三浦貴大:女優兼任の杉野希妃監督作で“不思議な体験” 「マンガ肉と僕」インタビュー

映画「マンガ肉と僕」のインタビューに答えた杉野希妃監督(左)、三浦貴大さん
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映画「マンガ肉と僕」のインタビューに答えた杉野希妃監督(左)、三浦貴大さん

 俳優の三浦貴大さんが主演を務める映画「マンガ肉と僕」(杉野希妃監督)が13日から全国で順次公開中だ。映画は「第12回 女による女のためのRー18文学賞」を受賞した朝香式さんの小説(新潮社)が原作。杉野監督の長編デビュー作で、京都を舞台に三浦さん演じる青年・ワタベの、3人の女性たちとの8年間の遍歴を描いている。杉野監督は、太ったみすぼらしい容姿から周囲に笑われている女性・サトミ役で、特殊メークを施して太った姿になり、女優としても同作に出演している。「目の前で芝居している人が『用意、スタート』っていうことはなかなかない。不思議な体験でした」と撮影を振り返る三浦さんと杉野監督に、映画の魅力を聞いた。

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 「マンガ肉と僕」は、活気にあふれる大学になじめず、孤独な日々を送る引っ込み思案の青年・ワタベが主人公。熊堀サトミは、差別することなく接してくれるワタベの優しさにつけ込み、彼の自宅に転がり込んで、やがてワタベを奴隷のように支配しようとする。そんな中、ワタベはバイト先で知り合った菜子にひかれていく……という展開だ。

 --撮影は2年前とのことですが、当時の撮影はいかがでしたか?

 杉野監督:初監督作品で、しかも自分が出演するということだったので、主演の三浦さんをはじめとする皆さんにご迷惑をかけた。でも心の広い優しい方々だったので、見守っていただきながら、すごく楽しくやらせていただきました。

 --女優業から監督もやろうと思ったきっかけは何でしょうか?

 杉野監督:2005年にデビューして、08年からプロデュースも始めるうちに、いろんな映画監督とお仕事させていただきながら、うらやましいなと思うようになった。監督って、自分のイマジネーションをすべて絵にできる立場の仕事だなって。そういうことにもチャレンジしたいなと思いました。

 --京都が舞台の理由は?

 杉野監督:原作は阿佐ケ谷だったり、東京都内なんですけれど、東京の街はちょっと無機質で、それはそれで魅力があると思っているんですが、京都は、クラシックな街並みが残っている中で、この作品の人間の感情のうねりを出していきたいと思ったときに、昔ながらの街で撮りたい、しかも京都だったら映画の街だし、絵になるんじゃないかと思って選びました。

 三浦さん:僕はそんなに京都に行ったことがなかったんですが、すごくいい街で、芝居もすごくしやすいんですね。町の環境が、絵になるし、街にいるだけで、すごく芝居がしやすかった思い出があります。

 --女優として関西弁は難しかったですか? 関西弁の女性は怖かった?

 杉野監督:京都で撮影したいなと思ったら、ワタベ以外は関西弁にしたい(と思った)。私は広島出身なので、語尾や抑揚は近いところがあるんですが、関西は独特の言い回しがあるので難しくて、ずっと監督をしながら、京都出身の女優さんにせりふを言ってもらって、それを聞きながら現場に行った感じですね。

 三浦さん:僕は関西弁は、もともとそんなにきついイメージはない。やわらかいイメージで、聞き方によっては標準語の方がきつい。すごく芝居をしていて楽しかったです。

 --題名にもなっている「マンガ肉」の再現で工夫したことはありますか

 杉野監督:形を作り出すのは、京都の仕出し屋さんにオーダーしてデザインして作ってもらった。試作品を見た瞬間に、これはもう面白いというか、これだけで絵になるなと思って興奮しました。

 三浦さん:おいしそうでしたね。ちょっとボリュームがありすぎるな、と思っていました。

 --特殊メークで肥満女性になるのは大変でしたか?

 杉野監督:3時間くらいかかって大変だったんですけれど、それで別人格になれた。なので、特殊メークをしているときのカットのかけ方は、凶暴だったんじゃないかと思います。

 --杉野監督の撮影で特別なことはありましたか?

 三浦さん:出演しながら監督もやってらっしゃるので、目の前で芝居している人が「用意、スタート」っていう経験はなかなかない。なので、それはすごく不思議な体験でしたし、監督を見ていると僕も(混乱した)。特殊メークをしてサトミになっているけれど、監督としてカットをかけて、モニターチェックをしてる。監督の行き来を見ているのが不思議な感覚。

 --大学生役で、自分の学生生活を思い出した?

 三浦さん:ワタベ君に関しては、すごく頭が良くていい大学に行っているという感覚。僕は体育の勉強をしていたので、普通のキャンパスライフとは違う。だから僕の中のイメージを捨て去らないとできないかなと思っていました。逆に思い出を捨てるという作業をやっていました。

 --ファンへひと言。

 杉野監督:この「マンガ肉と僕」は、三浦君の演じるワタベの8年間の恋愛遍歴を描いているんですが、本当にワタベのちょっとした変化、少しずつなんだけれどワタベも変わっていっているんだなというのがちゃんと分かるので、そんな三浦君の演技に注目してほしい。私も肉にしゃぶりついて頑張っているので、楽しんで見ていただきたいです。

 三浦さん:僕がワタベという男をやっているんですが、その周りにいる3人の女性がどんどん変化していく様を見られますし、男の人が見ても女の人が見ても、いろんな人に感情移入して楽しめると思います。

 <杉野希妃監督のプロフィル>

 1984年3月12日生まれ、広島県出身。2005年、ソウル留学中に、韓国映画「まぶしい一日」宝島編主演でデビューし、続けて「絶対の愛」(06年)に出演。帰国後「クリアネス」(08年)で主演を務める。08年から映画制作にも乗り出し、主演兼プロデュースした「歓待」(10年)が、第23回東京国際映画祭日本映画・ある視点部門作品賞などを受賞したほか、100以上の映画祭からオファーが集まる。監督第1作となった「マンガ肉と僕」(14年)は、東京国際映画祭やエディンバラ国際映画祭に正式招待された。

 <三浦貴大さんのプロフィル>

 1985年11月10日生まれ、東京都出身。2010年、映画「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」でデビュー。近年の主な出演作に、映画「わが母の記」(12年)、「あなたへ」(12年)、「キッズ・リターン 再会の時」(13年)、「許されざる者」(13年)、「永遠の0」(13年)、「太陽の坐る場所」(14年)、「繕い裁つ人」(15年)、「サムライフ」(15年)、「イニシエーション・ラブ」(15年)、「進撃の巨人」前後編(15年)などがある。

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