2014年も数々のアニメが放送され、視聴者を楽しませてくれた。週に約100本(再放送含む)のアニメを視聴している“オタレント”の小新井涼さんが2014年のアニメ事情を振り返る。
ウナギノボリ
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2014年をアニメで振り返ってみると、「過渡期」の年だったといえるのではないでしょうか。今回は過渡期だった2014年を二つの要素で振り返ってみたいと思います。
まず一つ目にこれまでと異なる新たな原作媒体の登場が挙げられます。ソーシャルゲーム、ブラウザーゲームやスマホゲーム原作のゲームとして、2012年に「探検ドリランド」、2013年には「絶対防衛レヴィアタン」、そして2014年は「魔法少女大戦」などがありました。来年には、ついに「艦隊これくしょん」「IDOLM@STER シンデレラガールズ」といった人気作がアニメ化されます。
これらの作品はいわゆる“原作もの”ではあるのですが、マンガやライトノベルと違って、原作に設定や世界観などはあるものの、必ずしも詳細なストーリーが用意されているわけではありません。ところが、アニメ化されると原作の世界観を土台にした「物語のオリジナル性」が逆に魅力となっているように感じます。今期の「神撃のバハムート GENESIS」に至っては物語の作り込みに圧倒されるほどでした。
原作のゲームが基本プレー無料で遊べるという手軽さもあって、アニメを見てゲームを遊んでみようと思う視聴者も多いのではないでしょうか。実際、私もアニメ化された後に「ガールフレンド(仮)」を遊びだしましたし、「チェインクロニクル」はアニメ化される前からのお気に入りです。
そんな「原作ゲームの宣伝媒体としてのアニメ」「アニメの宣伝媒体としての原作ゲーム」という制作サイドが見込む相乗効果も、他の原作ものよりも高いのではないでしょうか。まだまだ本数は少ないのですが、こうした効果を見込んで、今後もさらに増えていくのではないかと考えています。
さて、もう一つは海外での需要です。以前は海賊版の動画がネット上を席巻していましたが、最近は海外でも大きな時差をつけずにアニメの正規配給や配信に乗り出すケースが増えてきています。中国で配信中の「寄生獣 セイの格率」が、人気作品として4000万回再生され表彰を受けたニュースもありましたが、正規視聴の需要が確実に増えているということが裏付けられたといえるでしょう。
また、海外のアニメ情報サイトなどでは、アニメファンが選ぶ今年のベストアニメの記事に「「Fate/stay night UBW」や「ノーゲーム・ノーライフ」など、今年日本で放送された人気作品が並んでいます。そうした最新のアニメをキャッチアップするコアなファンが海外にも一定数いるということをうかがわせます。
そんな現状を受けてか海外進出のニュースも多く、レベルファイブの日野晃博社長は、2014年大人気だった「妖怪ウォッチ」の海外展開を発表しましたし、大手広告代理店のアサツーディケイも、アニメ・映像事業の著作権管理や海外販売を手がけるディーライツの株式を取得し、海外展開の強化を打ち出しています。
昨年の東京五輪誘致決定によって、2020年に向けて海外からの注目や旅行者も増えていく中で、今ある海外の需要を起点に日本のアニメの認知度や人気がさらに広がることも期待できるのではないでしょうか。
どちらの要素もアニメの今後を期待させるという意味で好材料だといえるでしょう。“過渡期”の2014年を経て、2015年以降の躍進を期待したいと思います。
さて、最後は、私、小新井の独断と偏見による「アニメオブザイヤー」を紹介させていただきたいと思います。
■作品部門「妖怪ウォッチ」
2014年を振り返ってこの作品を語らないわけにはいきません。メダルや「ようかい体操」のブーム、NHK紅白歌合戦への出場に加え、年末には「俺、実は妖怪と友達だったんだ」と“カミングアウト”してタイアップCMを打つ企業も続出。劇場版も初動記録で歴代邦画の1位を獲得できたのは全部妖怪の仕業、いや偉業といえるのでは?
■キャラクター部門「ダンディ」(スペース☆ダンディ)
「スペース☆ダンディは宇宙のダンディである」この一言で全てを表してしまえる簡潔明瞭さ! それでいてコメディーからミステリー、果てはラブロマンスまでどんな話でもハマってしまう柔軟さとそれでもブレないキャラの濃さはベストキャラであると同時に今年のベストオブ主人公でもありました。
■アニソン部門「アメフラシの歌~Beautiful Rain~」(それでも世界は美しい)
挿入歌にも関わらず「この作品と言えばこの曲!」というくらい物語とのシンクロ率が高く、印象に残った曲でした。疲れた時に聞いてニケに励まされているような気持ちになれたり、イベントで実際に雨が降ったという逸話を聞いてからは、雨になってほしい日に聞くジンクスソングにもなっています。
こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。アニメ好きのオタクなタレント「オタレント」として活動し、ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」やユーストリーム「あにみー」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)のアニメを見て、全番組の感想をブログに掲載する活動を約2年前から継続。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、社会学の観点からアニメについて考察、研究している。
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