貫地谷しほり:「僕達急行 A列車で行こう」 汗だくで指導し一番面白い森田芳光監督に感服

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 松山ケンイチさん、瑛太さんがダブル主演した映画「僕達急行 A列車で行こう」が公開中だ。松山さん演じる大企業で働くサラリーマン・小町圭と、瑛太さん演じる下町の工場の跡取り息子・小玉健太が、大好きな鉄道を通じて友情を育み、恋に仕事に奮闘する姿を伸びやかにつづったヒューマンコメディー作で、昨年暮れに急逝した森田芳光監督の遺作となった。念願の森田作品に初出演した貫地谷しほりさんが、映画のこと、森田監督のことを語った。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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 「最初のころ、私がやることすべてが違うといわれて……。はっきりそういわれたので、すぐに違う方に進めたんですけど、何が違うのかよく分からないまま最終日まで動かされていた感じでした」。そう貫地谷さんは、森田監督の演出について振り返った。

 貫地谷さんが演じる小町のガールフレンドの相馬あずさは、よくいえば個性的、悪くいえば風変わりな女の子。貫地谷さん自身、森田監督による脚本のせりふの調子から撮影に入る前にそれを感じていた。最初の衣装合わせのとき、貫地谷さんいわく「結構強烈な」衣装が並ぶ中、ある衣装が貫地谷さんの目をとらえた。それは「肩パットがピヨンとついた」、いかにも昔はやったスーツだった。貫地谷さんは「これはないでしょう」と思ったそうだが、意外にもそれは、森田監督の一番のお気に入りだったという。さすがに肩パットは衣装さんの手によって外され、いまふうの形にリフォームされたが、その大胆なオレンジ色のスーツは、あずさの風変わり加減を測る小道具の一つとなった。

 そんなあずさだから「どうしても(観客を)笑わせにいってしまい」、そのたびに森田監督からは「そうではなく普通に。まっすぐに生きている人間の面白さを出す」演技を求められたという。そして、指示された通りにやってみることで、「なるほどこういうことだったんだと納得することがとてもたくさんありました」と、森田監督の演出力に改めて感じ入ったそうだ。

 出来上がった作品を見て、「森田監督独特の笑いが随所にちりばめられていて、自分の出演作にもかかわらずクスクスと笑ってしまった」と打ち明ける。とりわけ、あずさが小町を相手に、バーで眼鏡を掛けかえるシーンでは、その効果音に「ホーッ」と感服し、小町の会社の社長役の松坂慶子さんと、その秘書・日向みどり役の村川絵梨さんの「ほがらかで、キュートな演技」は、笑いのツボにはまったという。

 ところで、貫地谷さん自身は、鉄道ではなく飛行機派。「せっかちなので、早く着いて、現地での時間を有効に使いたいというタイプ」。また「基本的にコレクションが好き」で、ブルーレイディスクやコミックなどは、「並べたときにきれい」であるようサイズがそろっていないと気が済まない性分らしい。

 小町と小玉、選ぶとするなら?と聞くと、「この男子2人はちょっと……」と口ごもる。むしろ彼らより、村川さんが演じたみどりが「すごく可愛くて、彼女の魅力に引かれていた」と明かす。それでもしいて挙げるなら、「男の色気っぽいものを感じる」小町に軍配を上げた。

 森田監督については「いっぱい動き回り、力いっぱい指導してくださるから汗だくでした」といい、「1人で全部の役を演じてみせ、それが一番面白いから、(演じる側としては)プレッシャーでした」と思い出を語った。森田監督は、普段は俳優にアドリブを許さないそうだが、終盤でのあずさの「サンキュー」というせりふは、貫地谷さんのアドリブだ。「それまで違う違うといわれていた中で、初めて『今の面白いね』といってもらえたので、とてもうれしかったですね」と笑顔で振り返った。

 数ある森田作品の中で「やっぱり、自分が出られた今回の作品が一番好きです」と今作を筆頭に挙げて胸を張る。そして「出てくる人たちがみんな本当にいい人たちで、気持ちがほっこり温かくなるし、人と人とのつながりを改めて思い直す、いいきっかけになると思うので、ぜひ映画館に見に行ってほしいです」と締めくくった。

 <プロフィル>

 1985年生まれ、東京都出身。おもな出演作に映画「スウィングガールズ」(04年)、「パレード」(10年)、テレビドラマ「ちりとてちん」(07年)、「ブザー・ビート~崖っぷちのヒーロー~」(09年)、NHK大河ドラマ「龍馬伝」(10年)など。08年、エランドール賞新人賞受賞。WOWOWのドラマ「向田邦子 イノセント」の4月7日放送分に出演のほか、4月5日からの3夜連続スペシャルドラマ「ブラックボード~時代と戦った教師たち~」(TBS系)、4月スタートの「家族のうた」(フジテレビ系)にも出演。映画「ぱいかじ南海作戦」が今夏公開予定。

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