オタ婚活:カップル成立率なんと5割 成功の秘訣は?

4月に開かれた「オタ婚活」の様子
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4月に開かれた「オタ婚活」の様子

 人気アニメ「らき☆すた」を使った町おこしで話題を集める埼玉県久喜市の鷲宮地区で、ユニークな婚活パーティー「オタ婚活」が話題になっている。対象は、アニメやマンガなどのサブカルチャーが理解できる「オタク」であることという条件付きだが、男性は定員の10倍以上の応募が殺到するほどの人気ぶり。4月に開かれたパーティーではカップル25組が誕生し、参加者に占めるカップル成立率はなんと5割近く。婚活ブームの最中、ひと味違う異色の婚活パーティー成功の秘訣(ひけつ)を探った。(毎日新聞デジタル)

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 10年に合併で町名が消えたものの鷲宮地区(旧鷲宮町)は、アニメファンなら誰もが知る町で、アニメ「らき☆すた」に登場する「鷹宮神社」のモデルになった鷲宮神社がある。同地には、07年のアニメ放送後から大勢のファンが訪れる“聖地巡礼”と呼ばれる現象が起き、同神社の三が日の初詣参拝客数は約47万人(12年実績)とアニメ放送前の5倍以上に急増。アニメ以外にも、地元の秋祭りではファンも一緒に神輿(みこし)を担いだり、女装のコスプレコンテストを実施するなど、アニメを使った町おこしの先進事例として、他の自治体が続々と視察に訪れるほどだ。

 「オタ婚活」を立案したのは、鷲宮商工会の松本真治さん(34)だ。10年9月ごろ、普段はアニメのキャラクターを「俺の嫁」と呼ぶ来訪者たちに、本音を聞き出すために個別に「婚活に興味がある?」と聞くと、誰もが「オタクに理解のある女性なら興味がある」と答えたのがきっかけだ。

 その後、募集告知がインターネットの記事になると、ネットの掲示板には賛否両論の意見が続出し、同時に商工会に参加希望のメールが殺到した。最終的には男女各20人の枠に男386人、女115人の応募があり、果ては落選者から「参加したいが何とかならないか」という問い合わせが来たほどで、当日は、このユニークな婚活パーティーを一目見ようと見物客まで会場に来てしまい、外で予定していたイベントを室内のパーティーに切り替えざるを得ないほどだった。

 そして4月に開催した4回目の「オタ婚活」は、これまでのノウハウから、食事よりも対話を重視してコストダウンを図り、代わりに参加費を500円のワンコインにした。定員も男女各50人に広げたこともあり、応募者は男が過去最高の555人、女は78人だった。最終的に男56人、女54人が参加し、うち25組がカップルになった。通常の婚活パーティーでカップルが成立する割合は、業界関係者によると「条件にも左右されるが5分の1ぐらい」といわれており、「オタ婚活」はかなりの高率だ。

 関係者や参加者らの話を総合すると、うまくいく理由は三つある。一つは「鷲宮」というブランドだ。同地区はこれまでアニメなどのサブカルチャーに理解を示し、町ぐるみで盛り上げてきた実績がものをいっており、参加者が安心して応募してくる。

 二つ目は「オタク趣味」という明確な条件があるため、参加者が自分をさらけ出せることだ。アニメやマンガの趣味は、女性側が隠そうとする意識が特に強く、男性側も「隠れオタク」だったと告白する人が少なくなかった。「今回が初めての婚活パーティーだった。安心して参加できた」と明かす人も多く、オタク趣味を気にして婚活に消極的だった層を掘り起こしている。

 三つ目は、参加者の詳細なプロフィル冊子を配布したことだ。ハンドルネーム、年齢、住所(市町村)、家族構成と同居の有無、最終学歴、自分の性格の紹介はもちろん、好きな趣味のジャンルや作品、キャラクター、好きな異性のタイプ、休日の過ごし方まで細かく書かれている。実はこの冊子、商工会は「自己紹介の手間を省く」という理由で制作したが、参加者の会話がスムーズになるきっかけになった。共通の趣味があるだけにカップルにならなくても相手に親近感を覚える人が多く、パーティー後に参加者が意気投合して飲みにいき、後日カップルになった例もあったという。

 参加してカップルになった埼玉県草加市の30代男性会社員は「趣味にアニメ、ゲームと記載しても変に言われないし、意気投合しやすい」と振り返った。また地元から参加した20代女性公務員は「お互いにオタクというのが前提のせいか、気張らずにできました」と明かしている。女性の参加者は「同性の仲間ができた」と喜ぶなど、カップルになれずとも得るものも多いようだ。

 同商工会では、ワンコイン「オタ婚活」の人気を受けて、アニメ「らき☆すた」のヒロインの柊かがみ・つかさ姉妹の誕生日となる7月7日に合わせて、第5回目の「オタ婚活」を実施する予定だ。このユニークな「婚活」が、今後どう展開していくか注目だ。

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