ブラウザーゲーム「艦隊これくしょん−艦これ−」のヒットの影響で、模型業界が特需に沸いている。ゲームに登場する“艦娘(かんむす)”のモデルとなった第二次世界大戦期の旧日本海軍の艦艇のプラモデルが好調で、東京・秋葉原の模型専門店では売り上げが前年の約10倍に跳ね上がったといい、メーカーによると売り上げが前年の5倍に急伸したモデルも登場しているという。品薄状態が続いており、メーカー関係者は「生産が追いつかない」とうれしい悲鳴を上げている。過熱する艦艇模型ブームを追った。
ウナギノボリ
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「艦これ」は、第二次世界大戦期の旧日本海軍などの艦艇を題材にしたブラウザーゲームで、プレーヤーは“提督”となり、艦艇を美少女に擬人化した“艦娘(かんむす)”を強化しながら謎の敵と戦う。角川ゲームスが開発・運営し、DMM.comがサービスを提供しており、ユーザー数は190万人を突破するなど人気を集め、テレビアニメ化も決定している。
艦艇のプラモデルは主に、タミヤや青島文化教材社、ハセガワから発売されている。売り上げが伸び始めたのは昨年夏ごろといい、ゲームが話題になり始めた時期と重なる。艦艇プラモは40年以上の歴史を誇るが、「艦これ」ブーム以前、購買層は50代以上の男性が中心で、戦車や飛行機などほかのミリタリー関係のプラモの半分程度の市場だったという。
ブーム以降は、20、30代男性のファンが急増するなど客層が変わり、例えば、ハセガワの軽巡洋艦「天龍」や「龍田」のプラモデルの売り上げは年間400~500個程度だったが、昨夏ごろから約5倍に増え、担当者によると「生産が追いつかず、品切れ状態が続いているモデルもある」という。
プラモデルなどを扱う東京・秋葉原のボークスホビー天国では昨年8月に「艦これ」コーナーを設け、艦娘のイラストのPOPを作って艦艇プラモを販売したところ、売り上げが昨年の約10倍に急増した。同店では、プラモデルとともに細かいパーツを制作できるエッチングパーツなど関連商品を購入する客も多いという。青島文化教材社の担当者は「若い方に、プラモデルに興味を持っていただくきっかけになったことがうれしい」と話す。模型業界は「艦これ」をきっかけに、高齢化が進むミリタリー関連のプラモファンの若返りに期待しているようだ。
メーカー側は、今回の特需を受け、「艦これ」とのコラボにも乗り出している。タミヤと青島文化教材社、ハセガワの3社が展開する艦艇プラモ「ウォーターライン(WL)」シリーズから「艦これ」のコラボモデルが昨年11月発売された。商品のパッケージを艦娘がプリントされたものに変更し、カードやシールなどを追加したもので、こちらも好調だ。関係者は「(ゲームを手がける田中謙介)プロデューサーがWLシリーズのファンだったこともあり、コラボをスムーズに進めることができた」と説明しており、制作サイドの熱意もあってコラボが実現したという。
艦艇のプラモデルの売り上げが急増したのは、ゲームをきっかけに艦娘の“元ネタ”である艦艇に興味を持ったファンが多いためだと考えられる。また「艦これ」は、今でこそフィギュアなどのグッズや関連書籍が続々と登場しているが、ゲームが話題になり始めた昨夏はグッズの種類が少なく、ファンのグッズへの飢餓感が模型業界に特需をもたらしたのかもしれない。模型専門店のスタッフによると「関連グッズは増えているが、艦艇のプラモデルの売れ行きは落ちていない」といい、ブームはまだまだ続きそうだ。
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