寺島しのぶ:坪田監督は「ぶっとんでる」 映画「シェル・コレクター」の魅力

最新作「シェル・コレクター」について語った寺島しのぶさん
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最新作「シェル・コレクター」について語った寺島しのぶさん

 女優の寺島しのぶさんが出演する映画「シェル・コレクター」(坪田義史監督)が、27日公開する。沖縄の離島を舞台に、リリー・フランキーさん演じる盲目の貝類学者と、それを取り巻く人々の姿を描いた作品で、全編にわたって色彩豊かで圧倒的な自然美が映し出されている。映画のパンフレットには「未体験の艶麗劇薬ファンタジー」というキャッチフレーズが躍っているが、今作が放つ独特な世界を「なんだかよく分からないけど、何か心に残る映画」と表現する寺島さんに、その魅力や撮影の舞台裏を聞いた。

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 「シェル・コレクター」は、ピュリツァー賞受賞作家のアンソニー・ドーアさんによる小説が原作。盲目の貝類学者が一人、厭世(えんせい)的な生活を送っていた島に、ある日、奇病に侵された画家・いづみが流れ着き、偶然にもイモガイの毒で病気を治したことから、静かだった学者の周囲が騒がしくなる……というストーリー。寺島さんは、学者の生活を翻弄することとなるいづみを演じており、そのほか、池松壮亮さん、橋本愛さんといった豪華キャストが出演している。

 映画のメガホンをとったのは、デビュー作「美代子阿佐ヶ谷気分」がロッテルダム国際映画祭コンペティション部門「VPROタイガー・アワード」に出品され、各国の映画祭で絶賛された若手の坪田監督。今作について、主演のリリーさんは「カルト映画」「いろんな意味で稀(まれ)な映画」と評しているが、寺島さんも作品を見た感想を「坪田さん、ぶっとんでるなあって思いましたね」と寺島さん流の賛辞を贈る。

 「分かりやすい映画ではないんですけど、見ている人が考えられるような余白を残した作品。分かろうとするのではなく、一つのアートを見るように感じていただけたら」と魅力を語り、「こういう監督だからこそ、日本の映画界は大切にしてほしいし、この映画もいろいろな映画祭にかかって、海外の方たちにも『(日本に)こういう監督がいるんだよ』ということをどんどん発信してほしい」と力をこめる。

 実際、いづみという人物を演じている間も「よく分からないな、と思いながら撮影していました」と明かすが、「監督の中では確実にビジュアルが成り立っているんですよね。私たちはそれを一つ一つ消化するということだったんですけど、分からない分、いろんな可能性があって楽しかったですよ。こういうのもありだよねって、セッションしながら作っていったので。それはすごく楽しかった」と笑顔で語る。

 今回、初共演したリリーさんについても「すごくクリエーティブな部分を持っている方だし、話しながら『じゃあ、このシーンはこうしよう』とか、その場で生まれる即興的な部分がいっぱいあって楽しかったです」と語り、「お互いシャイで最初のうちは全然しゃべれなかったんですけれど、日を追うごとにどんどん会話するようになって。お話しされることもすごく面白いし、会話が途切れなかったですね。普通に居心地がよかったなあって。撮影後は、しょっちゅう島の居酒屋でみんなで飲んで、すごく楽しかったですよ」とオール沖縄ロケの舞台裏を明かした。

 今作を振り返り、「こういう映画に参加できたこと、声を掛けてもらったことをすごくうれしく思っています」と語る寺島さん。「分かりやすい映画も面白いけれど、こういうなんだかよく分からないけど、何か心に残る映画も、見てもらえる習慣ができたらいいなと思いますね」と期待を寄せていた。

 次回は、オフタイムの過ごし方を聞く。

 <プロフィル>

 てらじま・しのぶ。1972年12月28日生まれ、京都府京都市出身。92年文学座に入団し、96年の退団以降は、舞台、テレビ、映画など多方面で活躍。2003年、映画「赤目四十八瀧心中未遂」と「ヴァイブレータ」で第27回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞をはじめ国内外の映画賞を多数受賞。10年公開の映画「キャタピラー」では、日本人としては35年ぶりに第60回ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀主演女優賞)受賞という快挙を成し遂げた。そのほか、映画では「単騎、千里を走る。」(06年)、「愛の流刑地」(07年)、「千年の愉楽」(13年)、「R100」(13年)、「蜩ノ記」(14年)、「サベージ・ナイト」(15年)など話題作に出演している。NHK連続テレビ小説「あさが来た」、dTVドラマ「裏切りの街」に出演中。4月6日から上演される舞台「アルカディア」への出演も決定している。

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