アルスマグナ:2.5次元コスプレダンスユニットができるまで 武道館の次に目指すものは?

アルスマグナの(左から)泉奏さん、榊原タツキさん、神生アキラさん、朴ウィトさん、九瓏ケントさん
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アルスマグナの(左から)泉奏さん、榊原タツキさん、神生アキラさん、朴ウィトさん、九瓏ケントさん

 1月に日本武道館(東京都千代田区)でのライブを成功させた、2.5次元コスプレダンスユニット「アルスマグナ」が、ニューシングル「マシュマロ」を9日にリリースした。メンバーに、結成から現在に至るまでの経緯や今後の目標などについて聞いた。

ウナギノボリ

 ◇オリジナルコスプレが話題に

 ――最初はどういう思いで結成を?

 神生アキラさん:誰もやってない、うちらにしかできない踊りをやろうというのがスタートでした。「アレっぽいよね?」と言われるようなものは避けてやってきた気がします。

 朴ウィトさん:僕たちのダンスが、アルスマグナというジャンルになればいいよね、と。

 ――最初は動画投稿だったとか。

 九瓏ケントさん:結成当時は発表の場がほとんどなくて。それで、ニコニコ動画の「踊ってみた」という投稿カテゴリーを使ってみようと、上に許可を得まして。

 ――上というのは?

 九瓏さん:えっと……学校です! 学校の許可を得て、1年間という期限付きで上げるようになりました。

 ――その1年の間に動画再生数はどのような推移を?

 九瓏さん:最初はまったくカスリもしなかったですね。でも、あるとき再生数ランキングにピュッと上がったことがあって。それが、「速く踊る」というダンスだったんです。で、ここにヒントがあるはずだと思って、そういう動画をどんどんアップするようになったところ、ドンッ!と上がって。そのあたりからから、「早送り」と「表情がうるさい」というワードで引っかかるようになり、ジワジワと広がっていった感じです。

 ――1年という期限はクリアできたわけですね。

 九瓏さん:半年をちょっと過ぎたくらいでクリアできました。でもライブはまだまだで、そのころはまだマックス(最大)80人の会場でやっていたんです。それが200人になり、そこで1年くらいうろうろしてました。でも、そこでも入りきらなくなり、200人の会場で2回とか3回とかやるようになって、そこから一気に1000人規模になって。倍々という感じでした。あと大きかったのは、ニコニコのイベントや公式放送に出たこと。そこで広くアルスマグナの名前を知ってもらえるようになって、好きになる要素を見つけてもらえるようになりました。

 ――アニメから飛び出してきたような皆さんの背景やダンスやライブのスタイルが、ニコ動やネットのユーザーと親和性が高かったんでしょうね。

 九瓏さん:こういう姿形をした人たちが、ほかにいなかったので。だから最初の頃は、「何のアニメのコスプレなの?」ってよく聞かれました。「僕たちがオリジナルなんです」と答えると、「へぇ」って怪訝(けげん)そうにされるのがいつものことで。でも2次元が動いたら面白いよねというところから活動が始まり、今ようやく僕らを主人公にしたマンガの連載がスタートして……普通とは(動きが)逆なのが、面白いと思うんですよね。

 神生さん:最初の頃は、ライブでコスプレをしている人は、他のアニメのコスプレだったんです。それで先生が言ったように、うちらがオリジナルなんだよと説明すると、次からは僕らのコスプレを着てくれるようになって。そういう人がどんどん増えて、今の形になっているんです。

 九瓏さん:最近は男の子のファンも増えて、大阪に行くと必ず朴の名前を連呼してくれる男の子がいて。

 朴さん:その子の声が、よく響くんです。声を聞くと「今日も来てくれたんだ!」ってうれしくなります。

 九瓏さん:この間は、「朴!」って叫びながら、格好は先生(九瓏ケント)のコスでしたけれどもね(笑い)。

 ――日本武道館公演も成功させた今は、より歌やダンスという部分に注目して見たり聴いたりしてくれる人も増えました。今、大切にしていることは?

 神生さん:気をつけているのは、音楽を通して何を使えるか?ということ。歌唱力がどうとか、いい歌を聴かせたいとか、そういうことには、実はあまり重きを置いていなくて。ただ、みんなと共感しているよ、という気持ちは常に持っています。

 あとは世界観ですね。これまでの3枚のシングルやアルバムの曲では、極力間奏をなくしてメンバーの声を入れるようにしていて。耳で聴いただけも、アルスマグナの世界観を感じたり、想像したりしてもらえるものを意識しています。去年1年間は、そういう形で僕らの世界観を少しでも届けられたんじゃないかと思っていますね。

 ――ライブでは、歌とダンスだけでなく、お芝居っぽいところもありますね。

 九瓏さん:みんなを楽しませるためなら、何でもしちゃいます、みたいなスタンスです。ダンスも歌もお笑いもすべて含めたエンターテインメントというところで、みんなを楽しませたいんです。だからCDで流れる歌はアキラだけれど、ライブでは全員の個性が発揮されています。去年の夏のツアーでは、朴がコントの台本を書いたんですけれど、すごく面白くできていて。朴のいいところが出たなと思いましたね。

 朴さん:ありがとうございます。もっと頑張りますね!

 ――泉さんのライブでの役割は?

 泉奏さん:僕は、覚えなくてはいけないことをすべて覚えます。セットリストや事務的なことだけじゃなく、全員の立ち位置とかまで把握して。先生は天才肌なので、思いつきで演出したことを翌日忘れているときがあって。そういうとき、必ず「昨日は何をやったっけ?」と僕に聞いてくるので。他のメンバーからも「僕の位置はどこだっけ?」って聞いてくるので、あそこですよって。

 ――榊原さんは?

 榊原タツキさん:僕にも何か役割なんかあるんですか? 僕といえば、奏くんに立ち位置を聞いたり、ウィトっちょとアキラっちょに遊んでもらったりしてるくらいで……。

 九瓏さん:ほら、あるじゃない?

 榊原さん:……???

 泉さん:ムードメーカーってことですよ。和ませ役!

 神生さん:和ませ役というか、何だかもう仕方がないなって感じですけどね(笑い)。変に張り詰めた緊張感も、彼がいるだけでパッと緩むので、それはすごいことです。例えばダンスの練習中、だんだんそろわなくなってモチベーションが下がってくると、榊原タツキックが「だってできないものは、できないもん!」って、ボソッと。まずは僕たちが楽しまないと!という原点を、思い出させてくれるんです。

 榊原さん:ああーそうなんだ。自分では分からなかったけれど。

 ◇最新シングルに込めた思い

 ――最新シングル「マシュマロ」の話ですが、これにはどんなメッセージを込めて制作しましたか。

 神生さん:バレンタインのお返しにホワイトデーがあって。男の子も女の子と同じくらい一生懸命だし、その恋を大切にしたいと考えています。でも恥ずかしくてなかなか言えないのが、男子なんですよね。そんなとき、このCDで片思い中の男子の背中を押してあげたいです。女の子にも、そういう男子がたくさんいるんだよって伝えたいし。

 あと、いつもアルスマグナを応援してくれている皆さん、今回初めてアルスマグナを知ってくださった皆さんへ、皆さんがいるから僕らがあります。そのお返しの気持ちを、ぜひ聴いてください!

 ――初回限定盤にはホログラムセットが付いているとかで。アーティストとして初の試みだそうですね。

 九瓏さん:初っていいじゃないですか! いずれにせよ一番なので、そこからまた新しいものが生まれたらいいと思うし。今の世の中ってすべて出尽くした感があるけど、きっとまだ誰も手をつけていないものがあるはずなんです。そもそも僕らは、そこを掘り下げることで、ここまで来ました。その気持ちは結成のときから今も、まったく変わっていません。それがアルスマグナの最大の目標であり、最大の課題でもあります。

 ――武道館を成功させた今、今後の目標は?

 神生さん:まずは、僕らの存在をより広く、世界中に知ってもらいたい。日本にはこういう文化があって、こういうアーティストがいるんだよって。ホログラムの話じゃないけれど、僕らは2.5次元といわれているので、それこそ次元を越えた存在になりたいですよね。最近は2.5次元ミュージカルとかもあって、2.5次元という言葉が広く使われるようになってきているけれど、2.5次元といったらアルスマグナといわれるくらいになりたいです。あとは、年末の“紅と白”の番組とか。

 九瓏さん:アニメコーナーができているので、そこにうまく入り込んで枠を広げられたらと思いますね。

 神生さん:やり方だっていろいろできますからね。ホログラムで出演とか!

 泉:いや、まずは出ておきましょうよ!

 <プロフィル>

 神生アキラ、朴ウィト、泉奏、榊原タツキ、九瓏ケント、ぬいぐるみのコンスタンティンで2011年に結成。15年にシングル「ミクロ乃ハナ」でメジャーデビューを果たし、これまでにアルバム「ARSWORLD」、シングル「マシュマロ」などリリース。神生アキラの声による「VOCALOID4 Library アルスロイド」も発売されている。

 (取材・文・撮影:榑林史章)

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