マンガ家の藤子不二雄Aさん(79)が27日、東京都内で行ったトークショーで大腸がんでの入院生活について語った。昨年末に体にイボ状のものができたため、医師の勧めで検査を受けたところ、大腸にがんが見つかったといい、「僕は本当に死のうと思った。ゴルフも何にもできなくなるしね。仕事はどうでもいいんだけど……」と冗談を交えながら状況を説明。東京都内の病院に入院し、4時間半の手術で無事がんを除去できたというが、その後、出血し集中治療室(ICU)に入った際には、トキワ荘の仲間たちが手招きする夢を見たと“臨死体験”も明かした。
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「ICUに4日間入ってうなされたんです。いろんな悪夢を見た。2本立てでね、大勢のドイツ人にウインナーを食えと迫られたんですよ」と笑わせつつ、「第2話は、夢の中で僕が田舎をさまよってる。朽ち果てた家があって、それがトキワ荘だった。2階の窓が開いて、石森(石ノ森章太郎)だったり赤塚(不二夫)だったり、手塚(治虫)先生もいるんですよ。手を振って『こっち来い』って呼んでて、懐かしい感じがして、行きそうになる夢まで見た。心に残っていた夢で、僕もそろそろそういう年になったし、呼ばれてるのかなあとひしひしと感じましたね」としみじみと語った。だが、経過は順調で、「なんと2週間で退院しちゃったんですよ。先生に聞いたら、『異常な回復力だ』って言われてね、非常にうれしかったのを覚えてます」と笑顔を見せた。
この日のイベントは、藤子不二雄Aさんと藤子・F・不二雄さんのコンビ「藤子不二雄」の自伝的マンガ「まんが道」の続編で、完結編となる「愛…しりそめし頃に…」のコミックス12巻(小学館)の発売を記念したトークショー&サイン会。同作は今年4月に、「まんが道」から数えて43年の歴史に幕を下ろしたが、「僕も高齢になってそろそろ死が近いじじいになったんで、未完のまんま終わったらいけないんじゃないかと思って、非常に残念だけど、終わらせたいと。一つの区切りを付ける意味で完結させたんですね」と説明した。
さらに、今後に創作活動について、「『愛…しりそめし頃に…』をやめて2カ月くらいたって、不思議なほっとした気持ちと寂しい気持ちが相まって、新しい作品……という気持ちになってない。こういう年になって、日本のシニアに元気になってもらえるようなマンガが描けたらと思っている。タイトルだけは決まってるんですけど、まったく白紙です」と語っていた。(毎日新聞デジタル)
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