注目映画紹介:「『たまゆら~卒業写真〜』第2部 響-ひびき-」 高3夏の進路に対する葛藤を描写

映画「『たまゆら~卒業写真~』第2部 響-ひびき-」のワンシーン (C)2015 佐藤順一・TYA /たまゆら~卒業写真~製作委員会
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映画「『たまゆら~卒業写真~』第2部 響-ひびき-」のワンシーン (C)2015 佐藤順一・TYA /たまゆら~卒業写真~製作委員会

 “安芸の小京都”と呼ばれる広島県竹原市を舞台にしたアニメ「たまゆら」シリーズの劇場版アニメ第2弾「『たまゆら~卒業写真~』第2部 響-ひびき-」(佐藤順一監督)が29日に公開される。「たまゆら」は、写真が好きな女子高生・沢渡楓(さわたり・ふう)と友人との日常を描いたアニメで、2010年にOVAが発売されたほか、テレビアニメが2度にわたり放送された。劇場版は楓たちの高校卒業までの1年間を4部作で描くシリーズの完結編。第2部では、夏を迎えて進路を決める生徒が増えてくる中、仲よし4人組が進路について思い悩む姿を中心に物語が展開していく。

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 少し内気で写真が好きな女子高生・沢渡楓(声・竹達彩奈さん)は、塙かおる(声・阿澄佳奈さん)、岡崎のりえ(声・井口裕香さん)、桜田麻音(声・儀武ゆう子さん)の仲よし4人組は3年生へと進級。校内でも進路についての話題が増えてきた初夏に起こった出来事をきっかけに、のりえが大好きなスイーツを封印し、さらに進路も白紙にしてしまう。一方、「お好み焼きほばろ」の店主から、4人にあるイベントの内容を考えてほしいと依頼が舞い込む。かおるは依頼を快諾したものの、進路に迷っていることから受験勉強とどっちつかずの状態になってしまい……というストーリー。

 シリーズ第2弾では4人組のほか、高3のメンバーが進路に思い悩む姿を中心に展開。いいようのないもやもや感を抱えていた青春時代を思い起こさせてくれる。映画で描かれているような10代後半の時期は、とかくささいなことでも決断が鈍ったり、ひょんなことから目標が見つかったりするものだが、今作ではその葛藤が真摯(しんし)に描かれていて好印象だ。大学に進学したあとに目標を模索していくという選択肢も現実なら考えられるのだが、そこは必要以上にリアリティーを追求しないのが楽しむためのコツといえる。4人それぞれの進路探しは、それぞれの“らしさ”が反映され、シリーズとして積み重ねてきた時間も含めて、それぞれに思い入れをもって見ることができる。卒業を迎えるまで残り2作だが、このあとの作品でもすてきな笑顔と涙に期待したい。新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で2週間限定で順次公開。(遠藤政樹/フリーライター)

 <プロフィル>

 えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。
 

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