話題のアニメの魅力をクリエーターに聞く「アニメ質問状」。「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(あの花)のスタッフが手がけたことで話題の劇場版アニメ「心が叫びたがってるんだ。」(略称・ここさけ、長井龍雪監督)です。脚本の岡田麿里さんに作品の魅力を語ってもらいました。
ウナギノボリ
10年前の朝ドラ「花子とアン」 当時の吉高由里子インタビュー
それぞれの理由で「気持ちを言葉にすることができない」4人の高校生が、地域の人々を招く学内の催しで「気持ちを歌にして届ける」ミュージカルをすることになる……というお話です。
今回は、プロデューサーから「青春ものであること」というお題があり、なおかつ長井監督の意向で「ハッピーエンドにしたい」というのが最初からありました。その二つを重ねて、見た後にちょっと気分がよくなるというか、心の風通しがよくなるような作品にしたいなと思って作業していました。
「あの花」を好きになってくださった皆さんに喜んでいただきたいとは、いつも思っていますね。ただ、不思議なんですけど……物語や内容面だけに関していうと、作業中は「あの花」をまったく意識はしていませんでした。これは、監督も(キャラクターデザイン、総作画監督の)田中(将賀)さんも同じだと思います。なので「『あの花』スタッフが贈る、泣ける青春もの」みたいな宣伝文句を目にすると、「もっと意識した方がよかったのかな、どうしよう」と怖くなるというか、嫌な動悸(どうき)がします(笑い)。
順は、今回の作品を「ミュージカルをつくる話」にしようと考えたことで生まれたキャラクターですね。本来は感情を出せないけど、歌だから感情を出せる子が中心にいたら面白いんじゃないかと思いまして。ほかの3人も、順ほどいきすぎてはいなくても「心に言葉を閉じこめている」子になるといいなと。大樹や菜月が「しゃべることができない」理由は、わりと分かりやすいというかストレートなのですが、拓実は順と対比させたかったので、思ったことが言えないというよりも、気持ちを表に出さないことが当たり前というキャラにしてみました。
うれしかったのは、初めてダビングで音のついた映像を見た瞬間ですね。完全劇場オリジナルで、約2時間の作品というのは初めてだったので「あがりの状態」の想定がつかなかったんです。シーン単位でなら想像できるんですけど、全体的な緩急などがしっかり読みきれなかったので、正直にいって不安で。だけど、まだ絵はほとんど入っていないけれど流れがわかる形になって……感無量でした。それと同時に、「音楽の力、声の力」をとても強く感じたんです。音がついていない状態では想像することのできなかった快感があって、スタッフみんなが興奮していました。
大変だったことはいろいろあったのですが、作品が完成した喜びにやられてしまい、すでに忘れかけています。あえて一つ言うなら、歌詞の譜割りチェックをするために(音楽担当の)ミトさんの前で歌ったことでしょうか。あの日は朝から緊張して、スタジオに行くまでの電車の中で何度もため息をつきました(笑い)。
スタッフ全員で、見た後に「ちょっと気持ちよくなれる」作品を目指してきました。大きな仕掛けはありませんが、とてもみずみずしいフィルムになっていると思います。「心が叫びたがってるんだ。」を、なにとぞよろしくお願いいたします!
「心が叫びたがってるんだ。」脚本担当 岡田麿里
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