注目映画紹介:「家族ごっこ」 斎藤工らがずれた家族を演じる5編のオムニバス

 映画「家族ごっこ」のワンシーン (C)「家族ごっこ」製作委員会
1 / 5
映画「家族ごっこ」のワンシーン (C)「家族ごっこ」製作委員会

 国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア2015」でプレミア上映された映画「家族ごっこ」(内田英治監督、木下半太監督)が8月1日に公開される。「悪夢のエレベーター」や「サンブンノイチ」などで知られ、今回が映画監督デビューとなる木下さんの小説「鈴木ごっこ」はじめ、どこかずれている風変わりな5組の家族を描くオムニバス作品。「グレイトフルデッド」(2014年)などの内田監督と木下さんがメガホンをとり、俳優の斎藤工さんや柄本時生さん、でんでんさん、女優の鶴田真由さん、小林豊さんら若手からベテランまで実力派が顔をそろえた。

ウナギノボリ

 映画は、他人である4人の男女が鈴木家を演じさせられる「鈴木ごっこ」、通夜の席で死んだ父の指に謎の結婚指輪があり……という「佐藤家の通夜」、自分を腹上死させた女に遺産を渡すという遺言を残し死亡した小説家の山崎家に6人の愛人が遺産を狙って集まってくる「父の愛人たち」、田中家の美人4姉妹の中で誰が一番貧乳か競う「貧乳クラブ」、貧乏から抜け出すため高橋家が殺人ビデオの撮影を思いつく「高橋マニア」という五つのエピソードで構成されている。

 家族をテーマにした映画は数あれど、ここまでおかしな設定の家族はあっただろうか。まさに奇怪という形容詞がよく似合う。特にまったくの赤の他人が、ある日突然集められ“鈴木家”を演じなければならないという「鈴木ごっこ」は非常に興味深い。なぜ他人同士が疑似家族にならなければいけないのかという謎と、その先に待ち受ける“真実”には驚かされつつも、ゾクゾク感が味わえる。貧困を扱いつつもサスペンスタッチで笑顔の裏に潜む狂気を描く「高橋マニア」も、ブラックな笑いが満ちあふれ、見る人を楽しませてくれる。とにかくシュールで残酷、サイケデリックでエロスもあるのに、なぜかハートフルな気持ちにさせられる不思議な五つの物語だ。K’s cinema(東京都新宿区)ほか全国で順次公開。(遠藤政樹/フリーライター)

 <プロフィル>

 えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。

写真を見る全 5 枚

ブック 最新記事