昨年から今年にかけて、ロボットアニメが次々と作品数を増やすなど盛り上がりを見せている。昨年も「革命機ヴァルヴレイヴ」「翠星のガルガンティア」「銀河機攻隊マジェスティックプリンス」といった本格派の作品が登場したが、今年の4月は「キャプテン・アース」や「シドニアの騎士」など5本もの新作がスタート。夏にも「ALDNOAH.ZERO(アルドノア・ゼロ)」や「白銀の意思 アルジェヴォルン」といったオリジナル・ロボットアニメが控えている。すでに市場を確立した「ガンダム」や「マクロス」シリーズを除き、一時は“絶滅危惧種”と危ぶまれていたロボットアニメがルネサンス(復興)の兆しを見せている。その理由を追った。
ウナギノボリ
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ロボットアニメも「ダンボール戦機」シリーズなど人が乗らない“ホビーロボット系”は好不調の波はあっても安定した人気を保っている。ただ、ここで注目すべきは、人が乗る“巨大ロボットもの”だ。ロボットアニメは「回顧を超えて『時代劇』と同等の域に達した」というのが考えうる理由の一つだ。時代劇は昔から親しまれている人気ジャンルで、波はあるものの今なお放送され続けている。江戸時代以前を舞台とし、着物をまとい刀を差しまげを結う−−という「お約束」は流行、時代を超えた一種の様式美であり、視聴者に安心感を与える。
一方、時代劇は、その枠の中で時代考証をリニューアルし、ドラマをその時々に合わせた味付けにしていく。そうした「お約束の中の成熟」は、ロボットアニメにも見られるものだ。1990年代半ばに、「新世紀エヴァンゲリオン」が内省的な主人公や謎に包まれた世界観によって「巨大ロボと秘密基地」の定式をよみがえらせたような新たな試みが、今のアニメでも再び動き始めている。「革命機ヴァルヴレイヴ」は、人気編集者を制作スタッフに加えて、「エヴァ」に代表される「セカイ系」の流れを取り込んだ作りになっており、「翠星のガルガンティア」は、ファースト・コンタクトの古典的SFを持ち込んで再構成し人気を集めた。
そして“人が乗る”巨大ロボットアニメは、海外で受けるコンテンツとしても有望だ。海外では、ヒーローもロボットも等身大のものがほとんどで、だからこそ「ゴルドラック」(UFOロボ グレンダイザー)や、「超時空要塞マクロス」など複数の作品を再構成した「ロボテック」も欧米で大ヒットした。
ジャンルの成熟や経済的な期待以上に、巨大ロボットアニメは「新地平を切り開く創作の場」として大きなポテンシャルを秘めている。そもそも巨大ロボットそのものが、言ってみれば「世界に風穴を開ける」存在だ。戦場では身長の高さが不利になる(射撃のいい的だ)し、二足歩行ロボットは、現実の常識では非合理も甚だしい。
だから、アニメの中の“現実”の方を変えることになる。超古代の遺跡から発掘される、未知のエネルギー源が発見される……などの独自の世界が構築され、ドラマも広がる。巨大ロボットという制約が、スタッフの力を引き出すのだ。
巨大ロボットは単なる機械ではなく、キャラクターでもある。顔と手足を持つ巨人のアクションは人のそれと同じ演技だ。乗りこんだパイロットの自我が拡張され、現代戦では失われた一騎打ち、戦場での名乗りにリアリティーを呼び戻す。その分かりやすい例は、現在放送中の「ノブナガ・ザ・フール」だろう。「東の星」の小国・オワリの跡取り「オダ・ノブナガ」が巨大ロボット「大イクサヨロイ」に乗り、敵を蹴散らす。戦国時代の世界観を、ロボットアニメに組み込むことで新しい風を取り込んだ。
ただ、莫大(ばくだい)な作画カロリーを必要とするロボットアニメには、それを支える人材と環境の整備がなくてはならない。近年は3DCGを得意とする制作スタジオの成長がめざましく、テレビシリーズで巨大ロボット戦を描くハードルも下がってきている。一方でそんな3Dの波に対抗するように、あえて手描きにこだわる動きも活発だ。過去を知らない若手スタッフへの世代交代や切磋琢磨(せっさたくま)が進むロボットアニメのルネサンスの兆しは、ますます加速していくのではないだろうか。(多根清史/アニメ批評家)
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