上野樹里:BIGBANGのチェ・スンヒョンとドラマ「シークレット・メッセージ」語る「プレーンな状態で演じた」

dTVオリジナルドラマ「シークレット・メッセージ」に出演した上野樹里さん(右)とT.O.Pことチェ・スンヒョンさ
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dTVオリジナルドラマ「シークレット・メッセージ」に出演した上野樹里さん(右)とT.O.Pことチェ・スンヒョンさ

 女優の上野樹里さんと、韓国の人気グループ「BIGBANG(ビッグバン)」のメンバーでもあるT.O.Pことチェ・スンヒョンさんがダブル主演するオリジナルドラマ「シークレット・メッセージ」が、動画配信サービス「dTV」で配信中だ。ドラマは、日本の「アミューズ」と韓国の「CJ E&M」がグローバルプロジェクトとして制作し、LINEでのやり取りを通したラブストーリーが描かれる。スランプ状態にある舞台女優のハルカを演じた上野さんと、映画監督を目指す青年のウヒョンを演じたチェさんに、互いの印象や撮影について聞いた。

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 ◇互いに待ち望んだ共演

 今作への出演に際し、「今の若い人たちはネットで気軽にニュースを見たりしているし、韓国ではウェブドラマが進んでいたりして、ちょっと新しい作品作りに興味があった」と話す上野さんは、「韓国には仕事でよく呼んでいただき行っていたので、韓国のファンの人たちのために、いつか韓国制作の作品に出てみたいという思いもありました」と明かす。一方、チェさんは「ウェブドラマは、一つのコンテンツを1回あたり10~15分でストーリーが見られるということは、最初に聞いたときは不思議だなと思った」とウェブドラマの印象を語り、「韓国ではウェブドラマの市場規模が少しずつ大きくなる中で、そのスタートとなる作品に自分も参加できたら面白いだろうなと」と興味を持ったという。

 さらにチェさんは「毎年のように日本でコンサートツアーなどを回ったりしていますが、今まで日本の作品に出たり、日本の俳優さんと共演するという機会がなく、一度はそういうことをしたいと思っていた」と続け、「ちょうどそんなときに、今まで出演された作品もすごく好きで日本で一番好きな(女優である)上野樹里さんと共演できるということになって、とてもうれしかった」と喜ぶ。聞いていた上野さんも「(チェさんが)スターなので(自分で)釣り合うのかと思った」とちゃめっ気たっぷりにいい、「小さな世界で自分の心の傷を克服していく2人の話というのをT.O.Pさんとやるというのがまたレアで新しいと思った」と共演を心待ちにしていたことを明かす。

 ◇役作りはキャラクターの内面を重視

 上野さんはハルカという女性を演じるにあたり、「仕事で私が韓国に行くのではなく、本当にハルカが丸裸で(元恋人の)ハルの思い出だけをスーツケースに詰めて身一つで行ったという感じ」と語り、「どんな覚悟なんだろうとか、撮影の毎日を私がハルカとしてリアルにその瞬間、瞬間をどう感じ、みんなとどんな関係を築き、どうやって成長していくのかという部分を一緒に役を作っていった感じもある」と役作りについて説明する。

 さらに、「真っ白というかプレーンな状態で(現場に)行って、踊ってみてとか、泣いてみてとか、大笑いしてみてとか、そういうのを全部、快く身を委ねてピュアな気持ちを最後まで持ってできたのは、やっぱり監督の力もありますし、プロデューサーの作品への愛情やパッションのお陰でもあります」と上野さんは感謝し、「作品を作るのに国境は関係ないと自分が身を持って感じた喜びを、この作品の中でみんなに返したいし、伝えたいと思った」と力を込める。

 ウヒョンという純朴な青年を演じるチェさんは「過去の恋愛において傷を受け、内面的にはとても孤独で寂しい思いをしている男性」と人物像を説明し、「感情的な部分で自分もそうだろうなというふうに同調できたからこそ、このキャラクターが作れたと思っている」と自信をのぞかせる。聞いていた上野さんは、撮影現場でチェさん演じるウヒョンと対面したときのことを、「初めて会ったときに(チェさんが)モッズコートを着てカメラを持っていた」と切り出し、「BIGBANGのT.O.Pさんはキラキラして決まっているという感じのイメージがあると思います、(撮影現場では)カメラを構えて静かに(役を)全うしている姿がウヒョンだなと思いました」と絶賛する。

 チェさんは上野さんとの初対面の印象を「上野さんが無言劇をしている姿を拝見して、第一印象は本当にすてきだなと思った」といい、「とても繊細で敏感な感覚を持ち合わせている方で、女性らしく感性が豊かな女優さん」とべた褒めすると、上野さんは「褒めてもらってばっかり」と照れ笑いした。

 ◇撮影はハードスケジュールで一人泣いたことも…

 撮影で印象に残った出来事を、上野さんはドラマ内でハルカが挑戦する無言劇だといい、「初め韓国のダンスの先生を紹介されたのですが、映像を見たらレベルが高すぎて……。ハルカが2週間程度で本当にできる範囲のレベルのものが実際にはいいと思った」と切り出し、「日本でレッスンをさせていただくこともある先生とスタジオに入って作り、撮影の合間に練習をして臨みました」と説明する。

 該当シーンについて、上野さんは「『抜粋して使うだけだから』といわれていた」というが、「結構使われていてびっくりしました(笑い)」と驚いた。しかし、「ハルカが言葉の分からない韓国に行って、ダンスができないけれど不器用ながらにも自分の弱みを克服するため、体で表現して殻を破るということを、自分なりに等身大のハルカの気持ちを手作りで作れたのでは」と語り、「それをそのまま監督が映像に仕上げてくださったというのが普通じゃないことかなと思い印象に残りました」と振り返る。

 一方、チェさんは、「実は面白いエピソードがあります」と切り出し、「今回のドラマはとてもハードで、1日に2~3時間ぐらいしか寝られない状況と、この10年間、こんな大変なことがなかったと思うぐらい大変でした」と実感を込めて語ると、「みんなに隠れてこっそりセットの中のトイレで、すごく眠たいこともあって一人で泣いていたことがあった」と笑いながら明かす。

 すると上野さんが、「泣くぐらいだったら寝たらいいじゃないですか!」とツッコミを入れ、「私はお昼を食べる時間に衣装を着替える場所のカーテンを閉め切って寝ていました」と自身の体験を話すと、「僕は食事の時間はちゃんとご飯が食べたい(笑い)」とチェさんは反論していた。

 ◇LINEから始まる恋に理解を示す2人

 ドラマと同じく、顔も分からないメールだけの相手と恋に落ちることについては「ハルカと同じように失った恋人のアカウントから来るというのは大きく、ハルカは韓国に来ていて、韓国人のウヒョンは日本にいてというちょっと運命的な感じやタイミングだったり、2人が模索しているテーマがとても近いとかだったら、運命的な出会いももしかしたらあるかもしれない」と上野さん。「LINEが既読になったり、パッて送ったらパッて返ってくる感じが、ここにいて一緒に過ごしてくれているような気にしてくれ、ハルカにとってはポッカリ空いた穴を埋め、徐々にですが心が通い合っていくというかなりレアなパターン」とハルカの心情を解説する上野さんだが、「やっぱり会ってみないと普通は分からないので、(ドラマのような出会いは)ないと思いますし、そういう経験がないので分からないですが、もしかしたらあり得るかもしれないです(笑い)」とほほ笑む。

 同じ質問に対してチェさんは「自分も同じ状況に置かれたら、こうなりうるだろうなというふうには考えました」といい、「偶然に連絡を取り合うようになった女性と、LINEを通してなんでもないような会話を交わすのですが、やっぱり男と女の関係というのは、寂しい気持ちでいるときにその何気ない会話で気持ちがなぐさめられたりするし、その存在が少しずつ友だちになっていったり、またある時はその関係が恋人になったりすることもあるものだと思う」と理解を示す。そして「特に男というのは女性よりもある意味単純な動物なので、こういうことも十分あるのではと思います」と男性ならではの見解を述べる。

 ◇いつでもどこでも何度でも楽しめるのが魅力

 今作はLINEのメッセージが出会いのきっかけとなっているが、「誤作動で失った彼のアカウントにウヒョンのメールがきちゃうというのは、ちょっとファンタジー」と上野さんは感じつつ、「自分も含めてですが、LINEというものがメールなどよりも写真を送るにも文章を送るにも今すごく活用している人が多いのではというリアリティーもありつつ、韓国のラブストーリーのピュアでチャーミングなところもある」と表現する。

 さらに、「監督はCMなどクリエーティブな仕事をしている方たちなので、芝居だけを演出してきた監督とはまた違った映像の美しい切り取り方だったり、ミュージックビデオ風に走っている画をずっと撮ったり、アイデアもちょっとぶっ飛んでいたりもする」と上野さんは解説し、「エピソードごとにホラーチックだったりコミカルだったり、すごく繊細な心情はシルエットで撮ったりと、いろんな映像の遊び心が入っている」と感心し、「きれいな瞬間をスローで見せたり、ホラーチックに撮るところはクレイアニメみたいに2倍速で撮ったり、そういう視点からも楽しめる」とドラマの魅力を語る。

 チェさんも「単純にラブロマンスだけではなく、時にはとてもコミカルにこまやかな2人のやり取りで可愛らしい部分もあるし、時としてちょっとホラー的な要素があったり、また時として感動的なものもあったり、いろんな面が見られるドラマになっているので、きっと楽しんで見てもらえるのでは」と上野さんに同調する。

 日本でも放送されたドラマ「アイリス」以来、7年ぶりとなったドラマ出演について、チェさんは「なぜ7年近くドラマに参加しなかったのかと考えたときに、きっと誰もが本当に気軽にアプローチできるコンテンツというものを僕自身が待っていたのではと、今になってみるとそんな気がする」と自己分析し、「(今作は)本当に誰もが気軽に接することができ、リラックスして見られる作品になっていると思うので、僕も大きな期待を寄せているし、皆さんがどういうふうに受け止めてくれるのかがとても気になります」と目を輝かせる。そして、「たくさん愛してほしいです!」と熱いメッセージを送る。

 深くうなずきながら聞いていた上野さんは、「回を追うごとに面白くなっていきます!」と力を込め、「一人でひっそり泣いていたり、一人でLINEが来ていないかなとか、人はふいに“口寂しく”なるような感じで携帯(電話)を出したりしますが、あの共有できない気持ちをこのドラマで共有してほしい」と訴える。そして、「どんな体勢でもいいですし、自分の好きな時間に気軽に楽しんで見てほしい。本当にプレーンな状態でハルカの素顔を演じ、ドキュメンタリーに近いような感じで作品を作っていったので、そういったあたりを楽しんでいただけたらと思います」と語った。ドラマは、毎週、月・水・金の午後10時から配信中。

 <上野樹里さんのプロフィル>

 1986年5月25日生まれ、兵庫県出身。2001年に「クレアラシル」の3代目イメージガールに選ばれデビュー。02年NHKドラマ「生存 愛する娘のために」でドラマ初出演を果たし、映画「スウィングガールズ」(04年)で「第28回日本アカデミー賞」新人俳優賞を受賞する。06年には“月9”ドラマ「のだめカンタービレ」(フジテレビ系)で野田恵を熱演し注目され、11年には「江~姫たちの戦国~」でNHK大河ドラマの主演を飾った。主な出演映画に「ジョゼと虎と魚たち」(03年)、「陽だまりの彼女」(13年)など。16年には主演映画「お父さんと伊藤さん」の公開を控える。

 <T.O.Pさんのプロフィル>

 1987年11月4日生まれ、韓国出身。2006年にBIGBANGを結成し、グループではラップを担当。グループ活動を並行し、10年にはシングル「TRUN IT UP」でソロデビューしたほか、映画「戦火の中」(11年)で主演するなど俳優としても活躍。主な出演作に、ドラマ「アイリス」(09年~)、映画「同窓生」(14年)、「タチャ-神の手-」(15年)などがある。

 (インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)

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