孤独のグルメ:プロデューサーが語るヒットの裏側 “葛藤”と“挑戦”も

スペシャルドラマ「孤独のグルメ お正月スペシャル~真冬の北海道・旭川出張編」の1シーン=テレビ東京
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スペシャルドラマ「孤独のグルメ お正月スペシャル~真冬の北海道・旭川出張編」の1シーン=テレビ東京

 俳優の松重豊さんが主演する人気ドラマ「孤独のグルメ」(テレビ東京系)の元日スペシャル「孤独のグルメ お正月スペシャル~真冬の北海道・旭川出張編」が1日午後11時15分から放送される。深夜に放送される食事シーンは“夜食テロ”と呼ばれ、取り上げられた飲食店にファンが訪れる“巡礼現象”も起きるなどいわずと知れた人気番組だ。ドラマの“仕掛け人”で、店探しに東奔西走する吉見健士プロデューサーは「何か新しいことをしたい」という挑戦の姿勢と「これが孤独のグルメとして正しいのか」という“葛藤”があると明かす。人気ドラマの舞台裏について話を聞いた。

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 ◇当初の企画はドキュメンタリーだった

 「孤独のグルメ」は、雑誌「週刊SPA!」(扶桑社)で不定期連載中の久住昌之さん原作、谷口ジローさん作画の同名グルメマンガを実写化し、輸入雑貨商を営む主人公・井之頭五郎が、仕事の合間に飲食店に立ち寄り、1人で食事をする姿を描く人気ドラマ。2012年1月期からドラマ化され、昨年12月までシリーズ第5弾が放送された。

 原作マンガが大好きで、映像化したいと考えていたという吉見さん。出版社に通って映像化の優先順位を確保し、ドキュメンタリーとしての映像化を企画したが、持ち込んだテレビ局では採用されず、最終的にテレビ東京でドラマ化にこぎつけた。「ドラマなら五郎さんの“仕事場”も撮れる。やっぱりドラマしかないのかなと思って、セリフを付けて、モノローグショーにしたらどうかと考えた。モノローグショーってあまりやられていないし、モノローグでしか成立しないと思っていたので。ドラマだからできたのかなと思う」と振り返る。

 ◇松重豊の起用理由は「存在感」 人気の理由は?

 ドラマ化にあたっては主役は松重さんしか考えていなかった。「松重さんはすごく存在感があって、見た目も含めて、松重さんのインパクトの強さだとか存在感の大きさだと、(店や料理に)負けないのかなと考えた」と説明。実際に「やっぱり本当においしそうに食べられる。おいしそうに食べていただける松重さんの力は大きい」と感謝する。

 番組の人気の理由を聞くと、「松重さんの演技はもちろん、やっぱりモノローグがおもしろい。五郎のセリフには久住さんが最終的に赤を入れるんです。五郎のセリフの例えが面白くて、視聴者がその例えに突っ込むという(笑い)」と分析。さらに、「ドラマの部分を排除している見やすさもあると思う。なるべく変に“盛ら”ず、ドラマの部分をそぎ落としていく。そこが見やすいのかな。変にドラマで盛っちゃうと“見疲れ”しちゃうのかなと思う。逆にシャープにシャープにしていくんです」。

 ◇店探しは“足”で

 番組に登場する飲食店や料理は、どれも魅力的だ。それらを見つけ出すのは、吉見さんをはじめとするスタッフの地道な努力がある。番組で取り上げるのは、原作にない店というのが大前提。まず町を決めてから、7人ほどのスタッフが手分けして店を探し出す。「Season5」(全12話)でも「140~150軒は回った」といい、同じ店に何度も“覆面リサーチ”に訪れ、「味だけでなく、店の雰囲気や店員の様子、料理で一品変わった展開ができないか」などと総合的に判断した上で撮影をお願いする。「『うちのお店に来てください』という売り込みもたくさんあるんですが、そういう店には一軒もいっていない」といい、“足で探す”スタンスはぶれない。

 「もちろんおいしくなくちゃいけないですけど、あまり高い店はやらない。五郎さんはお金に無頓着ですが、サラリーマンが普通に行けるような店。あとはお店の雰囲気。家族経営の雰囲気とか」と条件らしきものはあるが、「スタッフだけで“孤独っぽいお店”と言っているんですが、定義って何だというと分からない。その葛藤で店を探しているんです。“これが孤独のグルメとして正しいのか”という葛藤がないと、なかなか見つからないですね」と明かす。

 ここまで長く続いたことで、料理のジャンルが重なることもあるが、「さらに何か新しいもの、違う味っていうのを探していかないといけない。何か新しいことをしたい」と探求心はつきない。「Season5」の第1話では、スタッフ間で「キラーコンテンツ」と呼ぶ焼き肉を取り上げ、よりいい店を探し出すために「気概みたいなものを示したかった」と“ハードル”を上げて臨み、初の海外ロケとなった台湾編でもこれまで通り“足”で店を探し出した。

 ◇元日SP 旭川のロケハンも食べまくり

 正月スペシャルでは海鮮や肉、野菜など、さまざまな食材がそろう極寒の北海道・旭川が舞台。旭川に出張した五郎(松重さん)が、雪の中で渋いたたずまいの飲み屋や老舗洋食屋を発見し、いつもどおりに一人で食事をする……という展開。2泊3日のロケハンで12店舗で食事をして店を探し出したという吉見さんは「食べ物の配分がよく分からなくなって、つらかったですが、12軒ともすばらしくて、おいしかった」と笑う。

 劇中に登場する2軒については「正月らしい雰囲気のお店。元日の午後11時15分に、ゆっくりのんびり見られるよねということで、割と静かな感じの入りにしたかった。スタッフの満場一致で決めました」と自信を見せる。「すばらしくおいしかった12軒の中から、『孤独のグルメ』のスタッフが、正月というイメージを持ちながら選んだら、どういうチョイスをしてきたんだろうという“上から目線”で見ていただければ」とアピールした。

 正月スペシャル「孤独のグルメ お正月スペシャル~真冬の北海道・旭川出張編」は、テレビ東京、テレビ北海道、テレビ愛知、テレビせとうち、TVQ九州放送で1日午後11時15分~深夜0時15分に放送される。

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