ユーザー数が約150万人を突破するなど話題のブラウザーゲーム「艦隊これくしょん~艦これ~」(角川ゲームス)。週刊誌で人気ぶりが紹介されるなど社会現象になりつつあり、砲塔を身に着けた女の子のイラストを見たことがある人は多いかもしれない。一方で、ゲームの内容や流行している理由が分からない……という声もある。「艦これ」ファンの声を紹介しながら、その魅力を解説する。
あなたにオススメ
「豊臣兄弟!」では池松壮亮が! 大河ドラマ“秀吉俳優”史を振り返る
「艦これ」は、第二次世界大戦期の旧日本海軍の艦艇を題材にしたゲームで、プレーヤーは“提督”となり、艦艇を美少女に擬人化した“艦娘(かんむす)”を強化しながら謎の敵・深海棲艦 (しんかいせいかん)と戦う。対応環境はWindowsやMac OSXで、基本利用料無料のアイテム課金方式となっている。2013年4月にスタートし、すぐに人気に火がつき、参加希望者が殺到したため、同年6月からは新規ユーザーの登録を制限しているほどだ。これから始めようとしても、残念ながらすぐ遊べるとは限らない。
関連書籍や雑誌も好調で、昨年、同ゲームを特集したゲーム・アニメ情報誌「コンプティーク」(KADOKAWA)10月号が発売されると、売り切れ店が続出し、重版されたことも話題になった。さらに、アニメ化やPSVita向けのゲームの発売も決まっているなどさまざまなメディアミックスが予定されている。
また、大和役に「けいおん!」の竹達彩奈さん、吹雪役に「中二病でも恋がしたい」の上坂すみれさん、伊168役に「マクロスF」の中島愛さんと、人気声優を起用していることも話題になっている。
ゲームの内容はいたってシンプルで、プレーヤーである“提督”が、艦娘を育成して艦隊を作り、敵の深海棲艦を倒したり、艦娘を集めるなどのミッションをクリアしていくだけだ。戦闘はオートで行われるため、わずらわしい操作は必要なく、ネットゲームの定番である他のユーザーとの協力も必要ない。シンプルではあるが、ゲーム自体は決して簡単なわけではなく、最初の難関とされる「南西諸島海域・沖ノ島海域(通称2−4)」を攻略するために、ネットで提督同士が意見を交換するなど、盛り上がりをみせている。
昨年6月ごろからプレーしているという“ベテラン提督”の会社員男性は「働いていると、ログインが不定期になるので、協力プレーのあるゲームは仲間に迷惑をかけることがある。『艦これ』は仲間のことを気にしないので、気軽にプレーできる。短時間でサクッと遊べるし、難易度もそれなりに高いため、じっくり楽しめる」と魅力を語る。
ブラウザーゲームを含むネットゲームは、ゲームを有利に進めるための一部アイテムが有料になっているケースも多く、ゲームに熱中したプレーヤーが数十万円以上をつぎ込むなどの問題が指摘されている。一方、「艦これ」は過度な課金をしなくても楽しめるといわれている。例えば、艦娘を建造するために必要な資材を購入すると、ゲームをスムーズに進めることができるが、課金をしなくてもミッションをクリアしていけば、資材は手に入るようになっている。
“提督歴半年”の会社員男性は「最初の1カ月は4000円ほど課金したが、今はほとんど課金していない。課金なしでも攻略はできる」と話す。運営側は過度な課金を控えるように、ゲーム内で注意書きをしており、書籍やグッズ、家庭用ゲームなどの販売やアニメ化などメディアミックスによる収益化も重視しているようだ。
ゲームには、明確なストーリーが用意されているわけではなく、敵の正体も不明だ。艦娘に関する情報も少なく、ファンは、艦娘の造形や決めゼリフ、性能、モデルとなった艦艇などの情報からキャラクターの性格を想像し、ネットの掲示板でその魅力を語り合ったり、イラストやマンガといった2次創作を投稿したりしている。ファンの想像力がキャラクター設定を補完し、ファンの間で半ば“公式化”していくのは、初音ミクがブレークした経緯に似ている。
なお、艦娘は敵の攻撃を受けて轟沈(ごうちん)することもあり、死んでも復活できる一般的なゲームと異なり、沈んだ艦娘は復活できない。「レベル60まで育てた艦娘が沈んだときは、喪失感で一日中、何もやる気が起きなかった」という声もあり、“娘”のように愛情を注いで育てている提督も多いようだ。こうしたやり直しのできないスリリングな要素が、艦娘への強い愛着の一因になっているようだ。
「艦これ」の人気の理由は、過度な課金を必要としない革新的なシステム、魅力的なキャラクターの存在にあるといえるだろう。今後もアニメ化などメディアミックスによって、ますます人気が過熱することが考えられる。さらなる展開から目が離せない。