バケモノの子:“夏のアニメ映画の王道”が放送 細田守監督、宮崎あおいが明かす思い

「バケモノの子」を手がけた細田守監督(左)と声優として出演した宮崎あおいさん
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「バケモノの子」を手がけた細田守監督(左)と声優として出演した宮崎あおいさん

 細田守監督の約3年ぶりの新作として話題になった劇場版アニメ「バケモノの子」(2015年7月公開)が、7月22日午後9時に日本テレビの映画枠「金曜ロードSHOW!」で放送される。同作がテレビで放送されるのは初めて。細田監督は「夏のアニメ映画の王道を作りたかったので、夏にテレビ放送されることがうれしい」と喜ぶ。細田監督と声優として出演した女優の宮崎あおいさんに同作への思いを聞いた。

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 ◇使命感、社会的責任もあった

 「バケモノの子」は、人間界とバケモノ界が存在する世界を舞台に、孤独な少年・九太と熊徹らバケモノの交流を描いたアニメ。細田監督が「おおかみこどもの雨と雪」(12年公開)以来、約3年ぶりに手がけた作品で、観客動員数が約459万人を記録するなどヒットし、第39回日本アカデミー賞の最優秀アニメーション作品賞を受賞。海外では、スペインのサン・セバスチャン国際映画祭で劇場版アニメとして初めてコンペティション部門に選出されたほか、49の国と地域で配給された。熊徹を役所広司さん、少年期の九太を宮崎さん、青年期の九太を染谷将太さんが演じたほか、広瀬すずさんや大泉洋さんらが声優として出演したことも話題になった。

 細田監督は「夏のアニメ映画の王道を作りたかったので、夏にテレビ放送されることがうれしい」と喜び、「少年が冒険して一皮むける映画が必要という使命感があり、社会的責任も感じて作ったのが『バケモノの子』。アニメ映画の歴史的には『銀河鉄道999』『天空の城ラピュタ』など少年の成長を描いた作品がある。アニメの歴史上作るべき作品だと強く思った」と語る。目指したのは“王道”だったこともあり「定型の冒険ものの枠組みを大事にした。奇をてらわずに作ろうとした」という。

 「バケモノの子」は、親子や師弟、子供の成長がテーマとなっている。細田監督は、12年に第1子が誕生したことが作品に影響を与えているようで「『おおかみこどもの雨と雪』を作った時は、子供がいなくて、親子の物語に憧れた。子供が生まれて感じたのは、実の父親は何もできない。役割を求められる時期はもっと先で、ないことも多いかもしれない(笑い)。子供は社会の中で自分の父、師匠を捜すんじゃないか?」と感じたという。

 自身の経験から「自分にも親のように思う師がいたり、会ったことがない歴史上の芸術家、映画監督を勝手に“心の親”と思っていた。子供は主体的に師を選ぶ。少子化、非婚化で親にならない人も増えていますが、どこかで誰かの“心の親”になっているかもしれない。子供がいなくても、誰かの“親”になるのかもしれない。そうやって社会が子供を育てるんじゃないかな」という思いもあったようだ。

 ◇動物やバケモノが登場する理由は…

 「バケモノの子」「おおかみこどもの雨と雪」はいずれも動物やバケモノが物語の中で重要な役割を果たす。細田監督は「上の子供がもうすぐ4歳で、絵本を読んで聞かせているのですが、絵本の登場人物はほとんど動物なんです。子供は、絵本の中の動物から、生きていく上で大事なことを学んでいる。人間は、殻があって、本当のことを言わない。動物は、そういうことを抜きにして、魂で語りかけてくる。子供にとってそういうものが大事なのかもしれない。殻がないキャラクターに接することで、子供が成長する。動物と子供がしゃべっていると、子供っぽく見えるかもしれないけど、大人もなるほど……と思うことがあるんですね」と説明する。

 また、細田監督とともにアニメを製作してきた宮元宏彰監督は「ONE PIECE FILM GOLD」、伊藤智彦監督は「僕だけがいない街」を手がけるなど、後輩たちも大活躍している。細田監督を“師”と仰ぐ後輩も多いが「みんな優秀で、いい仕事をしていますね。優秀な人が多いので。お世話になっているのはこっちですよ。偉そうな師匠になる気はないです(笑い)。たまに飲んだりするくらいで、彼らの作品をああだ、こうだと言うことはありません。そういうのは、面倒見のいい人がやることですよね」と笑顔で語る。

 ◇宮崎あおいは「声の仕事はすべてが難しい」

 「バケモノの子」では宮崎さんが少年役の声優に挑戦したことも話題になった。細田監督は「あおいさんに主人公はぜひお願いしたいと思っていた。『少年の役をやったことあります?』と聞いて『ない』と言われ、すごくうれしかった。あおいさんの少年の声を真っ先に聞けるわけじゃないですか。うれしいですよね」と話す。

 宮崎さんは「声の仕事はすべてが難しい、表情が豊かな男の子で、大きな声を出すところは、男の子に近づける感覚があって、うれしかった」と苦労を明かしつつ喜ぶ。また「(九太の青年期を演じた)染谷君と声出しをした時に、染谷君が出していた大きな声を意識しようと思った。染谷君は私の大きな声を意識したそうです。お互い、話し合いをしなくても同じ方向を向いていたんですね」と明かす。

 また、少年役の声優を経験した今後の影響ついて「もちろんあると思います。声のお仕事をさせていただくことは次につながる。具体的にここが……というところはないのですが」と話す。

 ◇次回作は?

 細田監督は日本を代表するアニメ監督ということで、次回作への期待も高まっている。「お陰さまで、作らせていただいています。『デジモン』『時をかける少女』のころからなのかもしませんが、(自身の作品は)一貫して“子供が成長するには何が必要か?”がテーマになっている。家族はテーマでなくモチーフで、子供がどう育つかがテーマなんです。それが、子供が見るアニメーションの社会的使命だと思う。社会がダイナミックに変化する中で、新しく表現を更新して、面白い作品ができるように頑張りたい」と意気込む。細田監督はどのように“表現を更新”していくのか……。今後の活躍も注目が集まる。

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