スタジオジブリ:「宮崎駿は“バルス祭り”知らない」 鈴木敏夫P「ラピュタ」を語る

「天空の城ラピュタ」の裏話を語ったスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサー
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「天空の城ラピュタ」の裏話を語ったスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサー

 宮崎駿監督の名作アニメ「天空の城ラピュタ」が日本テレビの「金曜ロードSHOW!」で放送されることが明らかになった。15回目のテレビ放送を記念して、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーに、“隠れ家”の「れんが屋」で当時を振り返ってもらった。

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 鈴木プロデューサーによると、「風の谷のナウシカ」が公開された後、宮崎監督は「二度と映画は作らない」と話していたという。製作するにあたってスタッフにいやなことも言わなければならず、結果的に友人を失っていったといい、鈴木プロデューサーも当初は「宮さん(宮崎監督)がそう思うなら仕方ない」と納得していたという。

 ところが、「ナウシカ」のスマッシュヒットで得た資金を、“盟友”高畑勲監督のドキュメンタリー映画「柳川堀割物語」に投入したところ、鈴木プロデューサーいわく「お金を使う名人」の高畑監督は完成を前に資金を使い果たしてしまう。

 「家も売らなきゃいけない……」と途方に暮れていた宮崎監督に、鈴木プロデューサーは「もう一本作る?」と新作アニメの製作を提案。すると、宮崎監督はわずか5分で「ラピュタ」のアイデアを語ったという。「パズーっていう男の子がいて、シータっていう女の子がいて、天空に広がる島があって……とかすらすらアイデアが出てくるから(宮崎監督に)聞いてみたら、小学生の時のアイデアだって言うんだよね」と鈴木プロデューサーは振り返る。

 「(ナウシカを製作したアニメ制作会社の)トップクラフトがなくなるっていうんで、どこで製作しようかと考えていたら、高畑さんが『自分たちで作るしかない』って」。スタジオジブリの誕生だった。高畑監督は、製作にかける必要人員などを綿密に記したリポートも作ったといい、それがスタジオジブリの礎になったという。

 近年「ラピュタ」のテレビ放送時に、視聴者が劇中のシーンに合わせて滅びの呪文「バルス」をSNSや掲示板に一斉に書き込む“バルス祭り”が巻き起こることが話題になっている。鈴木プロデューサーは「同じ時間に同じものを見るテレビの力が大きいね。カウントダウンをしたりして共有するのは映画館で見ていると起きないことだし、面白いと思う」と好意的だ。「中学、高校のころからそうだったけど、仕掛けるのが好きだから騒いでくれると面白いんだよね」。

 一方、鈴木プロデューサーによると、当の宮崎監督は「“バルス祭り”を知らない」という。「僕も周囲も本人に言っていない。ニュースも見ないし、新聞も読まない。情報から(自分を)遠ざけたいのかもしれない」と話す。長編作品からの引退を発表した宮崎監督だが「『俺が引退したのは長編だからね』って、引退しても毎日会社に来ている。そもそも長編(アニメ引退)になったのも会見の前日だからね」と今なお意気軒高。現在は三鷹の森ジブリ美術館(東京都三鷹市)で公開予定の短編「毛虫のボロ」を製作しているという。

 大人から子供まで長年愛されてきた「ラピュタ」について、鈴木プロデューサーは「長く愛してくれるのはうれしい。子供たちには、世の中には現実以外の何か、理想や夢があることも知ってほしいんです」と話す。その後で「宮さんにはもっと現実を知ってほしいんだけど」と笑わせた。

 「天空の城ラピュタ」は「金曜ロードSHOW!」で15日午後9時から放送。なお、22日午後9時からは「魔女の宅急便」が放送される。 

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