真田丸:信玄亡霊は亡き殺陣師だった! 弟子が明かす最後の撮影と素顔

「真田丸」で武田信玄を演じた林邦史朗さん=NHK提供
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「真田丸」で武田信玄を演じた林邦史朗さん=NHK提供

 俳優の堺雅人さんが主演を務める2016年のNHK大河ドラマ「真田丸」の第2回「決断」(17日放送)に登場した武田信玄の「存在感がすごい!」などと話題になっている。信玄は亡霊としてたった2シーンに登場したのみで、せりふもなかったにもかかわらず、NHKによると第2回が放送されると、ドラマ公式サイトの信玄の人物紹介欄のアクセスが急上昇したという。演じたのは、半世紀以上にわたって大河ドラマの殺陣師として活躍し、昨年10月に亡くなった林邦史朗(はやし・くにしろう)さんで、「真田丸」は林さんの遺作となった。林さんの弟子で“邦史朗”の名前を継いだ中川邦史朗さんに、師の最後の撮影や長年、大河ドラマを支えてきた林さんの素顔について聞いた。

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 ◇“邦さん”と慕われ

 林さんが大河ドラマの殺陣を担当することになったのは1965年放送の「太閤記」からで、半世紀以上にわたって殺陣師として大河ドラマに携わってきた。中川さんによると、林さんは「一つの作品をみんなで作るという思いが強かった」といい、出演者と密なコミュニケーションを取りながら、殺陣を演出していた。出演者からの信頼も厚く、“先生”と呼ばれることを嫌っていたことから、出演者やスタッフに“邦さん”と慕われていたという。

 中川さんが林さんと出会ったのは1991年。「ザ・時代劇という感じで、見た目で圧倒された」と当時を振り返る。「真田丸」でも、その存在感に圧倒された視聴者も多かったようだが、中川さんは「(林さんが)厳しかった……という時代もあったようですが、私は優しく、楽しい人という印象が強い。何もしゃべっていない時も鼻歌を歌っていた」と意外な素顔を明かす。

 ◇気力で臨んだ最後の撮影

 林さんの最後の撮影となったのは、信玄の亡霊が、主人公・真田信繁(堺さん)の父・昌幸(草刈正雄さん)の前に現れるシーンで、昨年9月に撮影された。中川さんは撮影の様子を「(林さんは)体力が落ちていたけど、受けた仕事をやり遂げるという強い気力を持っていた。(入院していた)病院で見た時とは顔つきが違った。黙って見ているしかなかった。その後、すぐに亡くなるとは……」と語る。最後のシーンで信玄は鋭いまなざしで昌幸を見つめるのみで、せりふもないにもかかわらず、ネットを中心に「信玄を演じたのは誰だ?」などと話題になるなど、林さんの圧倒的な存在感は画面から伝わったようだ。

 “邦史朗”を襲名した中川さんは現在、「真田丸」で殺陣師として活躍している。中川さんは、林さんから受け継いだ殺陣師の“精神”について「常に上を目指す。妥協点を作らない」「稽古(けいこ)には本物の刀を使う。本物を知って、表現する」と話す。師が偉大だったこともあり「いろいろなものを背負っている」とプレッシャーもあるようだが、「時代劇を背負う……のかもしれませんが、まだまだ背負えません。今は何も考えずしっかり『真田丸』を頑張ろうと思います」と笑顔で話していた。

 「真田丸」は、堺さんが真田幸村の名でも知られている戦国時代の人気武将・真田信繁を演じ、戦国時代に信州の小さな領主のもとに生まれた信繁が、家族とともに知恵と勇気と努力で乱世を生き抜く姿が描かれる。映画監督・演出家・脚本家の三谷幸喜さんが2004年放送の「新選組!」以来、12年ぶりに大河ドラマの脚本を手がけている。NHK総合で毎週日曜午後8時ほかで放送。

 林さんが武田信玄を演じた第2回「決断」は、NHK総合で23日午後1時5分に再放送される。

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