中田裕二:「落ち込んでいる人に寄り添う曲を」 歌い手としてのこだわりも

シングルCD「THE OPERATION/IT’S SO EASY」を発売し取材に応じた中田裕二さん
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シングルCD「THE OPERATION/IT’S SO EASY」を発売し取材に応じた中田裕二さん

 ミュージシャンの中田裕二さんがこのほど、シングルCD「THE OPERATION/IT’S SO EASY」を発売した。表題曲2曲と「ORIGINAL LOVE」のヒット曲「接吻」など3曲のカバー曲を収録している。中田さんに新曲やカバー曲への思い、「歌手という気持ちが強いし、シンガーという意識をしっかり持っていたい」という歌い手としてのこだわりを聞いた。

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 ◇自分が正しいと思うことをやればいい 曲に込めた思い

 中田さんは、2011年に男性3人組ロックバンド「椿屋四重奏」を解散し、今年はソロ活動5周年に当たる年。今回のシングルは、4月に発売したシングルCD「ただひとつの太陽」に続く第2弾となる。

 熊本県出身の中田さん。表題曲のうち、「IT’S SO EASY」は今年4月に発生した熊本地震の後に手がけた楽曲だ。直接、被災地に向けた楽曲ではないものの「落ち込んでいる人たちにそっと手を差し伸べるような曲にしたいなと思っていました。詞に悩んで、いろんな思いが言葉になって、この曲ができたんです」と製作過程を振り返る。

 「今の時代はいろんな情報があふれていて、悩まなくていいことに悩まなきゃいけなかったり、情報に翻弄(ほんろう)されたり、とらわれたりしているうちに、近くにある大切なことが見えなくなっちゃう人が多いと思う」といい、自身も熊本地震の後に「いろいろ想像が膨らんじゃって、どんどんネガティブになっていたんですが、実際に(熊本に)行って、人と会ったり、自分の目で見ると、具体的に足りないものや必要なことが整理されました。それは、いろいろな物事につながることで、なんでも自分で触れて感じて、初めて物事の意味が分かる。今はパッと調べられちゃうから、触れなくても知ったような気分になれるんですけど、本質はそうじゃないところにあるし、もっとシンプルなのかなって」と感じたという。

 さらに「今、白黒を迫る気がするんです。二元論で語りたがるというか。そういうプレッシャーが、人が本来持っている大事な感覚を邪魔しちゃっている気もする」とも語り、「自分が素直に思うことをやればいいし、自分が正しいと思うことをやればいい。もっとシンプルに簡単でいいんじゃないかな」と曲に込めた生きることへの思いを語った。

 ◇歌っているときぐらい「いい男でいさせて」

 今回、カバー曲として収録したのは「ORIGINAL LOVE」の「接吻」のほか、南佳孝さんの「モンロー・ウォーク」、椿屋四重奏の「不時着」の3曲。自身のルーツが歌謡曲やニューミュージックにあるという中田さんは、14年に中森明菜さんの「スローモーション」などをカバーしたアルバム「SONG COMPOSITE」を発売したほか、これまでライブでもさまざまな曲をカバーしてきた。

 今回収録した3曲は「その中の定番曲」といい、中でも「接吻」は「自分が目指すポップスの理想形ですね。昔から好きだし、こういう曲を自分も作りたいとリスペクトしています」と語る特別な曲だ。

 また「モンロー・ウォーク」は、「この曲が持っている“二枚目感”がすごく好き。いい意味でキザ。今は、カッコつけない方がいいっていう風潮がありますけど、カッコつけた曲が好きですね。自分は普段、地味だし、華々しい生活をしていないんですけど、『歌の中ではカッコつけさせて』と。昔の曲を歌うと、いい女になったような、いい男になったような気になる。その感じを絶滅させたくない」と熱い心をのぞかせる。

 また「人気があって、自分もすごく好きな曲」という「不時着」は、08年に発売した椿屋四重奏のシングル曲。約8年ぶりの収録で「(当時は)ある男の子と女の子の人生を描いたつもり。今、ある程度大人になって歌ったら、どうなのかなと思って弾き語りをしてみました。(8年前とは)違いましたね。言葉が重くなって、今の自分の年齢で歌ってもいい歌だなって、かみしめながら歌いました」とはにかんだ。

 ◇歌手に強いこだわり 俳優業は「向いていない」?

 「歌が好きだからギターも弾くし、ほかの楽器もやる。歌のために全部があるっていう考え方」という中田さん。「バンドをやっていたときはギターを聴かせたいとか、そういう気持ちもあったんですけど(今は)いかに歌を演出するかを中心に、楽器や付随することを考えます。歌がしっかりしていないとイヤですね。歌手という気持ちが強いし、シンガーという意識をしっかり持っていたい」と歌い手であることを大切にしている。

 「今の日本はサウンド志向だけど、最終的に人の心を揺さぶるのは、どんな楽器よりも歌だと思うんです。そこにしがみついていきたい。音楽番組を見ても、昔の名曲をカバーすることが多い。歌が中心にあって、歌い手もしっかり歌手として存在しているのが、一番いいんじゃないかと、みんな気づき始めていると思う。でもなかなかそういう流れにならないですね」といい、自身がカバー曲を歌うことについても「宝の山なので、それが時代の波にのまれて埋もれてしまうことは、させたくない。歌い継いでいくのも一つの仕事だと思っています」と強い思いを語った。

 また昨今、歌手でもあり俳優でもあるイケメンが注目を浴びることが多く、中田さんもかなりのイケメン。俳優業に興味はないかと聞くと「向いていないと思うんですよね……」と苦笑いしつつ、「ちょい役とかはやってみたいと思いますけど……。もし機会があれば」と控えめに応じ、笑顔を見せていた。

 <プロフィル>

 なかだ・ゆうじ。1981年生まれ。熊本県出身。2000年に男性3人組ロックバンド「椿屋四重奏」を結成し、03年にデビュー。11年に解散した。同年、配信限定シングル「ひかりのまち」を発表し、収益をすべて東日本大震災の被災地への義援金として寄付している。同年にソロファーストアルバムを発売して以降、毎年、新作をリリースしているほか、中森明菜さんや、布施明さんらの歌謡曲やニューミュージックの楽曲をカバーしたアルバムも発売。カバー曲を中心にしたライブも行っている。「THE OPERATION/IT’S SO EASY」とともに、今年開催したソロ初の全国ホールツアー「TOUR 16 LIBERTY」の最終公演を収録したDVD「TOUR 16 LIBERTY ただ一夜の太陽」も発売した。

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