リリー・フランキーさんが15年ぶりに単独主演した「シェル・コレクター」(坪田義史監督)が27日から公開される。島でひっそりと暮らす盲目の貝類学者が、謎の奇病を治したことをきっかけに運命に翻弄(ほんろう)されていく姿を、不思議な映像でつづっていく。米国の作家アンソニー・ドーアさんの短編が原作。舞台を、ケニア沖の孤島から沖縄に置き換えている。
ウナギノボリ
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貝の美しさに魅了された盲目の学者(リリー・フランキーさん)は、家族と離れて沖縄の孤島で研究に没頭しながら静かに暮らしていた。ある日、一人の女性が島に流れ着く。その女性、元画家の山岡いづみ(寺島しのぶさん)は、世界で流行中の奇病を発症していたが、学者が見つけた新種のイモガイに刺されて治ってしまう。そのうわさが広がって、人々が島へ押し寄せる。その中には、疎遠だった息子の光(池松壮亮さん)や、同じ奇病にかかった娘(橋本愛さん)を治したい有力者の姿もあって……という展開。
説明を省いて、映像で語ってくるこんな映画は久しぶりだ。イラストレーターであるリリー・フランキーさんが貝の輪郭をなでるだけで、らせん状の神秘が印象付けられる。フランキーさん演じる学者は盲目だ。目の見える人とは違った感覚で、世界を見つめているに違いない。シェルターのような家に住み、家族と疎遠で、孤独を友としている男の静かな生活が、女性の奇病をたまたま治したことによって壊されていく。奇病の蔓延(まんえん)を伝えるラジオの声が、じわじわと見ているこちら側の不安をあおっていく。
映像作家の牧野貴さんによる映像が、言葉にならないさまざまな感覚を呼び起こさせる。圧倒的な大自然を前に人は言葉を失うものだが、そんな感覚だ。リリー・フランキーさんは、実際に海の中に潜って撮影したという。アースカラーの服に身を包んだ学者姿。海の底に潜り、亀が見つめる幻想的な映像は、美しい青色だ。エネルギーを感じる真っ赤な服の女性と、白い砂浜を歩く少女の白い服など色彩に目を奪われる。日米合作。音楽をジャズドラマーのビリー・マーティンさんが担当している。27日からテアトル新宿(東京都新宿区)ほかで公開。(文・キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。子どもの頃、貝や石を集めていたことを思い出した。
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