。

 依田さん 正直、2年目は難しいと思っていました。「ディアマイフューチャー」は、韓国のDONGWOO ANIMATION(現DONGWOO A&E)と共同制作になるとう大命題もありました。結果、うまく着地できましたが。

 --ゲームに新要素が加わりました。

 大庭さん プリズムアクトがそうですね。

 加藤さん 「キンプリラッシュ(KING OF PRISM プリズムラッシュ!LIVE)」にも活用している優秀なシステムです。「ディアマイフューチャー」の筐体はすごく気に入っています。

 --実在のダンス・ボーカルユニット「Prizmmy☆」をモデルとしたキャラクターが主人公になるなどリアルとも連動しました。

 大庭さん 当時、JS(女子小学生)のパワーがすごくて、JSのファッションが「プリティーリズムのファッションみたい」と言ってもらえていたことがうれしかった。JSのパワーが、アニメ、筐体と連動できていたんです。

 ー-「ディアマイフューチャー」が放送中の2012年10月には「アイカツ!」(バンダイ)が始まります。

 加藤さん 秋口までは筐体も好調だったのですが……。

 大庭さん やっぱり女の子は新しいものが好きなんですよね。ただ、競合の参入によって、市場全体が大きくなったのは、よかった。

 ◇TRF、路面店も話題 ストイックな連続ジャンプ

 --2013年4月には「プリティーリズム・レインボーライブ」が始まります。

 加藤さん 「レインボーライブ」は、2012年の夏前からやることが決まっていました。

 大庭さん ニンテンドー3DSのゲーム「プリティーリズム・マイ☆デコレインボーウエディング」に出ていたりんねというキャラクターがすごくよかったんです。「レインボーライブ」では、りんねを中心としたストーリーで、世界観をこれまでとは変えようとしました。

 依田さん 「レインボーライブ」のアニメは、比較的自由に作らせてもらいました。これまでと流れが違い、先にアニメが動いていたんです。キャラクターデザインもこれまでよりも早く、タツノコからokamaさんに原案をお願いしました。そんな中、押していたのがキャストオーディションでした。

 加藤さん 2013年1月でしたね。

 依田さん 遅かったんですけど、逆に人気のキャストさん方のスケジュールがとれたんです。たくさんオーディションできたのは、運がよかった。アニメファンにも刺さるキャストを意図的に考えていましたし、企画内容的にも演技力のあるキャストを選ぼうとしていました。今だったら、このキャストは、なかなか集まらないかもしれません。

 --TRFのヒット曲のカバーを主題歌にしたことも話題になりました。

 大庭さん 同時多発的にいろいろなことがあったんです。エイベックスのプロデューサーの岩瀬(智彦)さんと協賛していたキッズオーデションのイベントを回っていた時、ダンスオーデションのステージで、TRFの曲が流れ出すと、たまたま通りがかったいお客さんも一緒になって盛り上がっていたんです。「ああ、これだなぁ!」って二人で思いました。それに、当時はTRFのエクササイズDVDも人気でした。

 加藤さん 僕もa-nationに行った時、「EZ DO DANCE」で盛り上がっているのを見て、これがプリズムライブか!となった。大庭さんに「これ、筐体でやった方がいいね!」とすぐに電話しました。そうしたら、大庭さんもTRFにしたいと考えていた。確かに同時多発的でしたよね。

 --東京・原宿に 直営ショップ・プリズムストーンもオープンしました。劇中にもプリズムストーンが登場します。

 大庭さん アニメの中で、キャラクターが店長になります。お店屋さんごっこは、女の子の憧れでもあります。実際に路面店を出店しようとしていて、企画書にも入れていました。店舗の始め方が分からなかったので、原宿のお店のドアをたたいて、「お店ってどうやって借りるんですか?」と聞いて回ったんです。店を始めたら、夜中、警備会社から電話がかかってきたこともありましたね。

 --ゲームを振り返ると?

 大庭さん 連続ジャンプという新しい要素もありました。

 加藤さん 連続でジャンプするカタルシスがあるのですが、ハードルが高くなってしまった……。ストイックすぎますよね。調整はしたんですけど。


 ◇りんねを中心とした理由 そして「キンプリ」へ

 --先ほど、りんねを中心としたストーリーにしようとしたというお話がありましたが、理由は?

 大庭さん りんねは、ニンテンドー3DS用のゲーム「プリティーリズム マイデコレインボーウェディング」に登場するオリジナルキャラが始まりです。コンシューマーゲームは繰り返して遊ぶこともあります。繰り返して遊ぶと、一度会ったプレ-ヤーとキャラクターが、お互いに記憶を失って、再び出会うことになります。そんなゲームの仕組みをストーリーに入れてもらいました。ゲームのエンディングで別の世界に旅立ったりんねの姿が魅力的だったんです。ゲームで、りんねは「ディアマイフューチャー」のみあと関わっていました。「ディアマイフューチャー」と「レインボーライブ」の世界観をつなげる存在にもなっています。菱田(正和)監督が、そういう要素をアニメに広げてくれました。


 --「レインボーライブ」のアニメは、大人のアニメファンからも人気でした。

 依田さん 3年目になり、対象年齢を上げるのか?下げるか?と考えた時、ブランド力をアップさせ、ドラマ性を出す方向にふることにしました。

 大庭さん 3年目なので、ユーザーの年齢が上がっていたんです。少女マンガのようなテーマを考えていました。

 依田さん 菱田監督から「ドラマっぽくしたい」という話もありました。

 ー-昼ドラっぽい展開もあります。

 依田さん そうですね。最初に狙っていたのはトレンディードラマだったんですが(笑い)。いろいろなチャレンジができました。

 --特にチャレンジしたのは?

 依田さん 男の子が脇ではなく、ストーリーに絡んでくるところもそうですね。ボーイズの歌もきっちりやりたかった。

 --「レインボーライブ」のボーイズユニット「Over The Rainbow」の存在はその後、「KING OF PRISM(キンプリ)」シリーズにもつながります。

 依田さん 最初から「キンプリ」を考えていたわけではなく、結果ですけどね。「レインボーライブ」で終わらせるのがもったいない!という思いがありました。「レインボーライブ」の次の作品として「プリパラ」が企画として動いていたので、女児向けではないものをやろうとしていました。「レインボーライブ」のスタッフ打ち上げで「athletic core」(Over The Rainbowの楽曲)のフルバージョンの映像を流して、偉い人たちの前で「ボーイズをやりたい!」と宣言したんです。

 ◇新市場を開拓 「プリパラ」に続く

 --「プリティーリズム」シリーズが約3年続き、2014年には「プリパラ」が始まります。

 大庭さん 「プリパラ」は「プリティーリズム」からどう変えるか? 変えても、それでシリーズとして連なったから、シリーズとして続くことができたのかもしれません。

 依田さん 視聴者の方がどう捉えるかなんですけど、「キラッとプリ☆チャン」までできたから、ようやくシリーズっぽくなったかもしれません。

 加藤さん 「プリティーリズム」はどんどんストイックになっていったという反省があって、それが「プリパラ」につながった。もっと、いろいろな人に面白いと思っていただけるようにしたかったんです。「レインボーライブ」あっての「プリパラ」なんですよね。

 --「プリティーリズム」はビジネスとして成功だった?

 大庭さん 新しい市場を開拓できたことが大きかったです。競合も入ってきて、市場が大きくなった。いきなり「プリパラ」では垂直立ち上げはできなかったはずです。

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