朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第99回 グリム童話「赤ずきん」

「赤ずきん(岩波の子どもの本)」著・グリム、バーナディット・ワッツ(岩波書店)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「赤ずきん(岩波の子どもの本)」著・グリム、バーナディット・ワッツ(岩波書店)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに100万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第99回はグリム童話「赤ずきん」だ。

ウナギノボリ

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 いよいよ年の瀬も押し迫り、大みそかも目前。私も今年1年間、皆さんをはじめたくさんの方のお世話になりました。この場を借りて厚くお礼申し上げます。

 さて、年末年始のお休みは「こたつでテレビ」という方も多いと思いますが、この時期の定番番組の一つに「格闘技」がありますよね。実は朗読の世界にも「格闘技」があることはご存じですか?

 その名はなんと「詩のボクシング」。1997年から開催されているこの「格闘技」は、リングに見立てたステージの上で2人の選手が互いに朗読を行い、より観衆の心をつかんだ方が勝者となるもので、「日本朗読ボクシング協会」によって運営されています。

 「二十億光年の孤独」で知られる谷川俊太郎さんも、過去チャンピオンに輝いているんですよ。ちなみに12月26日に「ボクシング・デー」という記念日がありますが、こちらはクリスマスプレゼントの箱(BOX)を開ける日、という意味で格闘のボクシングとは関係ありません。

 続いて、恒例のお誕生日のご紹介、今回は3人です。

 まず1人目は、12月26日の菊池寛さん(1888年生まれ)。文芸春秋社の創設者であり、作家としても「藤十郎の恋」などの代表作を持ち、海外文学の翻訳も行っていました。

 続いて同じ26日の海野十三(うんの・じゅうざ)さん(1897年生まれ)。当コーナー第5回でご紹介した「遊星植民説」のようなSF作品のほか、探偵・帆村荘六(ほむら・そうろく、シャーロックホームズのもじり)さんを主人公とした推理小説を発表しました。

 最後は12月28日の堀辰雄さん(1904年生まれ)。代表作の「風立ちぬ」は、スタジオジブリの最新作映画のモチーフの一つになったことで、再び脚光を浴びています。

 ではここで、朗読倶楽部のお話……朗読倶楽部部長・丙絵ゆいさんのお話・その7です。

 私たちが知っている部長さんと異なる、お家での部長さんの顔。その理由は、「弟」と関係があるとのこと。でも、以前一人っ子だと聞いていたのに……そんな私たちの疑問に答えるように、部長さんはゆっくりと話し始めました。

 昔、弟が欲しいと思ったことがあるという部長さん。小学2年生のとき、クラスで兄弟・姉妹の話題が出たのがきっかけだったとか。自分にも弟がいたら……と思った部長さんは、お家でお父さんにお願いしました。すると、普段は仏頂面のお父さんがとても申し訳なさそうな顔になって、

 「お母さんは体が弱くて、お前を産むときもかなり無理をした、だからお父さんはこれ以上無理をさせたくない」

 ……と、謝られました。

 部長さんはショックを受けたそうです。弟が無理だと分かったからではありません。きっと今までも無理をさせてきたに違いない……だから、これからはご両親に迷惑をかけない、良い子にならなければと決意したのでした……と、いうところで、今回はここまでです。

 次回もまた、よろしくお願いしますね(*^^*)

 ◇しおりの本の小道 グリム童話「赤ずきん」

 こんにちは、今年最後のご紹介になるお話はドイツのグリム兄弟によって編集された「グリム童話」の一つ、作品番号KHM 26「赤ずきん」です。

 古くはスウェーデンやフランスの民話に端を発し、シャルル・ペローさんの「ペロー童話集」(1697年)を経て、語り継がれた赤ずきんちゃんが、グリム童話に登場したのは1812年。

 以降1857年まで少しずつ改訂を重ねた作品は今日まで語り継がれる名作となっています。

 むかしむかし、あるところに、とても可愛らしい女の子がいました。おばあさんがこしらえた赤いずきんがトレードマークの彼女は「赤ずきん」と呼ばれていました。

 ある日、お母さんから病気のおばあさんのお見舞いを頼まれた赤ずきんちゃんは、お菓子とぶどう酒を手に森の中へと出かけていきます。その様子を見ていた狼さんは彼女をうまくそそのかし、おばあさんと赤ずきんちゃんを2人とも食べてしまおうとするのですが……。

 他の民話がそうであるように、このお話も時代とともに内容が変化した作品です。例えばトレードマークの「赤ずきん」は、主人公の名前であり題名にもなっていますが、初めから赤ずきんをかぶっていたわけではなく、ペロー童話集で初めて取り入れられた設定だと言われています。

 また、物語の最後に登場するある人物も、こうした再話の過程によって生まれたキャラクターだとか。興味のある方は、さらに調べてみることをオススメします。

 グリム童話になってからも、版を重ねるたびに少しずつ手が加えられているんですよ。

 ちなみに、以前ご紹介させていただいた「ヘンゼルとグレーテル」同様、「赤ずきん」も2011年に映画になりました。こちらは原作の童話をモチーフにしたオリジナルのサスペンス映画に仕上がっているそうで、なんと狼さんが人間に化けて人里に紛れ込み、村中がパニックに陥るというホラーな要素もあるそうです。

 私もこれから、レンタル屋さんに行ってみようかな……。

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

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