ディーン・フジオカ:NHKドラマで等身大の青年役 にじみ出る誠実さ…涙にも「ウソがない」

ディーン・フジオカさんが主演したNHKの特集ドラマ「喧騒の街、静かな海」のワンシーン=NHK提供
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ディーン・フジオカさんが主演したNHKの特集ドラマ「喧騒の街、静かな海」のワンシーン=NHK提供

 俳優のディーン・フジオカさんが主演したNHKの特集ドラマ「喧騒の街、静かな海」が18日、放送される。30年前に生き別れた親子が、行き場のない孤独を抱える一人の少女と向き合いながら、自分たちの人生を生き直そうとする物語で、フジオカさんは、かつて自分と母親を置いて出て行った父親に会うため大阪を訪れるカメラマンの水無月進を演じている。フジオカさんのブレークのきっかけとなった連続テレビ小説「あさが来た」も手がけた演出の西谷真一さん、今作の制作を支えた大阪制作局・制作統括の谷口卓敬チーフ・プロデューサー(CP)に、フジオカさんの俳優としての魅力、そして素顔などについて聞いた。

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 ◇ディーン・フジオカは「ほかに似た人が一人もいない役者」? 

 「喧騒の街、静かな海」は、フジオカさん扮(ふん)するカメラマンの水無月進が、かつて自分と母親を置いて出て行った父親に会うため大阪を訪れるところから始まる。父親の海老沢淳(寺尾聰さん)は、精神科のクリニックを経営する傍ら、夜の街に出かけて行き場のない若者たちに声をかけるボランティア活動を続けている。最初は素性を隠して海老沢に近づく進だったが、街を孤独にさまよう女子高生のクロ(久保田紗友さん)やNPO法人を運営するレイ子(キムラ緑子さん)たちと関わる中、心に変化の兆しが表れる。一方、心の奥底に妻と息子と別れてしまったことへの悔恨を抱えている海老沢も、進との再会によって人生が大きく動き始める……というストーリーだ。

 西谷さんは「ディーンさんは誠実で不器用、それでいてチャーミング。ほかに似た人が一人もいない役者さんだなって思っている。そのディーンさんと日本映画界を代表する寺尾聰さんをカップリングできたらいい作品が作れるんじゃないかなって企画を進めて、こうやって実現することができた」と満足そうに語る。

 撮影を見守った谷口CPも「ディーンさんは本当に真面目」と前置きした上で「自分の全てを演じることに注ぎ込むっていうことを見ていて実感しました。『あさが来た』で僕が印象に残っているシーンは、(フジオカさんが演じた)五代友厚が亡くなる週、あさ(波瑠さん)と涙を流しながらほほ笑み合う場面で『キレイな涙だな』って思ったんですね。今回もディーンさんのピュアな涙を見て『これだ!』って思いました。ディーンさんはどうすればベストな演技ができるかいつも考えているので、流れる涙にウソがない。見せる涙じゃなくて、自然と流れる涙なので、そこに無理がないんです」と絶賛する。

 ◇今までにない役柄も「彼の誠実さが、難しさを乗り越えてくれた」

 今回の主人公・水無月進は見た目では、どにでもいるような31歳の“等身大の青年”として描かれている。フジオカさんにとって「あさが来た」で演じた五代はもとより、TBS系で今年1月期に放送された連続ドラマ「ダメな私に恋してください」でのドSな眼鏡男子や、Amazonプライム・ビデオで独占配信される連続ドラマ「はぴまり~Happy Marriage!?~」でのイケメン社長とは大きく異なる役柄で、フジオカさんがどう演じるかも大きな見どころとなっている。

 西谷さんは「あさが来た」と比べて演出面で「あまり作り込まず、強烈な個性をつけずに」とフジオカさんの素の部分や誠実さにゆだねたといい、「このドラマでの水無月進は、フラットなだけに今までのディーンさんになかった役。どの役者さんがやられても難しかったと思う。でも、彼の誠実さが、難しさを乗り越えてくれているなって気がしましたし、新しいディーンさんの魅力が出ているのかな」と穏やかな笑顔を見せる。

 谷口CPも「特段あれこれ注文せずに、が基本だった」と振り返り、「ディーンさんが、こういう青年をフラットに自然に演じるのはほとんど初めてで、僕も一体どういったディーンさんが画面に立ち上がってくるのかなって正直、予想しきれないところがあったし、むしろそこが楽しみでもあった。僕も現場でモニターを見させてもらったんですが、腑に落ちたというか、作り物の感じがしなかったんですよね。ディーンさんは役をちゃんとつかめていたし、手ごたえを現場で感じることができて、(起用して)良かったなって今、改めて感じています」と語る。

 ◇現場で寺尾聰と意気投合&楽器でセッションも 「のびのびやっていた」

 今回の撮影でフジオカさんは父親役の寺尾さんとも意気投合。オフの時間を使って楽器でセッションも繰り広げたという。西谷さんは「ディーンさんって歌、音楽が大好きで、心を開放してるというか、閉じ込めたくないタイプなんですね。かなり演技プランを考えて、それだけで消耗してしまうことを良しとする役者さんっていっぱいいますけど、彼の場合はフラットな状態で入りたい、心開いていたいというのをそばにいて、すごく感じました。役者を続けるうえで、そうしないとやっていけないっていうのはあるのかもしれないですね」と明かす。

 谷口CPも、現場でのフジオカさんについて「のびのびやっていた」と明かし、「ディーンさんは役作りを優先するあまり、ほかのことをないがしろにする人ではないので、周りの人間にストレスを与えることは絶対にしない。ジェントルマンなので(笑い)。深刻なトラウマを抱えている役でもありましたけど、無理してやっているっていうのが全然なかったし、カメラが回ってない時はとにかく穏やか。本当に一緒にやっていて心地よい青年で、ある種、ディーンさんの奥行きでもあるのかなって」と感心していた。

 ドラマには和田正人さんや市川由衣さん、中村ゆりさん、水橋研二さん、三倉茉奈さんも出演。NHK総合で18日午後10時~同11時13分に放送される。

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