次世代プロデューサーに聞く1:テレ東はなぜ元気なのか?

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 「笑っていいとも!」(フジテレビ)や「さんまのスーパーからくりTV」(TBS)など名物バラエティー番組が終わりを迎える中、各局の実力派プロデューサーがテレビの未来を語り合うイベント「テレビマンオールスター戦」が13日午後1時から、早稲田大学大隈記念講堂で開かれる。イベントを前に、「ダウンタウンDX」(読売テレビ)の勝田恒次さん、「ジョージ・ポットマンの平成史」(テレビ東京)の高橋弘樹さん、「リアル脱出ゲームTV」(TBS)の中島啓介さんの、次世代のテレビを担う3人のプロデューサーに「テレビの未来」を聞いた。第1回は、「元気なテレ東」の真実と、ビジネスとしてのバラエティーが話題となった。

ウナギノボリ

−−勝田さんは「ダウンタウンDX」一筋ですよね。

勝田 入社21年ですが、入社の年に「ダウンタウンDX」が始まって、そこでADからディレクター、アシスタントプロデューサー、そしてプロデューサーやってみたいな感じで。どっちかっていうと僕のスタンダードが「DX」、「DX」でやったことがそのままの感じでやってきた。その中で学んできたことが正解かどうか分からないけど、正解と信じてやっている感じです。

−−中島さん、高橋さんの番組は見ていらっしゃいますか。感想があればお願いします。

勝田 もちろん見ています。中島さんがやっていることは、僕は発想できないことだなと思います。視聴者となるべく近い存在でありたい、視聴者の心をつかみたいというのの一つの切り口として、分かりづらくて温度が感じられない視聴率ではなく、即座に感じられる一つのアイテムとしてネットをうまく使っている感じがしますね。

−−高橋さんの印象はどうですか。

勝田 読売テレビでも、“テレ東テイスト”というかそういう番組を結構やってきたけど、今思い切ってやれないこともあったりするので、それを実践されているので注目して見ちゃう。スタッフが「テレ東さんがやっているああいう企画みたいな」という前振りをつけたりするので、刺さっているのを肉感として感じながら見ている。

−−中島さんから見て、勝田さん、高橋さんの番組はいかがですか。

中島 「ダウンタウンDX」は、しかも新しいことにも手を伸ばすことを怠らないということをずっとやられていて、その中で番組が変化されているのすごいなあと思います。僕はまだ正直ゴールデンの枠に挑戦させてもらったのって、レギュラーはないですし、特番は何回かしかない。なかなかそこで数字取りにいくのって、自分は力不足で難しいと思っていて、しかも新しいことに挑戦されている面白さ、僕らの世代から見ても感じますね。

 テレビ東京さんの番組はよく見ていますね。企画が、切り口として面白いですし、テレビってこうって思うようなことが勉強になるし、感じることが多い。テレ東さんの生き方がかっこいいなと思う。テレ東中心に見ているというか。(高橋さんに)最近上の世代をターゲットにしましょうという指令出ませんでした?

高橋 ずっと前から(笑い)。

中島 にも関わらず若い人が面白いという番組が、テレ東さんは多いじゃないですか。それがすごい。今自分が考えていることの多くは、深夜もゴールデンやるときもそうですけど、なるべくスポンサーを巻き込んで、少しでも多く製作費をいただいて、ちょっとでも映像表現としてかっこいい風なものを作ってみたいというのはある。

−−高橋さんは他の二人の番組についてどうですか。

高橋 悪気はまったくなく、テレビを本当に見ないんで。見たことがないんですけど。視聴率を分析する上では拝見して、ゴールデンで取り続けるってすごいと思いますし、「リアル脱出ゲームTV」って話題になったじゃないですか。僕に思いつかない発想だと思いますし。視聴率を目指した上で、さらに違う指標を目指すのがすごいと思う。

−−最近の「テレ東さんが元気」という評判ですが。

高橋 テレ東が調子いいっていうのはあれはうそですね。判官びいきで、一番弱い存在だからなんとなく愛でておこうと(笑い)。みなさんにご愛顧いただいているだけのこと。実際はそんな数字が目に見えて上がっているわけでないし。ただ企画性が強いのは、それが目に付いているだけ。他局でも企画が立っているものあるんだけれども、ゴールデンの番組で、他局は人気タレントを出演させられるから、結果すごいちゃんとした番組になっている。うちはゴールデンでも人気タレントを出せなくて、企画の部分しか見えていないというのがリアルなところだと思う。

−−テレビ東京では、面白い発想が出やすい?

高橋 企画が通りやすいというのはあるかもしれない。かけている予算が少ないから、失敗したときにリスクが少ないから、インターネットの世界の方がエッジが効いたことができるように、失敗したときにリスクが少ないから、やりやすい雰囲気はあるかもしれない。他局で企画を出したことないですから分からないないですけどね。

勝田 大事ですよね。うちなんかは通らない。とりあえずやってみろという風潮があったのが、今は形にこだわったりして、通りづらくなってきているのと、テレビが成熟してきて昔は軽くやれるという文化があったが、今はなくなってきたのかなというのはある。

−−だいぶ変わりましたか?

勝田 まずはやってみろというのはあった。ダメだったらその代わり批判するぞ、というすごいまっとうな時代があって、いい空気をテレ東さんにすごい感じる。やってみてよかったら続けるし、悪かったらじゃあ次考えればいいという新陳代謝が早くて、すごくうらやましい。会議の枕詞で放送作家が「テレ東のあの番組知ってます?」ってすごく最近多いんですよね。

−−TBSは?

中島 もろに意識してますけど、番組の演出としてではなく、より強い部分を意識しているのは、演出じゃないところを意識しながら作っているというか。

−−中島さんが意識しているのは?

中島 今人口のボリュームゾーンで一番大きいのは65歳ぐらいで、15年後、自分が40歳くらいになって、番組作っているときに一番大きいところ80歳じゃん!って思ったんです。視聴率って人口の分布によって大きく影響してくるわけで、スポンサーはそこをよりどころにお金をくれるじゃないですか。80歳がボリュームゾーンとして一番大きいとなると、指標として成立しないでしょう。90年ごろって一番大きいところが40代で、そこに対して広告を打つことの意味って、なんとなくターゲットに対して合っていたけど、それが80代になっちゃっうと、自分が広告主の立場だったら、どう考えてもおかしいですよね。そうすると、僕が40歳のときに、テレビでお金稼ぐ場所なくなっちゃうみたいなことを、今考えているんです。

−−広告費ということですね。

中島 年間の広告費というのは、2009年で落ち込みましたが、また景気とともに盛り返している。テレビとネットと新聞とラジオ全部合わせて広告費。景気によりますがそんなに下がるわけではない。悪く言うわけではないんですが、インターネット広告費は上がりすぎている気がする。そこを奪い返すために、どういう番組を作ったらいいかというのを今考えています。スポンサーも最近気づき始めたと思っているんで、奪い返すチャンスある! 今まで制作者は考えなくていいみたいな、そういう雰囲気がありましたが、6年間会社で過ごしてきたら、あれ、制作だけじゃなくて、実は何も実績としては中々出てこない。自分で考えなきゃな。そこを意識している。そこを演出を逆算して入れているということをやってるつもりです。

−−聞いてみてどうですか?

高橋 僕ね、中島さんと根本的に脳が違うなと思いました(笑い)。そんなこと考えたことなくて、考えないといけないというのは理解してるけど、考えるところから逃げ続けているし、考える仕事でないとも思っているかもしれない。

 企画をやりたいとき、人の家をのぞいてみたいとか、人に付いていきたいとか、だからこの企画をやりたいと思う。おっしゃったように40歳になったときに、テレビがどうなるか、という考え方をしているからこそ、「リアル脱出ゲームTV」みたいなものができると思った。僕は、どちらかというとオールド寄りなのかもしれない(笑い)。演出家という脳なのか、プロデューサーという脳なのかという気もしましたが、中島さんは“プロのプロデューサー”だと思った。こういうプロデューサーと組みたいなと思いました!

勝田 中島さんが言われたことは勉強中。意識せざるを得ない。知っておかないとしゃべれなくなる。演出はそこを考えずまずは面白い企画として走るっていうことが、振り切ることが大事と思うので、違う脳みそかなという感じ。

−−入社まもなく、意欲的な企画がよく通りましたね。

中島 運が良かった。「リアル脱出ゲームTV」を最初にやったのは2013年1月1日。枠としてとったのは2年前ですが、その時期、なんとなく「新しいことやってみてよ」「とにかくやってみろ」的な空気がTBSにあったんです。でもそこに出てくる企画があまりなかったので、いいタイミングだと思って出したのがこの企画でした。「若い奴言ってるから深夜でやってみれば」と決まって、ラッキーだったですね。

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