ライトノベル展望:ネット発の小説が席巻 ネット評価と実売のギャップも

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 出版不況の中でも唯一の“成長分野”とされる、若者向けのイラスト付き小説「ライトノベル」。2014年の売れ筋は、いずれもインターネット発の作品だった。ライトノベルの市場を振り返りながら、今後の展望を探った。

ウナギノボリ

 ◇トップ3がネット発

 ライトノベルのコーナーが充実している東京・秋葉原にある書店「書泉ブックタワー」。同店で売れたライトノベルシリーズ作品別の売り上げランキングによると、2014年の年間ランキング(2013年12月1日~2014年11月30日)は、1位が佐島勤さんの「魔法科高校の劣等生」だった。2位は昨年の年間1位だった川原礫(れき)さんの「ソードアート・オンライン」で、3位はNHKでテレビアニメ化された橙乃ままれさんの「ログ・ホライズン」。上位3作品に共通するのは、インターネットから生まれた小説であることだ。

 ライトノベルに精通する同店の田村恵子さんは、「購入者の中心は、30~40歳代のサラリーマンで、『スレイヤーズ』や『ロードス島戦記』を知っている世代。彼らはかつて、面白い作品をいち早く見つけるため、新人作家の新作でもまとめ買いする傾向にありました」と話す。ところが今は、そうした世代がネット発の小説に目を向けており、その流れで、新人作家の作品を買わなくなっているのが現状だという。

 ◇アニメ化の影響が加速

 さらに、売れ行きの動向に、アニメ化の影響が以前よりも大きくなったという。理由は、新規レーベルの参入もあり、ライトノベルの市場の刊行点数が増えていることだ。作品の点数が増えると読者の目が届かなくなり、そのためアニメを見てから買うケースが多くなっているという。今年放送された「ソードアート・オンライン」の場合、テレビアニメになった巻だけが売れる傾向にあったと明かす。

 書泉のランキングの中で、アニメ化も影響が顕著に出たのが、榎宮祐さんの「ノーゲーム・ノーライフ」で、アニメの1、2話が放送されると、全巻をまとめ買いするケースもあった。また、アニメの再放送も本の売れ行きに影響があり、さらにアニメの内容によっても変わるという。

 ◇ネット評価と実売のギャップも

 刊行点数が増えるのに合わせて、インターネットの批評や口コミが影響しているのは事実だが、自分で作品に目を通さず作品を評価する人が増えたのが悩みだ。田村さんは「ネットの評価と、実際の売れ行きとギャップがある作品もありますね。小説は個人の好みで評価が変わります。ネットの批評で購入を判断するのでなく、試し読みをするなどして判断してほしいですね」と話している。

 ◇書泉 2014年年間ラノベランキング

1位 魔法科高校の劣等生

2位 ソードアート・オンライン

3位 ログ・ホライズン

4位 ノーゲーム・ノーライフ

5位 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか

6位 <物語>シリーズ

7位 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。

8位 新約 とある魔術の禁書目録

9位 覇剣の皇姫アルティーナ

10位 はたらく魔王さま!

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