草刈正雄:“人間くささ”が昌幸の魅力 “犬伏の別れ”の舞台裏も

NHK大河ドラマ「真田丸」に真田昌幸役で出演している草刈正雄さん=NHK提供
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NHK大河ドラマ「真田丸」に真田昌幸役で出演している草刈正雄さん=NHK提供

 俳優の堺雅人さんが主演を務めるNHK大河ドラマ「真田丸」で、主人公・真田信繁(堺さん)の父・昌幸を演じている草刈正雄さん。4日に放送された第35回「犬伏」では、真田家が敵味方に分かれることを決める物語の山場の一つ、“犬伏の別れ”で堺さんや信幸を演じる大泉洋さんらと笑いあり、涙ありの演技を見せ、11日放送の第36回「勝負」では戦上手ぶりを見せつけ健在をアピールした。だが、ラストでは天下分け目の「関ケ原の戦い」で西軍の敗北を知らされがく然とした表情を見せるなど、昌幸の物語は急速にクライマックスへと近づいている。1年近くにわたって昌幸を演じている草刈さんに、これまで演じた感想や、堺さんや大泉さんとの撮影エピソードなどを聞いた。

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 ◇三谷幸喜脚本に「裏切られた」

 「真田丸」は、真田幸村の名でも知られている戦国時代の人気武将・真田信繁(堺さん)が主人公で、三谷幸喜さんが2004年放送の「新選組!」以来、12年ぶりに脚本を手がけている大河ドラマ。戦国時代に信州の小さな領主のもとに生まれた信繁が、家族とともに知恵と勇気と努力で乱世を生き抜く姿を描いている。草刈さんは知略軍略にすぐれた破天荒な天才武将・昌幸を演じている。

 1年近く昌幸を演じている草刈さんにとって、1人の役を演じ続けているこの1年は、長かったのか、短かったのか。「両方、あるね」と草刈さんは感慨深げに振り返る。3月からはブログも始めた。「いろいろとみなさんからの意見が(コメント欄に)入っていて、うれしかった。励ましになりました」と笑顔を見せ、「ブログに『昌幸と草刈さん(の違いが)分からなくなりました』とかあって(笑い)」と満足げな表情を浮かべる。

 昌幸、信幸、信繁の3人が集まる最後の場面となった「犬伏の別れ」は、真田家が敵味方に分かれる決断をしたのち、3人が笑いながら会話をするシーンで終わった。インターネットでも感動的だと話題を集めたシーンだ。草刈さんは「三谷さんの脚本に完全に裏切られましたね」といい、「もっと感動で、泣きで、と思ったら、(3人の)大笑いで終わっちゃった(笑い)。面白かった。三谷さんらしいな、と。3人とも楽しんでやりましたね」と振り返る。

 3人での最後の収録の際は、「撮影前は気持ちが高揚していた」と草刈さん。待ち時間も、普段は控室に戻るなどしてそれぞれ過ごしていたが、「犬伏」のときは「3人で集まって、ずっと待っていましたね、シーンとしながら……変なムードがありましたね」と明かす。「犬伏」のラストは、昌幸の決定に信繁が異を唱え、信幸は第2回「決断」で昌幸が「わしは決めた!」と叫んだシーンを彷彿(ほうふつ)とさせるように「私は決めた!」と叫び、敵味方に分かれる策を提案する。この“世代交代”を象徴するシーンについて、草刈さんは「感慨深いものがありましたよ。以前に僕が言ったせりふを、またリフレインして言ってくれる。ジーンときますよね。子供たちが(精神を)受け継いでいるんだな、と……」としみじみと語る。

 第36回「勝負」のラストでは、佐助(藤井隆さん)の報告で、昌幸は関ケ原の戦いの敗北を知った。それまでご機嫌だった昌幸ががく然とした表情に変わる衝撃的なシーンでもあった。草刈さんは「あそこから(昌幸の調子が)ガクーンと落ちますけどね」と今後の展開をのぞかせ、第37回「信之」で描かれる(内野聖陽さん演じる)徳川家康との対面では「内野君の芝居が非常に憎々しくて。とっても重厚で、やっていて楽しかった」と見どころを語る。

 ◇昌幸は「ラテン系の弾けたおやじ」

 1年を通して、堺さん、大泉さんとのチームワークは「本当によかった」と草刈さん。「最初から崩れなかった。普段ならときどき中だるみしたりはあるけれど、(「真田丸」では)一切なかった」と話す。「芝居に変な遠慮がなくて。ここは自分が抑えてとか、そういう気を使った芝居をすることが僕もよくあるんですけど、(今回は)一切なくて、ボンボンぶつけて。それはすごく楽しかった。みんなそう思っていると思う。容赦なくぶつかり合った」と回顧する。

 昌幸役は、「脚本のままに楽しく暴れているというだけ」と控えめに語る草刈さん。とはいえ、「とにかく楽しいんです」と目を輝かせ、「あまり緻密に細かく考える方ではなく、ざっくりやる方なので。芝居しているって感じでやってないんですよ」と昌幸がその身に染み込んでいることを思わせる。せりふの量が膨大な昌幸役は、「役者やっていてこんな量は(やったことが)ない」と言うほど大量のせりふと戦う日々でもあった。特に初期はしゃべり続けることが多く、「ほとんどしゃべっていました」と語る。そんな日々を草刈さんは「できるもんなんだな、と(笑い)。努力は裏切らないなと思いました」と語る。

 改めて、昌幸の魅力について聞かれると、人間くさいところ、と草刈さん。「ラテン系の、弾けたおやじみたいな。もう思いっきり生きているところが魅力じゃないですかね。あまりとらわれずに、自分の道を貫いていく。周りを巻き込んでいく豪快さ。喜怒哀楽がすごく激しくて、泣いたり笑ったり、こういうのが人間っぽくていいんじゃないですか」と楽しそうに話していた。

 「真田丸」はNHK総合で毎週日曜午後8時ほかで放送。

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