朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第101回 芥川龍之介「あばばばば」

「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさん
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「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに100万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第101回は芥川龍之介の「あばばばば」だ。

ウナギノボリ

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 お正月が明けて新学期も始まったところで、私のお家では鏡開きをしました。この鏡開き、元々は武家社会に伝わる新年をお祝いする風習が、一般に広まったものなんだそうです。

 ちなみに、お餅を「切る」という言い方は「切腹」を連想してしまうので、「開く」という言葉を使っているのだとか。七草がゆと同様に今年1年の無病息災をお願いする縁起物なので、どちらもおいしくいただきました!

 ……ただ、おいしすぎて、ちょっと食べ過ぎちゃったような……体重の方も気をつけないといけませんね(>_<)

 続いて、「武家」の「食べ物」つながりでもう一つ……鏡開きの日と同じ1月11日は「塩の日」です。

 戦国時代、内陸に領地を持つ武田信玄さんは、今川氏真さんによって水上の経済を封鎖され、塩不足にあえいでいました。この「塩止め」と呼ばれる事件に対して1569年のこの日、上杉謙信さんが因縁の宿敵であるはずの武田信玄さんに塩を送り届けたことがこの記念日の由来となっています。

 直接送ったのではなく、隣接していた上杉謙信さんの領地が経済封鎖をしなかっただけなど、塩止めについては諸説あるのですが、このことをきっかけにして「敵に塩を送る」という故事が生まれたのは確かなようです。

 最後は、3人の作家さんのお誕生日をご紹介します。

 まず1月8日は、詩人の堀口大学さん(1892年生まれ)。訳詩集「月下の一群」は、日本三大訳詩集の一つに数えられています。

 続いて1月10日はアレクセイ・ニコラエビッチ・トルストイさん(1883年生まれ・ロシア)。児童文学「おおきなかぶ」の作中で、かぶを抜こうとするシーンでの日本語訳「うんとこしょ、どっこいしょ」は、ご存じの方も多いのではないでしょうか?

 そして3人目、1月12日はシャルル・ペローさん(1628年生まれ・フランス)。このコーナーでも以前ご紹介した「ペロー童話集」の作者であり、多くの民話を再話して功績を残しました。

 ではここで、朗読倶楽部のお話……朗読倶楽部部長・丙絵ゆいさんのお話・その8です。

 その昔、弟が欲しかった部長さんですが、体の弱いお母さんには無理があると知ってショックを受けました。今までも、自分がわがままに振る舞うことで無理をさせてきたのではないかと考えた部長さんは、その日を境におとなしい良い子になることを決意したんだそうです。

 ……とはいうものの、急に自分を変えることなど、そうそうできるものではありません。

 本来の自分を押し殺している反動はどこかに表れてしまうもので、部長さんの場合、それを学校に求めるように……といっても、クラスで問題を起こすようなことがあれば親に通知されてしまうので、図書館で発散するようになり……やがてお家と学校で態度の使い分けを確立したのだとか。

 そして、これが部長さんと図書館司書になった先生との出会いを作り、先生から文芸部のメンバーとして部長さんを紹介される流れになったのだということを、私とみかえさんはこの時初めて知りました。

 家庭訪問の話に乗り気でなかったのは、こういう二面性を誰にも知られたくなかったからだという部長さん。でも、本来の部長さんの姿を家族が知らないというのは、なんだか寂しい気がします。

 もちろんそれは部長さん自身が一番分かっていることなのですが……と、いうところで、今回はここまでです。

 次回もまた、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 芥川龍之介「あばばばば」

 こんにちは、今回ご紹介するお話は芥川龍之介さんの「あばばばば」です。

 作者後期の作品によく登場する、堀川保吉(ほりかわ・やすきち)さんを中心とした「保吉もの」と呼ばれる作品の一つで、1923年に発表されました。

 「あばばばば」……おそらくは当時から、そして今日の目で見ても、とても個性的なタイトルですよね。

 皆さんは、この題名から何を連想されますか?

 海軍学校の教師として勤務する保吉さん。その通勤路の途中には、行き付けのたばこ屋さんがありました。

 何かあるたびに立ち寄っているので、商品の配置から無愛想な店主のクセに至るまで全て覚えてしまい、新味がなく退屈になったと感じていたのですが、ある日いつものようにお店へ顔を出すと、店主が座っているはずの場所に若い女性の店員がいたのです。

 まだお店のことに慣れていないのか、頼んだ品物を間違え、応対もしどろもどろでしたが、顔を赤らめるその姿に今時珍しい「恥じらいある女性像」を見た保吉さんは、彼女に親しみを感じるのでした……。

 以前、別作品「蜜柑(みかん)」の時にご紹介しましたが、芥川龍之介さんは海軍機関学校の英語教官をされていた時期がありました。このお話の主人公・保吉さんも同様の職業についており、芥川龍之介さん本人が体験したことを描いた私小説であると考えられています。

 ただし「保吉もの」が通常の私小説と比べていささか趣を異にするのは、保吉さんを主人公として内面の思想を描くのではなく、保吉さんの目から見た周囲の人たちに対する観察と感想に終始している点でしょうか。

 また機会があれば、他の「保吉もの」についてもご紹介してみたいと思います。

 ちなみに最初にお話ししたタイトルの意味は、物語のラストで明らかになるのですが……こちらはぜひ一度読んで、確かめてみてくださいね。

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

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