エヴァンゲリオン:「シンカリオン」コラボ誕生の裏側 “神回”を生み出した情熱

グラウンドワークスの代表取締役の神村靖宏さん(左)とジェイアール東日本企画の鈴木寿広プロデューサー
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グラウンドワークスの代表取締役の神村靖宏さん(左)とジェイアール東日本企画の鈴木寿広プロデューサー

 新幹線がロボットに変形するテレビアニメ「新幹線変形ロボ シンカリオン」の新作テレビアニメ「新幹線変形ロボ シンカリオンZ(ゼット)」(テレビ東京系、金曜午後7時25分)と「エヴァンゲリオン」シリーズのコラボ回が、9月17日に放送される。「シンカリオン」と「エヴァンゲリオン」がコラボするのは、2018年1月~2019年6月放送の前作テレビアニメ「新幹線変形ロボ シンカリオン」、2019年12月に公開された劇場版「新幹線変形ロボ 未来からきた神速のALFAーX」に続き、3度目となる。これまでのコラボは“神回”と話題になったこともあり、期待が高まる。そもそも「シンカリオン」と「エヴァンゲリオン」がコラボすることになった経緯は? “神回”が生まれた裏側は? 「エヴァンゲリオン」のライセンス事業を担当するグラウンドワークスの代表取締役の神村靖宏さん、「シンカリオン」を手がけるジェイアール東日本企画の鈴木寿広プロデューサーに聞いた。

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 ◇庵野監督も好きだった500系 異例のコラボ

 「新幹線変形ロボ シンカリオン」と「エヴァンゲリオン」のコラボ回が放送されたのは、2018年5月と8月だった。「シンカリオン」と「エヴァンゲリオン」のコラボの歴史はここから始まったわけではない。2015年、山陽新幹線の全線開業40周年、「エヴァンゲリオン」の放送開始20周年を記念して、「新幹線:エヴァンゲリオン プロジェクト」が始動したのが全ての始まりだった。

 同プロジェクトでは、庵野秀明監督が監修し、メカニックデザイナーの山下いくとさんがデザインした新幹線500 TYPE EVAが2015年11月に運行を開始した。500系新幹線1編成の全車両をエヴァンゲリオンカラーで全塗装し、一部車両の内装もエヴァンゲリオン仕様に改装。2018年5月まで期間限定で運行された。神村さんは、このコラボを「インパクトが大きかった」と振り返る。

 「庵野さん、山下さんが500系を好きなのは知っていましたし、やった!という気持ちでした。デザインもやらせてください!とこちらからお願いしました。自慢なのは、キティ先輩よりも早く新幹線とコラボできたことですね」

 “キティ先輩”とはサンリオの人気キャラクター・ハローキティのことだ。ハローキティもさまざまなコラボで知られているが、新幹線のコラボは500 TYPE EVA運行終了後の2018年だった。その約3年前に始動した「新幹線:エヴァンゲリオン プロジェクト」は当時、異例のコラボだったこともあり、スムーズにはいかないところもあった。

 「諸事情でマーチャンダイジングが出遅れたんです。各所に働きかけて実現はできたものの、出発式には間に合わなかった。その時点で売店に玩具が並べばよかったのですが……。キティ先輩の出発式でグッズが並んでいるのを見て、悔しかったのですが、先輩のために露払いができたかなと(笑い)。お役に立ててよかった」

 2016年にはタカラトミーの「プラレール」シリーズから500 TYPE EVAが発売されるなど玩具、グッズが充実していった。2017年には、500 TYPE EVAと「シンカリオン」がコラボした玩具「シンカリオン 500 TYPE EVA」が発売された。

 ◇変形させてもらいたくて仕方がなかった

 「シンカリオン」は、ジェイアール東日本企画、小学館集英社プロダクション、タカラトミーによる企画で、2014年に東京おもちゃショー2014でコンセプトモデル「Project E5」を発表。2015年から玩具を展開している。

 「シンカリオン 500 TYPE EVA」は、500 TYPE EVAがシンカリオンに変形する。ほかのシンカリオンと大きく異なるのが、シンカリオンモード時に、エヴァンゲリオン初号機の頭部をイメージしたヘッドパーツを装着することで、第2形態にもなるところだ。初号機でもあり、シンカリオンでもあるというその姿に「ここまでやるのか!」と驚かれたファンも多かったはず。

 鈴木プロデューサーが「『エヴァ』がずっと好きで、強い思いがあった。『シンカリオン』サイドから提案させていただきました」、神村さんが「変形させてもらいたくて仕方がなかった」と話すように、両社の情熱があったからこそ実現したコラボだった。

 ◇中途半端にしても面白くない

 2018年8月には、テレビアニメ「新幹線変形ロボ シンカリオン」第31話で「エヴァンゲリオン」のコラボ回が放送された。洞木(ほらき)ヒカリと、その姉妹のコダマ、ノゾミが登場。コダマとノゾミは、500 TYPE EVAの運行を記念してキャラクター化され、アニメにキャラクターとして登場するのは初めてだった。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」に登場するいくつかの使徒が合体した最強の巨大怪物体・キングシトエルが新登場したほか、葛城ミサト、綾波レイ、アスカも登場するなど、「ここまでやるのか!」となるほど盛りだくさんの内容だった。

 神村さんによると、庵野監督はアニメ「シンカリオン」の第1話を見て、とても気に入っていたそうだ。また、鈴木プロデューサーは「『シンカリオン』の第1話は保線シーンから始まります。子供向けのアニメでは考えられないけど、結果として鉄道をしっかり描くという意思表明になった。それを庵野監督が喜んでいただけたのがうれしい」と“相思相愛”のコラボだった。

 「シンカリオン」のコラボ回を放送するにあたって、鈴木プロデューサーは「中途半端にしても面白くない」という思いがあった。

 「アニメの放送前に玩具が発売されたことで達成感がありましたが、アニメを始めるからには、どうしてもやりたい!という気持ちがあったんです。実際に動き出したのは、アニメが始まってからで、細かいことは考えずに、やるんだ!できることは全部やる!という気持ちだけでした。ここまでいろいろやらせていただけると思っていなかったのですが、ここまでやらなきゃダメだろう!とも思っていました。『エヴァンゲリオン』の要素が『シンカリオン』に入り、違和感があってもいい。なじませようとしませんでした。そうじゃないと面白くならない」

 神村さんが「『エヴァンゲリオン』はコラボに関しては比較的、自由なんです。昔からそうです。盛り上がれば!という思いで、500 TYPE EVA用にあったネタを突っ込みました」と話すように、自由な発想でとことん突き詰めた。

 コラボ回は、SNSで大きな盛り上がりを見せ「神回」と絶賛する声も多く見られた。庵野監督をはじめ「エヴァンゲリオン」のスタッフも喜んでいたといい、大成功となった。

 ◇“神回”超えなるか?

 9月17日には、「新幹線変形ロボ シンカリオンZ」と「エヴァンゲリオン」のコラボ回が放送される。2020年に運行終了した名古屋鉄道(名鉄)の2000系ミュースカイ エヴァンゲリオン特別仕様が、武装強化車両のザイライナー ミュースカイ TYPE EVAとして登場し、シンカリオンZ 500 TYPE EVAとZ合体し、シンカリオンZ 500 ミュースカイ TYPE EVAとなる。

 放送1週間前から「シンカリオンZ」の公式サイトが「エヴァンゲリオン」仕様になるなど、今回も放送前から「ここまでやるのか!」と盛り上げる。鈴木プロデューサーが「前回を超えてくれないと困る……。そのためにやっているので! 実は前回出していないものもあり、今回は出していきます」と言うからには、“神回”超えに期待が高まる。

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