ラノベ質問状:「キノの旅」 作者も“旅人” 驚きの展開も予定

時雨沢恵一さん作、黒星紅白さんイラストの「キノの旅」16巻
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時雨沢恵一さん作、黒星紅白さんイラストの「キノの旅」16巻

 話題のライトノベルの魅力を担当編集者が語る「ラノベ質問状」。今回は、「キノの旅」(時雨沢恵一著、黒星紅白画)です。アスキー・メディアワークス電撃文庫編集部の吉岡雄介さんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 −−この作品の魅力は?

 この作品は、旅人のキノと、その相棒で言葉を話すモトラド(注:二輪車。空を飛ばないものだけを指す)のエルメスがさまざまな国を巡る短編連作です。彼らが旅の途中で3日間だけ滞在する国々では不思議な習慣や奇妙な登場人物が数多く登場します。思わずニヤリとしてしまう風刺の利いたお話、ほっこりする温かいお話、背筋の凍るような恐ろしいお話など、収録されるお話のバリエーションが豊富だという点も多くの読者の方に愛されている要因かと思います。キノとエルメス以外にも、シズ・陸・ティーや、師匠とその相棒、フォトとソウといった多彩で個性的なメンバーたちのお話にもご注目いただければと思います。もちろん、イラストレーターの黒星紅白さんが描いてくださる、キュートかつアーティスティックなイラストも、作品の大きな魅力の一つです。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 弊社では「電撃大賞」という小説とイラストの新人賞を毎年行っているのですが(現在は第20回募集中です)、「キノの旅」は小説部門の第6回最終選考作品です。受賞自体は逃したものの、2000年3月に「電撃hp」という弊社の小説誌(「電撃文庫MAGAZINE」の前身雑誌)への掲載後、7月に電撃文庫として出版されました。

 実は、1巻に収録されている「多数決の国」は応募時の原稿には入っていませんでした。なぜかというと……時雨沢さんが応募の際、電撃大賞の規定ページ数換算を勘違いしており、規定内に収まり切らないと思っていたためです(笑い)。応募時に丸々カットされていた「多数決の国」ですが、1巻を出版するにあたって無事収録されることとなりました。いや~、危なかったですね!

 −−作家さんとイラストレーターさんはどんな方でしょうか?

 まず、お二人ともきちんと締め切りを守ってくださる大変大人でまじめなクリエーターです!

 時雨沢さんはキノと同様に旅人です。執筆の合間に世界中を旅しておられるのですが、ご自身のバイクや車で旅に出られることが多いのも作品の登場人物たちと共通するポイントでしょうか。また、いつも旅先から編集部においしいお土産を送ってくださいます。いつも編集部員一同でおいしくいただいております。そんなグルメな時雨沢さんですが、ご自身は最近、分食ダイエットにハマっているようです。お会いする度にスリムになっていく姿を見るにつけ、担当としては喜ばしくもあり少々不安でもあります(笑い)。

 黒星さんはとっても物腰の柔らかい紳士という印象です。遠くにお住まいなのでなかなか編集部でお話しする機会は少ないのですが、お電話からでもその優しい人柄が伝わり毎回癒やされています。またサイン会など読者の方と直接触れ合う機会になると、いつも「緊張する……」とおっしゃられるシャイな一面も(笑い)。サイン会控室では、色紙に描くミニイラストの練習をされるなど、本当に読者思いな方だと感心させられます。

 −−編集者として、この作品にかかわって興奮すること、逆に大変なことについて教えてください。

 多くの読者の方に長年愛されている作品の、最初の読者になれるという点が最も興奮するところです。また、イベントやサイン会等でファンの方と触れ合う際、作品に対する思い入れや愛情がとんでもない熱量で伝わってきます。それを感じられるのも編集者として大変うれしい瞬間です。逆に長年続いているシリーズですので、似たような切り口のお話にならないかを気をつけねばならないところが大変といえば大変でしょうか。もちろん編集者より著者の方が大変なのは重々承知の上ですが……。

 −−今後の展開、読者へ一言お願いします。

 まず、10月に「キノの旅」最新刊の16巻が発売されましたので未読の方はぜひ! また、来年には「アリソン」「リリアとトレイズ」「メグとセロン」と続くシリーズの、集大成といえる新刊の発売も予定しておりますので続報をお待ちください。さらに、「キノの旅」読者の方には驚きの展開も予定しておりますので、ご注目よろしくお願いします!

 アスキー・メディアワークス 電撃文庫編集部 吉岡雄介

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