23日公開された高畑勲監督の14年ぶり劇場版アニメでスタジオジブリの新作「かぐや姫の物語」で主人公のかぐや姫の声を演じ、声優に初挑戦した女優の朝倉あきさん。かぐや姫の育ての親・翁(おきな)役を務めた後の2012年6月に亡くなり、同作品が遺作となった地井武男さんや、媼(おうな)役の宮本信子さんとともに臨んだ収録には、独特の「空気感」があったという。「愛にあふれる女優さんになりたい」と話す朝倉さんに、収録のエピソードや作品にかける思いを聞いた。(毎日新聞デジタル)
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「かぐや姫の物語」は竹取物語を基にしており、製作期間8年、製作費50億円をかけてやっと完成した。朝倉さんは、2011年のゴールデンウイークにオーディションに臨んだといい、「オーディションでは手応えがなくて、泣きながら帰りました」と当時を振り返る。それだけに主人公のかぐや姫の声優を勝ち取った瞬間について朝倉さんは「信じられないという気持ち。家族に話したらすごく喜んでくれて、やっと実感した。うれしい気持ちが爆発した」と振り返る。
声を先にとり、その声に基づいて画を描くプレスコ(プレスコアリング)という手法で主に収録が行われた。朝倉さんは「俳優さん同士向き合ってではなくて、マイクに向かったまま心を込めてしゃべるということに、最初は戸惑いました」と苦労もあった様子。情景描写や登場人物の心情が丁寧に描かれた台本が「すべて」だったといい、高畑監督からの直接の指導もそこまで多くなかったと明かす。
プレスコでは、地井さんや宮本さんと3人で臨んだこともあった。朝倉さんは「地井さんと宮本さんと一緒にやっているとき、本当に翁と媼に愛されて育ててもらっている娘だと心から思いました」と話す。「得るものを得ようと思ったら芝居を見るしかないと思って、ずっとお芝居を見ていました」と勉強熱心な一面を見せる朝倉さんは、「今までに味わったことのない刺激を受けました」と告白。地井さんと宮本さんからは「空気感」を学んだといい、「確かにここには翁と媼とかぐや姫しかいないという空気感を肌で感じられた瞬間が多々あった。ああいう空気を感じられるのってお芝居をしている身としては幸せ」と刺激になった様子。
スケジュール的に地井さんとたくさん話せる環境ではなかったと明かした朝倉さんだが、「ちょっとした休憩に声をかけてくださったり、手作りのおにぎりを頬張られて食べたりしている姿を思い出します」と地井さんをしのび、「最後のあいさつのとき、『ちい散歩』のハンドタオルを『よかったらこれあげる』っていただいて。すごくうれしかった」と笑顔を見せた。
今後は「愛にあふれる女優さんになりたい」と話す朝倉さんに、また声優をやってみたいですか?と聞いてみると、「声の演技はすごく勉強になったので、たくさん経験したい」とにっこり。最後に「長い年月をかけてたくさんの方の思いと技術が詰まっているので、何度も繰り返してみて楽しんでいただきたい」とアピールした。
同作は、「ホーホケキョ となりの山田くん」(99年公開)以来14年ぶりの高畑監督新作ということもあり注目されている。当初は公開中の宮崎駿監督の新作「風立ちぬ」との同日公開が予定されていたが、その後、秋公開へ延期された。地井さん、宮本さんのほか、かぐや姫の幼なじみの捨丸をアニメーション映画の声優は初めてとなる俳優の高良健吾さんが演じている。高畑淳子さん、田畑智子さん、立川志の輔さん、上川隆也さん、伊集院光さん、宇崎竜童さん、中村七之助さん、橋爪功さん、朝丘雪路さん、仲代達矢さんも声で出演している。
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