夢枕獏さんの小説「神々の山嶺」を、「愛を乞うひと」(1998年)や「しゃべれども しゃべれども」(2007年)などで知られる平山秀幸監督が映画化した「エヴェレスト 神々の山嶺(いただき)」が12日に公開される。エベレスト登頂に同行していた最中に滑落事故で仲間を失った山岳カメラマンが、天才クライマーといわれる男と、兄を雪山で失った女性と出会い、エベレスト登頂に挑む姿を描いている。エベレスト史上最大の謎を追う野心的な山岳カメラマン・深町誠を人気グループ「V6」の岡田准一さん、山岳史上初の挑戦にとりつかれた孤高の天才クライマー・羽生丈二を阿部寛さん、羽生との登山中に兄を亡くした女性・岸涼子を女優の尾野真千子さんが演じる。3人は初共演。
ウナギノボリ
ついにクライマックス!「不適切にもほどがある!」
原作は第11回柴田錬三郎賞を受賞した夢枕獏さんの小説「神々の山嶺」。ヒマラヤ山脈を望むネパールの首都カトマンズで、深町(岡田さん)は1台の古いカメラを見つける。そのカメラは、英国の登山家ジョージ・マロリーが、1924年にエベレスト初登頂に成功したのかという登山史上最大の謎を解くカギが隠されている可能性を秘めたものだった。深町はそのカメラの過去を追ううち、天才クライマーと呼ばれながらも、他人を顧みない無謀なやり方のために孤立した伝説のアルピニスト・羽生(阿部さん)と出会う。深町は羽生の過去を調べるうちにに、羽生という男の生きざまに取り込まれていく……というストーリー。
撮影は、キャストとスタッフがエべレストに約10日間かけて高度順応しながら登り、標高5200メートル地点で行われた。それだけでも日本映画史上、画期的な撮影だったが、さらにリアリティーを追求するために、阿部さんが雪山でのロケ中に霧吹きで自分を凍らせて役づくりしたとか、岡田さんが背負ったバックパックの中に30キロほどの石を入れて撮影に臨んだなど想像を絶する過酷エピソードには事欠かない。
それだけに、見ているこちら側も暖かい室内で見ているはずなのに背筋に寒さを感じ、登場人物が険しい崖を登る際には思わず拳を握りしめており、映画を見ている最中は、体のどこかにいつも力が入っていて、終わった瞬間にどっと疲れを感じたというのが正直な感想だ。映画はエンターテインメントであるだけに、もう少しほっと楽しめる、箸休め的な楽しいシーンや謎解きのサスペンス要素ももう少し欲しいところだが、それもぜいたくな悩みといえるだろう。後半はほぼ全編にわたって迫力のあるシーンが続き、スクリーンから圧力を感じるほどだった。観賞の際には体調を整えて臨むことをお勧めする。12日からTOHOシネマズスカラ座(東京都千代田区)ほかで公開。(細田尚子/MANTAN)
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