2009年に34歳で亡くなったSF作家の伊藤計劃(けいかく)さんの小説が原作の劇場版アニメ「ハーモニー」(なかむらたかし監督、マイケル・アリアス監督)が13日、公開される。原作は伊藤さんの遺作で、“ディストピア”な管理社会を舞台に、女性キャラクターの繊細な心の動きを丁寧に描いている。
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「ハーモニー」は、高度な医療環境が構築された管理社会を舞台に、世界の戦場を渡り歩き平和維持活動を行う監察官・霧慧(きりえ)トァンが、突然起こった大量殺人事件の捜査を進める中で、世界の真実に近づいていく……というストーリー。伊藤さんの遺作で、SF小説を対象とした米文学賞「フィリップ・K・ディック賞」を受賞したことも話題になった。伊藤さんの作品をアニメ化するプロジェクト「Project Itoh」の一環として製作された。
物語の舞台となるのは、オルダス・ハクスリーの「すばらしい新世界」やジョージ・オーウェルの「1984年」のような小説でも描かれたディストピアな世界だ。高度な医療環境が構築された社会は一見、ユートピアなようだが、全体主義的でもあり、窮屈で息苦しくもある。「AKIRA」の作画監督などとしても知られるなかむら監督と「鉄コン筋クリート」の監督を務めた米国出身のアリアス監督という2人の“名手”が、無機質で美しく、はかなげでもある世界観を表現している。
同作には、主人公・トァンとカリスマ的魅力の美少女・御冷(みひえ)ミァハ、トァンとミァハの理解者である零下堂(れいかどう)キアンという魅力的な3人の女性キャラクターが登場する。アニメでは、3人の女性の関係性に焦点を当てており、特にトァンとミァハの恋愛にも似た関係性がテーマになっているようにも感じた。ミァハを失ったことで、その影を追い続けるトァンの複雑な感情の動きが丁寧に描かれている。
「Project Itoh」は「屍者の帝国」が10月に公開されたが、「虐殺器官」は公開が延期された。「屍者の帝国」「ハーモニー」が美しい映像でアニメ化されていることもあり、「虐殺器官」の今後の展開も気になるところだ。
沢城みゆきさんがトァン、上田麗奈さんがミァハ、洲崎綾さんがキアンを演じるほか、榊原良子さん、大塚明夫さん、三木眞一郎さんらが声優として出演。「鉄コン筋クリート」などのSTUDIO4℃がアニメを製作している。13日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(小西鉄兵/毎日新聞デジタル)
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