注目映画紹介:「ゲキ×シネ『蒼の乱』」天海祐希、松山ケンイチの舞台を映像化 戦乱ドラマに感涙

「ゲキ×シネ『蒼の乱』」のワンシーン (C)2015ゲキ×シネ「蒼の乱」/ヴィレッヂ・劇団☆新感線
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「ゲキ×シネ『蒼の乱』」のワンシーン (C)2015ゲキ×シネ「蒼の乱」/ヴィレッヂ・劇団☆新感線

 2015年に35周年を迎える「劇団☆新感線」の人気舞台を映画館で上映する「ゲキ×シネ」シリーズの「蒼の乱」(作・中島かずきさん、演出・いのうえひでのりさん)が9日に公開される。同劇団への出演が3度目となる天海祐希さんが主演を務め、共演に松山ケンイチさん、早乙女太一さんらを迎えて2014年に上演された舞台を映像化。平安時代を舞台に、国を追われ孤独ながらも優しく強い女・蒼真(天海さん)が、不器用ながらも真っすぐに生きる男・将門小次郎(松山さん)と出会い、戦いへと身を投じていく姿を描いている。天海さんの歌や豪快なアクション、松山さんの純粋ながらも秘めた情熱を体現した演技は迫力十分だ。

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 左大臣の屋敷で国の行く末を占っていた蒼真(天海さん)を長とする渡来衆の一行は、卦(け)で動乱を予測したのを理由に武士たちに襲撃される。蒼真と親友の桔梗(高田聖子さん)は、京を訪れていた将門小次郎(松山さん)に救出されるが追い詰められてしまう。そこに帳の夜叉丸(早乙女さん)が現れ、追っ手を蹴散らし、引き合わせたい人がいると3人を西海へと連れて行き……というストーリー。

 ゲキ×シネシリーズの魅力は、なんといっても舞台の臨場感と映画ならではの表現が化学反応を起こした独特の味わいと見応えにある。今作は上演当時、毎回拍手が鳴り止まないほど激賞されたという。壮大なスケールの戦乱ドラマでありながら、蒼真や小次郎といった主要人物のみならず、登場するキャラクターのほぼすべてに背景と思想が見え隠れし、物語に説得力を与えている。とにかく芸達者な天海さんの歌や演技に殺陣が圧倒的で、凛とした中にも垣間見せる女性らしさが艶やかで色気を感じさせる。小次郎を演じる松山さんも情けない姿を見せつつも男らしい生きざまを体現。笑いあり涙あり、そしてアクションもあり、二転三転する物語に華を添えている。クライマックスは色彩、空間、心理的に圧倒され、感動に包まれて、しばし立ち上がるのを忘れてしまうほどだ。上映時間が少し長いけれど、舞台と映画の双方の良さが詰め込まれている。新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)

 <プロフィル>

 えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。

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