大原櫻子:初アルバムは「私の10代の卒論です!」

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 女優として、シンガー・ソングライターとしても活躍する大原櫻子さんが初めてのアルバム「HAPPY」を25日にリリースした。タイトルにぴったりの春らしい元気よさと、19歳という年齢だからこそ歌える、10代特有の喜びや切なさが詰まったアルバムに仕上がっている。大原さんにアルバムについて聞いた。

ウナギノボリ

 −−どうして「HAPPY」というタイトルに?

 店舗に並んだとき、パッと目に飛び込んでくるようなタイトルにしたくて。ジャケット写真では、Pがさくらんぼになっているんですけど、デザイン的にも遊べるのもいいなと思って名付けました。とはいっても、単なるハッピーなアルバムではなくて、苦しいことや悲しいことがあってからのハッピーとか、裏側の意味も含めて、いろんなハッピーな気持ちを込めています!

 −−完成したときは、どんな気持ちでしたか。

 感無量でした。MUSH&Co.の「明日も」も入っているので、幼いなーと思ったし、真っ白だなーと感じたし。「ワンダフル・ワールド」や「Over The Rainbow」という曲は、今しか歌えないと思いました。全部聴き終えたときは、関わってくださったいろいろな方に感謝しました。それと応援してくださるファンの皆さんがいなかったら、アルバムを作るという話すら出なかったろうし。私一人では、絶対に作ることができなかった作品です。

 −−これまでのシングル曲も収録しながら、さまざまな曲調にチャレンジしたアルバムになりました。オープニングの「Over The Rainbow」はスケールが大きくて、始まりの予感にワクワクするような曲ですね。

 アルバムの世界へグッと引き込みたいと思って、等身大で歌わせていただきました。実はこの曲にはエピソードがあって。プロデューサーの亀田誠治さんのラジオ番組にゲスト出演させていただいたとき、「ゲストへ贈るこの1曲」みたいなコーナーがあって。私には、オードリー・ヘップバーンさんの「ムーン・リバー」をいただいたんです。亀田さんいわく、映画「カノジョは嘘を愛しすぎてる」のオーディションで初めて私を見たとき、オードリー・ヘップバーンと重なったと言ってくださって。「Over The Rainbow」の歌詞には、映画「ティファニーで朝食を」の中で、ヘップバーンさんが「ムーン・リバー」を歌っているシーンを彷彿(ほうふつ)とさせるところもあります。ヘップバーンさんに例えていただけるなんて、そんな恐れ多いこと!と思うんですけど、私もヘップバーンさんは大好きなので、めちゃめちゃうれしかったです!

 −−「のり巻きおにぎり」という曲は、アコギと打ち込みの温かい雰囲気の楽曲で、歌詞はユーモアがあって可愛らしいですね。大原家のおにぎりの歌ですか。

 はい! まん丸くってお米の部分が見えなくなるくらいのりで巻いていて。これも亀田さんのラジオにゲストで出たときのことなんですけど、亀田さんに似合う食べ物はなんだろう?という話になって、のりでぐるぐる巻きにしたおにぎりが似合いそうだって話していたんです。それで、差し入れで作って持っていったら、印象に残ったらしくて。何度か持っていったんですけど、レコーディングのときに持っていったものは、ソフトボールよりも二回りくらい大きかったかな(笑い)。

 −−大原さんにとっては、お母さんの愛情を感じる味ですよね。

 そうですね。部活のときとかに食べた、思い出の味です。私が好きな具は梅干しで、チーズとおかかをしょうゆでからめた、チーズおかかも好きかな。今でも、母が手作りのお弁当を作ってくれて、現場で食べるときがあります。現場で出されるお弁当ばかりだと、どうしても栄養が偏ってしまうので。母の愛情がたっぷり詰まったお弁当のように、この曲もファンの皆さんに愛してもらえたらうれしいなって思いますね。

 −−アップテンポのロックナンバー「READY GO!」も収録しています。

 これは、レコーディングが本当に楽しかったです。早くライブでやりたい曲の一つですね。今までは一緒に歌おうと、並んで歩いている感じの曲が多かったんですが、行くよ!って、引っ張っていく感じは初めてだったので、どう歌おうか悩みましたが、思い切ってノリよく歌いました。この曲では、エレキギターを弾きたいです!

 −−かと思えば、「ただ君のことが好きです」は、とても切なくてキュンときます。

 こういうマイナー調の曲は初めてだったので、歌い方に悩みました。大塚愛さんやaikoさんの曲をいろいろ聴いて、歌い方を研究して、試していく中で、自分の歌い方を見つけていった感じです。

 私の中では、静かにしている女の子が、心の中で「大好きなのーーー!!!」って叫んでいるイメージ。静かに始まり、サビでは気持ちがあふれ出して止まらないみたいな感じ。女の子というより、女性に共感してもらえる曲なんじゃないかなって思います。なにげなく聴いたときにジンワリと胸にくるのが、私の楽曲の中では新しいと思います。

 −−そして、ラストの「ワンダフル・ワールド」は、ハッピーの裏側の気持ちを含めた、とても深くてリアルな心情を歌っています。

 私も含めて今の10代の人は、世の中を斜めにとらえている人が多いなと、自分でも感じることがあって、そういう人には特に共感してもらえると思います。たとえば「自分のことが分からない」とか。私も、櫻子色ってどんな色?と聞かれても、どんな色なのか具体的には答えられなくて。私の中ではちゃんと自分というものがあるつもりですが、世の中からの見られ方と、自分らしさや自分が発信したいと思うこととのギャップに、葛藤するときがあります。でもそういう葛藤は、私に限らず10代の子みんなが持っている気持ちだと思います。そういう悩みや葛藤があるのが、私たち10代なんだということ。少しずついろいろなことを分かっていきながら、決して大人になったつもりにはならずに、しっかりと前を向いて未来を見ている感じです。

 −−自分にとっての理想の「ワンダフル・ワールド」とは?

 いろんなことがあっても、どんなことがあっても、歌とかお芝居とかダンスとか、自分が発信する表現ではうそがつけない。逆に、そこでしか本音が表せないのかもしれないです。そう考えると、やっぱり私にとってのワンダフル・ワールドは“ステージ”です。うそなく自分の気持ちを表現できる場所。どんなに矛盾を感じたり、我慢しなくちゃいけないことがあっても、ステージでなら素直な気持ちを爆発させることができる。私自身、女優や歌手に憧れてこのお仕事を始めて、今自分のいる場所がワンダフル・ワールドになりました。聴いてくれる皆さんにとっての、ワンダフル・ワールドを見つけてほしいです。それにはやっぱり、何か夢を持つことが必要なんだと思います。

 −−初アルバムを、名刺代わりの一枚と表現する人もいますが、このアルバムを何かに例えるとしたら?

 おいしさが、ギュギュッと詰まったさくらんぼ。デビューして1年ちょっとしかたっていませんが、ここまでの大原櫻子がすべて詰まった作品です。もしくは、卒業論文をまとめたみたいな感じかな。またここからが、新たなスタートでもあるし。10代の卒論です! 20歳まであと1年あるので、少し早いけど(笑い)。

 −−4月20日からは、全国ツアーがスタート。こういう春の桜の季節は、名前が櫻子さんだけに、自分の季節が来た!っていう感じになりますか?

 なります!(笑い) 桜の花が大好きだし、桜の模様がついたグッズを見つけると、思わず買いたくなります。私が今使っているギターも、オリジナルで作っていただいたもので、フレットに桜の花があしらってあるんです。アルバムのジャケットにもチェリーをあしらっていて、桜づくしです! ただ、これは「櫻子なのに?」って言われそうなので、大きな声では言えないですけど、桜もちはちょっと苦手です(苦笑)。

 <プロフィル>

 映画「カノジョは嘘を愛しすぎてる」のヒロイン役で女優デビュー。同時に劇中バンドMUSH&Co.のボーカルとしてシングル「明日も」で歌手デビュー。女優として、ドラマ「水球ヤンキース」、映画「舞妓はレディ」など多くの作品に出演。アーティストとしては、シングル「サンキュー。」や、初めて作詞にチャレンジした「瞳」などをリリース。昨年末の「第56回日本レコード大賞」で新人賞を受賞した。4月20日に福岡・Drum Be−1を皮切りに、5月7日の東京・TSUTAYA O-EASTなど4カ所のツアー「大原櫻子 1st TOUR 2015  SPRING~CHERRYYYY BLOSSOOOOM!!!~」を開催。

 (インタビュー・文・撮影/榑林史章)

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