コウノドリ:SNS強化で注目度アップ 若い視聴者取り込む

コウノドリのワンシーン=TBS提供
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コウノドリのワンシーン=TBS提供

 俳優の綾野剛さんが主演し、18日に最終回を迎える連続ドラマ「コウノドリ」(TBS系)がSNSで話題だ。現在ツイッター、インスタグラムのフォロワー数が共に10万人を突破。スタッフやキャストによるSNSの積極的な活用で若い世代の視聴者を取り込むことに成功した同作の取り組みについて探った。

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 ◇SNSで想定以上の反応

 「コウノドリ」は、マンガ誌「週刊モーニング」(講談社)で連載中の鈴ノ木ユウさんの医療マンガが原作。主人公のサクラは、1児の父である鈴ノ木さんが、実際に病院で出会ったという産婦人科医のかたわらピアニストをしている医師をモデルにしており、周産期医療の現場や、赤ちゃん、妊婦、その家族にまつわるエピソードが描かれている。ドラマにはサクラ役の綾野さんのほか、松岡茉優さん、吉田羊さん、星野源さん、大森南朋さんらが出演。

 10月期のドラマの中で、「コウノドリ」のツイッターのフォロワー数は、EXILEや三代目J Soul Brothersらが出演するドラマ「HiGH&LOW」(日本テレビ系)の約15万6000人(16日現在)に次ぐ2位の約11万8000人(同)。フォロワー数が伸びたことについて、SNSを担当しているドラマのアシスタントプロデューサーの橋本梓さんは「ここまで反応は想定外でした」と話す。

 同ドラマは、単に産科医療の現場を描くということではなく、妊婦、家族や医師など登場人物一人一人にリアリティーを持たせ、「貧困」「シングルファーザー」「マタ二ティーハラスメント」といった社会問題もストーリーに組み込まれている。橋本さんは「若い方や、これから親になる方に見てもらいたいという思いがあったので、ツイッターなど若い層が使うSNSの更新は放送前から頑張ろうと思っていました」とドラマを見るであろう本来のターゲット以外へのアプローチを試みたという。

 ツイッターを立ち上げた当初は、「クランクインまで1カ月近くありましたが、サクラを綾野さんが演じることが発表され、まずは綾野さんのファンの方に多くフォローされました」といい、「その後、回を追うごとに何千人単位で増えた印象で、5話で取り扱った“14歳の中学生の妊娠”ではツイートしてくださる方の年齢層が下がり、学生のフォロワーが増えた印象があります」と話した。重いテーマを扱いながらも若い層からの注目を集め、「真面目なテーマのドラマなのに、若い女の子たちが話題にしてくれた」と反響を喜んでいた。

 また、若手キャストが投稿するインスタグラムのアカウントも立ち上げ、現在は約10万4000人のフォロワーを持つ。インスタグラムでの視聴者の投稿は、「1話の放送が終わったあと、綾野さんが、『赤ちゃんを載せている人がたくさんいる』と教えてくださり、見てみると自分の赤ちゃんとともに出産経験をつづっている人が増えたように感じました」といい、若い層だけではなく出産や育児を経験している層にも届いていることが分かった。

 ◇キャストやスタッフも積極的に協力

 撮影現場などでのキャストのオフショットを含め、SNSでの写真の投稿数は約300枚と10月期ドラマのアカウントでは最多。橋本さんは、「チームや、キャスト同士の雰囲気がすごくよかったので視聴者やフォロワーに共有したいと思いました」といい、「最初は私が現場でたくさん撮っていたんですが、途中からは『写真、ツイッター用に撮らなくていいの?』と、むしろ綾野さんや松岡さんたちから声を掛けてもらっていました」と明かす。

 また、ツイッターでは、時間や分数が書かれたパネルをキャストやスタッフが持ち、番組開始1時間前からツイッター上でカウントダウン企画を行っている。橋本さんは「キャストは積極的に参加してくださいました。綾野さんたちも『カウントダウンには必ず参加したい』というすごく強い意志を持ってくれていた」と話し、キャストの協力もツイッターの盛り上げにつながったようだ。

 ◇フォロワーや視聴者も制作チームの一員

 SNSで寄せられる意見は、スタッフやキャストが常にチェックしていたといい、「例えば、死産を経験した方から、『死産を扱ってほしい』などの意見があり、私たちも事前に『こういうつぶやきが上がってますよ』と共有していました。視聴者がどういうことを見たがっているのか敏感に取り入れていた」と橋本さんは話し、プロデューサーの峠田浩(たわだ・ゆたか)さんも「ツイッターで上がる言葉は制作する上でのモチベーションを上げていました。綾野さんも、視聴者や意見をくれるフォロワーのことをドラマを一緒に作っていたチームの一員として見ており、“家族”と呼んでいました」と語る。

 また、橋本さんがSNSで発信する上で大切にしていたことは、「強制しないこと」とし、「リアルタイムで視聴するのは、働いている人などにとっては厳しいけれど、(放送終了後には)無料動画も配信しているので、いつでもいいから時間があるときに『コウノドリ』を見てくださいね、と強制しすぎず発信していました」という。実際に、録画や動画を見た視聴者が、放送の翌日以降に「泣ける作品だから週末に見た」「子供がまだ小さいから今朝見ました」など、後追いで感想をつぶやく傾向も見られ、リアルタイム以外で見ていた視聴者の動向も探るのに役立った。

 ツイッターのカウントダウン企画は、ドラマの中盤以降に視聴者からも参加を募り、一緒になって番組を盛り上げている。この取り組みについても「もっと“自分のドラマ”と考えてもらえたら」と橋本さん。SNSを通じて視聴者とドラマを作り上げるという一体感が同ドラマに注目が集まった理由の一つにもなっている。

 これまで、未受診妊婦、帝王切開、口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)、風疹などのテーマを取り上げてきたドラマだが、最終話では、心停止に陥った妊婦に対して 母体の蘇生処置として実施する「死戦期帝王切開」と染色体の過剰を原因とし発育に異常をきたす「18トリソミー」について描かれる。最終話は18日午後10時から15分拡大版で放送。

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