Netflix:ドラマ「アンダーウェア」関口プロデューサーに聞く 「日本のドラマは海外に通用する」

Netflixのドラマ「アンダーウェア」を制作した関口大輔プロデューサー
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Netflixのドラマ「アンダーウェア」を制作した関口大輔プロデューサー

 ドラマやドキュメンタリー、コメディー、独自コンテンツを月々650円からの定額で提供し、世界50カ国以上、会員数が約6500万人を突破している「Netflix(ネットフリックス)」が、9月から日本でサービスを開始した。開始と同時に日本オリジナルドラマ第1弾として、フジテレビが制作する桐谷美玲さん主演の「アンダーウェア」がスタートした。ファッションに興味のない田舎娘が高級ランジェリーメーカーに就職し、仕事を通して美を追い求め、夢をつかむ姿を描いた「アンダーウェア」について、関口大輔プロデューサーに制作の裏話などを聞いた。

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 ◇「ランジェリーあるある」を盛り込んだ

 「アンダーウェア」は、女性用下着メーカーの「トリンプ」の全面協力で制作。物語は、大学で繊維の研究をする田舎娘の繭子(桐谷さん)が、高級下着メーカーに就職し、仕事をしていく中で、さまざまな価値観に触れ、成長していくという内容だ。関口プロデューサーは「女性のランジェリーがテーマで、10~60代の女性層がメインターゲットになっています。さらに(会社内での)対立や、主人公たちがいい商品を作るためにどうすればいいのかと試行錯誤する姿は、男性にも共感してもらえると思います」と紹介する。

 ランンジェリーについて、かなりリサーチや取材を重ねたといい、「20代の女性と60代の女性が選ぶ下着のデザインが違ったり、レースの素材の違いだったり、ランジェリーのことを調べてるなとか『知らなかった』というような情報も入っていると思います」と“ランジェリーあるある”を盛り込んでいると話す。

 ◇地上波ドラマと配信ドラマは制作方法が違う

 「地上波と配信サービスのドラマ制作は、演出、撮影方法が違います」という関口プロデューサー。「地上波は、(視聴者に)なるべく分かりやすいように作ります。例えば、1話完結という形だったり、(縦軸として)何か物語の展開が起きたら、キャラクターがせりふで説明をしたり、悲しいシーンでは悲しい音楽を入れたりします」といい、「ネットフリックスのドラマを作るにあたって、お金を払うことで作品を真剣に見ようとしてくれるモチベーションの高さを意識して『アンダーウェア』は、あえてそういう作り方を排除しています」と明かす。

 関口プロデューサーの狙いはこうだ。「地上波のドラマは、物語の途中からでも楽しんでもらうことを意識します。ですが、ネットフリックスといった動画配信サービスの場合、必ず1話から見てくれます」といい、「だから『アンダーウェア』は1~3話を一つのパッケージとして考え、田舎から上京してきた女の子の物語。4話以降は、大きな会社で働く女性、組織の中での裏切りや対立といった人間関係という具合になっています」と話す。

 ◇キャスティングはビジュアル重視

 ドラマには酒井若菜さん、マイコさん、河北麻友子さん、石田ニコルさんらも出演。キャスティングについては「なるべく顔立ちが違う人を選びました。ビジュアルはキーだと思います」と話す。そこには、世界中の人が楽しむ「ネットフリックス」という特性もあるという。まず主演の桐谷さんについては「彼女が持っている雰囲気が決め手でした。ニュースキャスターとして活躍している姿、美人なんだけどコメディーもでき、芝居がしっかりしていると思っていたので、オファーをさせていただいたら快諾してくれました」と話す。

 また、繭子が勤める会社の社長・マユミは女優の大地真央さんが演じている。関口プロデューサーは「女性をターゲットにする上で親子漫才みたいなテイストを入れたかった」と明かし、「上司と部下の対立関係から、だんだん仲よくなって親子のようになるキャラクターを演じられる女性として、芝居がうまくインパクトが強い方がいいと思い、大地さんにオファーをさせていただきました。理想のキャスティングができました」と笑顔で振り返る。

 ◇衣装やヘアメークなど細部までこだわる

 さらに、海外ドラマが大好きでよく見ているという関口プロデューサーは、日本の俳優や女優を知らない海外の視聴者のために、キャラクターを分かりやすくするため「登場人物が持っている個性や精神状態に合わせて、衣装やヘアメークを変えたりしています。そこはこだわって衣装、美術チームと話し合って作っています」という。

 そして、海外の人たちが見て楽しめるように「舞台は銀座、主人公の家は浅草、すし屋やおでん屋で食事するというように、そういった要素もビジュアルで入れています」と海外の視聴者を意識して、日本の味を取り入れたドラマ作りをしている。

 さらに、「海外の方に向けて、現代の日本の女性像を描きたかったんです」ともいい、「海外の方からしたら日本の女性はおとなしいイメージをまだ持たれているように感じます。物事を考え、キャリアウーマンとして働く姿や、心があって、人への思いやりを持ち、人と向き合う姿など日本の女性のよさを伝えたいんです。海外の人たちが持っているイメージとのギャップが埋められるようになればと思って作っています」と目を輝かせる。
 
 ◇日本のドラマは海外に通用するか

 「日本のドラマは、海外に通用するものを作れるのか」と質問を投げかけると、関口プロデューサーは「作っていけるともいえるし、作っていけないともいえると思います」といい、「切り口がしっかりしたパッケージであれば海外にも通用すると思います。そこには、役者さんたちの個性、明確な制作意図、商品のブランディングだと思い、そこは気を使っています」と話す。

 さらに、関口プロデューサーは「例えば、動画配信サービスの場合、(時間があれば)1話だけ見て寝るということではなく2話、3話と一気に見て寝るみたいな形もあります」と視聴者の特性を挙げて、「そういう見方が主流になってくると、(視聴者が)真剣に見る分、僕らも緻密に(ドラマを)作っていくでしょうね」と話す。

 そして「海外ドラマは、序盤に登場したキャラクターが終盤で出てきたりとか、そういう点でよく作っていると思います」といい、「『アンダーウェア』でも1話で出てきたキャラクターが、繭子と同じ会社に入社したりとか、お店に置いてある銅像に秘密が隠されていたりとか伏線をたくさん仕込んでいます。ある種、自分にとっても初めての挑戦なのでいろいろとトライしています。視聴者からの反響を楽しみにして待っています」と語る。

 また、これまで映画「ハッピーフライト」、連続ドラマ「TOKYOエアポート~東京空港管制保安部~」「ミス・パイロット」の制作に携わってきた関口プロデューサーは「もし、またネットフリックスでドラマを作れることがあったら、航空ドラマも作りたいんですよね。それに僕、鉄道も大好きで」といい「映画や動画配信サービスといった“クローズ”の環境だからこそ、そういったコア層が楽しめる作品もやってみたい」と満面の笑みで語った。

◇ライバル「テラハ」 プロデューサーと切磋琢磨

 ネットフリックスでは、「アンダーウェア」のほかに、10~20代の男女の共同生活を追うテレビ番組「テラスハウス」(同局制作)も配信している。「テラスハウス」の太田大プロデューサーとは席が向かい合わせだという関口プロデューサーは、「『調子どう?』とか『(配信日に)間に合う?』とかしょっちゅう言い合っています」と切磋琢磨(せっさたくま)していることを明かし「(勝負は)これからでしょうね。せっかく開けた扉を閉めたくはないです。これから、新作のオリジナルコンテンツを作っていく方たちにバトンを渡そうと頑張っています」と目を輝かせた。

 <プロフィル>

 1968年生まれ。1994年にフジテレビ入社。連続ドラマ「ラッキーセブン」「リッチマン、プアウーマン」や、映画「スウィングガールズ」「それでもボクはやってない」「SP THE MOTION PICTURE」シリーズなどのプロデューサーを務めた。

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