知念里奈:「息子の成長を感じながらこの役をやっている」 舞台「ミス・サイゴン」に出演

ミュージカル「ミス・サイゴン」でキム役を演じる知念里奈さん
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ミュージカル「ミス・サイゴン」でキム役を演じる知念里奈さん

 歌手で女優の知念里奈さんが、25日から上演されるミュージカル「ミス・サイゴン」にキム役で出演する。今作は、ベトナム戦争末期を背景に、キムが愛する男性と引き裂かれながらも1人で子供を産み、育てていく姿を描いた物語。息子の未来を思い、すべてを捧げるという“究極の愛”が作品のテーマになっている。2004年の公演から10年間にわたってキムを演じ、実生活では8歳の男の子の母でもある知念さんに、役への臨み方や母としての日常生活などについて聞いた。

ウナギノボリ

 −−知念さんは歌手としてデビューし、今は主に舞台で活躍されていますが、演技にはもともと興味があったんですか?

 そうですね。沖縄の養成所(沖縄アクターズスクール)にいたころから既存のストーリーをスクール風にアレンジしたオリジナルストーリーをやっていたので、お芝居には興味があったし、そのころからミュージカルがすごく好きでした。初舞台が03年の「ジキル&ハイド」だったんですけど、メロディーにせりふを乗せて感情を表現したり、別の役を生きるみたいなことが好きだったので、うれしかったですね。

 −−初めてミュージカルを経験したときはどう思いましたか?

 歌い方も歌謡曲とはまったく違いますし、ファルセット(裏声)を使う役柄だったので、「ファルセットって何?」っていうところから始まって、最初は全然できなくて泣きながらのお稽古(けいこ)でしたね。本番になってからも、お客様の視線が、なぜ畑違いの私がそこに立ってるんだ、みたいに見られてるような気がずっとしていて、毎日、いいといわれるすべてのことをやって……。例えば、走った方がいいといわれたら本番前に走ったり、ピアノが弾ける方と一緒に練習をやり直させてもらったり。でも公演が終わるころには、一生懸命やったことが日々結果として出せるっていう手応えがあって、自分の性格に合ってるなって思いました。みんなと作り上げるというのが私は好きだし、作品のメッセージを伝えるにあたって信念を感じることができる大きなテーマの作品が多いので、やりがいを感じますね。

 −−今回、「ミス・サイゴン」で知念さんが演じるのは、エンジニア(市村正親さんと駒田一さんの交互出演)が経営するキャバレーで働くキムという役で、米兵クリスとの間に生まれた息子を育てながら離れ離れになったクリスとの再会を待ち、最後はある決断をする、というストーリーです。キムはどのように考えて演じていますか?

 キムはとても素直で純粋で芯が強くて……と演出家にいわれて10年間演じてきたんですけど、私が実際に母親になって思うのは、キムって強くてすごい人、みたいにいわれるんだけど、自分の子供を守るためにはなんでもするだろうし、そういう意味で母はやっぱり強いので、世の中のお母さんはみんな同じような決断をするんじゃないのかなって。出産前にも一度この役をやらせてもらってるんですけど、気持ちの作り方がホントに変わって、多くの母の話なんじゃないかなっていう考えになりました。

 −−知念さんも、息子さんのためには“何でもする母”ですか?

 そうですね。私も1人(親)なので、ご飯も作るし(子供と)サッカーもするし、PTAにも行くし、仕事もするし……。今、息子は8歳で、3歳くらいのときに「ミス・サイゴン」をやって、一昨年もやって、そして今回なので、息子の成長を感じながらこの役をずっとやっているんですけど、一時は(自分の息子と役の息子の)年齢がかぶるときがあって、すごくつらかったんです。自分の毎日に置き換えるとキムってどういう人なのかっていうところから役を探ったりするので、(実の息子と)年齢が近いとキツイところがありましたね。

 −−子育てをしていて、最近、感じることは?

 小さいころは2人で一緒に遊べるものがたくさんあったんだけど、8歳になって、友達と遊ぶことや1人で部屋でマンガを読むことに重きが置かれるようになってきてる気がします。一時から「コロコロコミック」(小学館)を読み始めて、最近は「最強ジャンプ」(集英社)っていうのがあって「僕はジャンプに替えたいんだ」っていわれたのでこの間チェックしたら、ちょっとまだ早いなっていう絵があって、「これはちょっと違うんじゃないの?」って(笑い)。

 −−ところで、1992年の日本初演以来、「ミス・サイゴン」に出演し続けている市村正親さんの印象はいかがですか?

 いや、もう市村さんは一昨年よりも元気なんですよね(笑い)。ああいう大先輩が現役で、同じ作品で同じ役を22年間もやっていらっしゃるっていうのはホントに心強いし、尊敬します。年齢を重ねても体力をキープして、はつらつとしてらっしゃる。そんなエネルギー(を持った人)を私も目指したいです。

 −−では最後に公演への意気込みとメッセージをお願いします!

 役を演じるときって、自分の似ているところを探して、それを糸口として寄っていくのがやりやすいんですけど、10年間演じてきて改めて役を演じるにあたって、今回はあえて自分とキムとの違いというか、17歳の少女(キム)だったらどうするかっていうのを掘り下げたいと思ってます。いろんな立場の人が一生懸命生きる姿と、それぞれが求める愛や正義が描かれているので、いろいろ共感してもらえると思いますし、改めて自分の人生を振り返って、いろんなことを考えるきっかけになる作品なんじゃないかなと思います。

 <プロフィル>

 1981年2月9日生まれ、沖縄県出身。96年にシングル「DO−DO FOR ME」で歌手デビュー。2003年にはミュージカル「ジキル&ハイド」で初舞台を踏む。知念さんが初めてハマッたポップカルチャーは、マイケル・ジャクソンさん。「父がマイケル・ジャクソンがすごく好きで、一緒に歌って踊ってました。映像が残ってるんですけど、3歳ぐらいでもう『スリラー』を踊ってましたね」と話した。「ミス・サイゴン」は、7月25日~8月26日に帝国劇場(東京都千代田区)で上演されるほか、全6カ所での公演を予定。

 (インタビュー・文・撮影:水白京)

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