話題のライトノベルの魅力を担当編集者が語る「ラノベ質問状」。今回は、「あるゾンビ少女の災難」(池端亮著、蔓木鋼音画)です。角川書店スニーカー文庫編集部の女井正浩さんに作品の魅力を聞きました。
ウナギノボリ
10年前の仮面ライダーって? ジュノンボーイが主人公
−−この作品の魅力は?
ありがちな都市伝説を真に受けた6人の大学生たちが、大学の地下資料室に眠っていたゾンビ少女から「秘石」を奪ったことで目覚めさせてしまい……というと完全にホラー小説ですよね。ところがこのゾンビ少女ユーフロジーヌはもともと天然ボケなうえに、100年も眠っていたので現代日本ではバカ力くらいしか取りえがない残念キャラ。メイドのアルマがお嬢様を叱咤(しった)激励して人間どもを襲わせるのですが、命がかかっていますから彼らも負けずに反撃します。大アクションと頭脳戦、さらには状況下でも続くユーフロジーヌとアルマの掛け合い漫才をお楽しみください。
−−作品が生まれたきっかけは?
「13日の金曜日」を、殺人鬼ジェイソンの側から描いてみたらどうだろう、というのが最初のコンセプトでした。殺人鬼は殺人鬼で、いろいろ事情やら苦労があるのではないかと。池端亮さんはスニーカー文庫でデビューされ、もともとアクション描写にたけた方でしたが、もう少し「痛くて」「ハードな」、だけど「コミカルな」ものを作ってみたかったこともあり、単行本として2007年の秋に刊行しました。
作中に出てくるレンガをモチーフにした装丁が話題になったり、実写で予告映像を作ったりして刊行時もそれなりに盛り上がったのですが、担当の私が4年ぶりに出向先から帰任したタイミングでなんとアニメ化が決定。一番驚いたのは、私自身でしょう。ではスニーカー文庫版を、あらためてイラストをつけて刊行しようと思ったわけです。単行本→アニメ→ライトノベルという謎の順番なので、不思議な運に恵まれた作品だと思います。
−−作家さんとイラストレーターさんはどんな方でしょうか
池端さんはとにかく無口な方で……、あ、すごく長身でイケメンです。とってつけたようですが本当ですよ。それこそ10年以上、お仕事させていただいていますが、どんな方なのかよく分かりません。「ご飯とかは……特にいいです」的な距離感ですね。
蔓木鋼音さんは、素晴らしいキャラデザインとイラストを上げてくださいました。人がどんどん死んでいくお話にキャラクターイラストを合わせ、ライトノベルとして成立させるということで、かなりな無茶ぶりだったと反省しています。ですが、もともとゾンビにもホラーにもアクションにも一家言ある方で、打てば響く、というレスポンスでとても助かりました。
−−編集者として、この作品にかかわって興奮すること、逆に大変なことについてそれぞれ教えてください
イラストなしの単行本をアニメにしていただくということで、自身が担当したものとはいえ、全く違う視点で見直すことができて楽しかったですね。さらに、そのアニメとも別の角度でスニーカー文庫化もすることになったので、頭の体操的な面白さがありました。
ただ、刊行から5年もたっているので、そもそも物語の細部を覚えておらず、いきなりアニメの打ち合わせやシナリオ確認が始まってかなりバタつきました。幸い、池端さんは作品のメディアミックスについては任せていただける方だったので、その点はありがたかったのですが。
−−今後の展開、読者へ一言お願いします。
実は、まさかの実写化企画も進行中です……。いや、担当の私もまだ半信半疑なのですが。12月1日刊行で、こちらもまさかの続刊企画「あるゾンビ少女の入学」1・2をスニーカー文庫から刊行しますので、そのタイミングで実写化企画情報と、アニメ企画の続報を大きく出せると思います。「ゾンビ少女の入学」はタイトルの通り、学園アクションラブコメです。あの終わり方の後にラブコメ?という方もいらっしゃると思いますが、いろいろと仕掛けがしてあります。どうかお楽しみに!
角川書店 スニーカー文庫編集部 女井正浩
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