注目映画紹介:「マンガ肉と僕」 3部構成の恋愛物語を通して人のあり方や人間関係の深層を描く

映画「マンガ肉と僕」のワンシーン (C)吉本興業
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映画「マンガ肉と僕」のワンシーン (C)吉本興業

 第12回「女による女のためのR-18文学賞」を受賞した朝香式さんの小説を基にした映画「マンガ肉と僕」(杉野希妃監督)が13日に公開される。女優やプロデューサーとして活躍する杉野さんの長編監督デビュー作で、京都を舞台に1人の青年が3人の女性と出会う8年間の遍歴を描く。青年・ワタベを三浦貴大さんが演じ、杉野監督も自ら熊堀サトミを特殊メークで熱演しているほか、徳永えりさんが菜子、ちすんさんがさやかとメインキャラクターを演じている。

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 気が弱く引っ込み思案の青年・ワタベ(三浦さん)は、活気あふれる大学生活になじめず、孤独な日々を送っている。一方、同じ大学に通うサトミ(杉野さん)は、太ったみすぼらしい容姿のため周囲の学生に嘲笑されていたが、唯一ワタベだけがサトミを差別することなく接していた。サトミはワタベの優しさにつけ込んで自宅へと転がり込み、奴隷のように支配しようとする。そんな中、ワタベはバイト先で知り合った菜子(徳永さん)に好意を持つが……というストーリー。

 今作を見ていると、男と女、ひいては人と人との関係性に難しさを改めて感じさせられる。誰かと出会うことで傷付いたり不幸になったり、相手が期待通りの外見や反応しなかったりと、自分の思いがいかに他者に対して一方通行であるかが切実に描き出されている。自分が思っている自分と他人から見えている自分、さらに他人からの影響でかたちづくられていく自分がいる。そんな当たり前だが普段は意識しない事実を、4人の登場人物たちを演じる俳優陣の熱演で突きつけられる。予期しない存在と出会ったとき、人はどうするのか、そして男と女が平等であるということはどういうことなのかを、シニカルな笑いを交えた恋愛物語として問題提起してくる。男性として、見終わったあとにカウンターをくらった気分になった。13日から新宿K’s cinema(東京都新宿区)ほか全国で順次公開。(遠藤政樹/フリーライター)

 <プロフィル>

 えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。

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