ROLLY:70年代の日本のロックに敬意 ギター全開で今の音楽嘆く「おじさん方に聴いてほしい」

「ROLLY’S ROCK CIRCUS」を発売しインタビューに応じたROLLYさん
1 / 5
「ROLLY’S ROCK CIRCUS」を発売しインタビューに応じたROLLYさん

 今年デビュー25周年を迎えたミュージシャンのROLLYさんが、1970年代の日本のロックの名曲をカバーしたトリビュートアルバム「ROLLY’S ROCK CIRCUS~70年代の日本のロックがROLLYに与えた偉大なる影響とその影と光~」(キングレコード)を発売した。同アルバムに収録された「タイムマシンにおねがい」のミュージックビデオ(MV)をYouTubeで公開し、9月4~6日に同アルバムのツアーを東京・大阪、名古屋で開催する。「ブルースフィーリングたっぷりのギターフレーズが少なくなってきていることを嘆くおじさん方に聴いてほしい」と語るROLLYさんに、アルバムや25周年について話を聞いた。

ウナギノボリ

 ◇オリジナルへの敬意をギターフレーズで表現

 アルバムはROLLYさんが「はっぴいえんど」「フラワー・トラベリン・バンド」「外道」「四人囃子」「サディスティック・ミカ・バンド」「フライド・エッグ」など10バンドの計10曲をカバーして収録。また自身のバンド「すかんち」のヒット曲「恋のマジックポーション」も再録し、収録した。

 インタビュー冒頭、自ら「今日車で聴いたけど……よかったです!」と言う会心の出来。「なにしろ全部好きな曲」と満面の笑みで、中でもこだわりの一つがギターフレーズだ。

 「僕はギタリストで、(カバーした)全部の曲に個性的なギタープレーヤーがいて、すべてのギターフレーズがすごく魅力的。いつも先輩方のギターに影響されてきた」といい、「(今回のアルバムは)ギターアルバムではないんだけど、すごく魅力的なギターフレーズがたくさん詰まっていると思う。今はギタリストがブルースフィーリングたっぷりにギターを弾くことが少なくなってきている。それを嘆くおじさん方に聴いてほしい」と自信を見せる。

 さらに「あえて今回は、オリジナルのギターフレーズにとても忠実に(演奏)して、そこにオリジナルへの尊敬の意を表しました」という。「これまで原曲と同じように弾くことは、絶対にやらなかった。今までは『この曲でこんなふうに弾いてみました!』っていう感じだった」と振り返り、「初めて(原曲と)同じように弾いたけれど、同じ中にも自分の個性が出せるように頑張ってみました」と語る。

 ROLLYさんはカバーした曲の一つ「サムデイ」のオリジナルと自身のギターフレーズを、自身のパソコンから交互に流し、自らギターを弾いて解説。「(両者は)ほとんど同じなんだけど、微妙に私のプレーの方が粘って(英ロックバンド『クイーン』のギタリスト)ブライアン・メイ調なんだよね。聴き比べないと分からないぐらいの味付け。うま味調味料をかけたか、かけないかの違いぐらい。同じ歌も歌う人によって違うように、同じフレーズを弾きながらも(ギターの)“歌い方”が違うんです」と熱っぽく語る。

 ◇アルバム制作で自宅にスタジオ 曲との出合いをつづったセルフライナーも

 曲選びは昨年末に行い、約20曲を選曲。それを10曲に減らすまでには、紆余(うよ)曲折もあったというが「今、改めてこれでよかったと思う」と話す。

 「今でも、しょっちゅう聴いている曲。モップス以外は、実際にご本人と演奏したことがある曲ばかり。ここ数年で演奏しているから、僕にとっては懐かしい曲ではない」といい、「グループごとに全く世界観が違う。詩の世界観が全部違うよね」とその魅力を語った。

 ほとんどの録音は、自宅に作ったというスタジオ「ムーピールーム」で行った。今回のアルバム制作が具体的になった際、自宅の一部をスタジオ化することを考えたといい、「いつもレコーディングスタジオで終わりの時間を気にするのがすごく嫌だった。だったら自分の家で全部やろうと思って。そしたらスタジオ代もいらないしね。それで急きょ、機材を導入しました」と明かす。

 ROLLYさんの個性的でパワフルな歌声やコーラスの楽しさも魅力の一つだ。今作は、仮のドラムとピアノを聞きながら、まずリードボーカルとコーラスを録音し、その後、ギターとベース、ドラムを録音。歌を先に録音したのは、自身がロック以外にシャンソンなどを歌っていることが影響している。「歌に力があれば、ピアノ一本でもギター一本でも(曲が)成立することが分かっていたから」と話した。

 CDには、ROLLYさんの約4000字に及ぶセルフライナーも封入されている。カバーした曲やバンドと、思春期にどう出合い、衝撃を受けたかが、ROLLYさん独自の表現でつづられている。そのこだわりを「(カバーした曲は)誰でも知っているヒット曲ではないんです。この選曲に私のカラーがある。だから、自分がこういう時に、こういうふうに聴いて、こうなんだ(今回の曲が出来上がった)ということを、なるべくご理解いただけたらと思って」と話した。

 ◇デビュー25周年も「まだまだ勉強あるのみ」

 1990年にロックバンド「すかんち」でデビューし、今年でデビュー25周年。「25周年記念でこんなアルバムを出させてもらって……ありがたい」と感慨深げな表情を見せ、「これもひとえにお客様の応援のお陰。それに、いつでも期待を裏切らないようにと心がけて、真面目に頑張ってきたからだと思いたいね」と自身をねぎらう。

 昨年はコンサートや舞台など124ステージに出演し、現在もステージのほか、テレビ出演などもする多忙な日々。仕事への姿勢を聞くと「やってくれと言われれば、やってみます。やるからは真面目に。人生は大喜利だと思っているし、25年前に僕を見つけて“拾って”くれた会社への恩もある」と真摯(しんし)に語り、「自分の都合で休むことはないね」ときっぱり。

 ステージはシャンソン、芝居、読み聞かせなど多岐にわたり、「楽譜が読めないから、(出演するたびに)すごく覚えなきゃいけない。それなのに週に2回ぐらいステージがあるから、頭の切り換えが毎日大変。毎週、綱渡り」と弱音もはくが、「(英国のギタリストの)エリック・クラプトンが言った『ステージに上がったら世界一のギタリストだと思え。ただしステージから降りたら、世界一へたなやつだと思うんだ』。その気持ちだね。一つ一つを真面目にやって、そこで自分が輝いていれば、必ずそれを見ている人がいると思ってあがいてきた。そうすると必ず次につながる。ステージから降りたら、まだまだ勉強あるのみ」とさらに前を見据えた。

<プロフィル>

 ろーりー。9月6日生まれ。大阪府高槻市出身。1990年に「すかんち」でデビュー。96年に解散し、ソロ活動を開始。現在は、音楽活動をはじめ、舞台、映画、ドラマなどにも出演している。

 *……「ROLLY’S ROCK CIRCUS」の発売を記念したツアーは、9月4日に下北沢GARDEN(東京都世田谷区)、5日にMusic Club JANUS(大阪市中央区)、6日にTOKUZO(名古屋市千種区)で開催。バンドメンバーは、永井ルイさん、松本淳さんと東京・大阪のみ三国義貴さんの予定。またゲストで東京に厚見玲衣さんが出演予定で、大阪に加納秀人さん、名古屋にバンド「外道」が出演する予定。

写真を見る全 5 枚

芸能 最新記事